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旧司法試験 憲法 平成10年度 第1問


問 題

 公立A高校で文化祭を開催するに当たり,生徒からの研究発表を募ったところ,キリ スト 教の ある宗派を 信仰し ている生 徒X らが, その宗 派の成 立 と発 展に 関 する 研 究発 表を行いたいと応募した。これに対して,校長Yは,学校行事で特定の宗教に関する宗 教活 動を 支援 することは, 公立学校 にお ける宗 教的中 立性の 原 則に 違反す ること にな るという理由で,Xらの研究発表を認めなかった。
以上の事実を前提として,以下の設問に答えよ。

〔設問1〕
XらはYの上記措置に不満を有しているところ,あなたがXらの代理人となり,A 高校 に対して 意見 書を送 付 する場 合にお いて ,いか なる憲法 上の主 張を 行うべ き か について論じなさい。

〔設問2〕
設問 1に おける 憲法上 の主張 に関す るあな た自身 の見解を ,Y の反論を想定 しつ つ,論じなさい。。

関連条文等

憲法
20条1項(第3章 国民の権利及び義務):信教の自由
20条3項(第3章 国民の権利及び義務):政教分離原則
23条(第3章 国民の権利及び義務):学問の自由

判例
最判平8.3.8.:エホバの証人剣道受講拒否事件

一言で何の問題か

1 宗教的行為の自由
2 政教分離原則と裁量権の逸脱・濫用

答案の筋

1 本件発表を禁止する行為は,宗教的行為の自由に対する直接的制約であり、これを認めることによる害悪の発生が明らかに差し迫っていることが具体的に予見される場合でない限り20条1項に反するため、違憲となる。
2 確かに、禁じられるのはA高校の文化祭における研究発表であり、制約は間接的付随的なものにとどまり、校長には広汎な裁量権も認められる。しかし、本件発表が宗教的意義を持たず,かつ、その効果が宗教に対する援助,助長, 促進又は圧迫,干渉等になるような事情も認められないにも関わらず禁じた処分は、社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権の逸脱・濫用として違憲となる。

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