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旧司法試験 憲法 平成11年度 第2問


問題

 X市は、住民の静穏な生活環境を良好に保持するために、次のような趣旨の条例を制定した。この条例の憲法上の問題点について論ぜよ。
1 X市の一定の区域内でパチンコ店を営業しようとする者は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)の許可のほかに、あらかじめ市長の同意を得なければならない。
2 市長の不同意に不服がある者は、裁判所に訴えを提起する前に、X市の設置する、市長及び議会から独立して職権を行使する不服裁定機関の裁定を受けなければならない。

関連条文等

憲法
22条1項(第3章 国民の権利及び義務):居住・移転及び職業選択の自由
76条2項(第6章 司法):特別裁判所の禁止
92条(第8章 地方自治):地方自治の基本原則
94条(第8章 地方自治):地方公共団体の権能(法律の範囲内)

一言で何の問題か

1 条例制定権(法律の範囲内)
2 行政機関による裁判

答案の筋

1 風営法の目的は本件条例の目的と共通しており、風俗営業をどのように規制するかにあたっては、その地方の実情に合わせて裁量を認めるべきであるため、本件条例は「法律の範囲内」と言え合憲である。
2 不服の裁定という準司法作用については、住民の意思にとらわれず公平に行う必要があり、民主的コントロールになじむものではないため、市長及び議会から独立して職権を行使する点は、憲法上問題が無い。また、76条2項は行政機関による終審裁判のみを禁止しているにすぎず、行政機関であっても裁判をすることができる。このため、本件条例は合憲である。

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