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ラジオ制作現場(企画の進め方)

今は、個人でネット上で”ラジオ”と称して”音声パケ”をUPする人が多いので、タマには役立つ”具体的”なアドバイスでもしようと…と思いまして。

■通常のラジオ現場

ラジオ”局”で、色んな人が集まって商売道具としての番組を制作する…つまりプロの現場を説明しますね。
【番組を作る人たち】まず前に立つ(喋る人)DJ(パーソナリティ)。実際番組を進めるディレクター。人を段取りしたりお金を工面するプロデューサー。スタジオで音声を出したり調整するミキサー。いわゆるパシりのAD(アシスタント・ディレクター)。原稿を書いたりスタジオ内でDJの横でメールを捌いたり補佐する構成作家(放送作家)。番組やコーナーをセールスする営業担当。番組外だと、編成(色んな番組を並べて1日、1週間で構成する)、広報(番組のPRをする)、マイク等の機材、電波の管理等をする技術等の部署があります。(他にも一般企業的な総務なども有ります)

個人でやってる皆さんはコレを1人でやってる訳です(笑)。大変ですね。

さて…番組作りの進め方。
それは「企画書」。1人の頭の中ではイメージしても、多くの人々に想いを伝える為には提案が必要です。それを具体的な文字で示す物です。DJでもディレクター(以下D)でもプロデューサー(以下P)でも、時にはAD、放送作家さん…発案は誰でも、まず企画書をまとめて、番組会議や編成・制作会議に出して論議したり、直接Pや編成、制作の部長に提出したりします。
企画にGOサインが出たら、番組サイドは具体的な準備に掛かります。D,P,放送作家さんで…番組の中身を細かく肉付けし、台本案を作ります。営業は番組をセールスに掛けます。広告代理店や各企業へ売りに回る訳です。1時間の番組なら、番組丸ごと買ってくれたり、中の1コーナーに乗っかってくれて、コーナーだけ提供に付いてくれたり…という場合もあります。売る為の参考資料として…制作チームでパイロット版を作る場合も有ります。台本案を元に、実際どんな風に聞こえるか?短縮版の”番組の見本”を作る訳です。
もう放送日が決まってる場合は、ランスルーなんていうのもやります。
いわゆる”通しリハ”です。生放送番組なら、失敗しても時計を止めずに最後までやってみたり…反省会をして修正して、もう1回やる事も有ります。
そうやって、新番組の初回を迎える訳です。

■企画書のススメ

たとえば…ポッドキャストで個人でやる場合でも、もし、他人を巻き込む事があるなら一度企画書を書いてみましょう(友達を相方にしてトーク形式にするとか…色んな商品紹介をする時、調達してくれるメンバーや協力してくれるお店を募るつもりとか…)。1人きりでやるにしても、頭の中でイメージは出来てても、実際文字で書いてみる事で…より具体的に番組像を組み立てる手助けになります。

例…
表紙は大きなフォントで…

新番組
ふぐDのフグフグワイド
制作 ふぐD


2枚目には…コピーライターが広告のコピーを書くように、番組をイメージしたカッコいい言葉を書いてみましょうか。

あの夏休み…あなたは何して遊んでいましたか?
子供の頃の素敵な夏休み…ウキウキした日々。
あの情熱と好奇心を今、再び!
”フグフグワイド”この番組は…
”あの”夏休みの子供気分で日々を過ごそうという
積極的なライフスタイルの提案する生ワイドです。


どうです?面白そうでしょ?気になるでしょ?で読む人は頁をめくります。
3頁目からは具体的な内容を書きます。

番組名…ふぐDのフグフグワイド
放送日…毎月1日、15日(月2回)午後9時~2時間(ネットにて生配信)
放送形態…生放送(※専用「ふぐチャンネル」にて生配信)
出演者…ふぐD
番組内容…
出演者の近況と共に、最新トレンドから気になったニュースや街ネタ、新商品等を取り上げ、深掘りしたり、生電話等でリサーチしたり、時には商品を取り寄せマイクの前で試用して感想を伝えます。
番組企画例…
ふぐDのニュース一刀両断」…最新ニュースを掘り下げて解説する。
ふぐDの疑問融解」…街ネタコーナー)レコーダーを持って街に出て取材した模様を紹介したり生電話を繋いで店主等にインタビュー。
開封の儀」…新商品コーナー)実際店で購入したり取り寄せた新商品をマイクの前で開封。実際使ってみて、印象、感想を交えて解説。最後に★の数で評価。
ふぐDのカルチャー倶楽部」…最新カルチャーコーナー)映画や音楽、書籍、演劇等の最新カルチャー情報から出演者独自の視点で2~3本ピックアップして紹介する。


どうです?より具体的な内容になってイメージしやすくなりました。
上の方で書いた営業さんのセールスもしやすいですね。何種類かのコーナーにすれば、コーナーで買ってくれる企業も期待できるという事、分かりますよね。「ニュースは興味無いけど映画とか気になるなあ…」なんてね。
ココまででもいいですが、より分かりやすくするなら、「番組進行例」とか「原稿例」とか添えても、効果がUPする場合も有ります。さらに、読む人の心を動かす工夫として、「展開案」みたいな頁を添えてもいいでしょう。
例えば、「番組聴取者が増加した場合、リスナーを招待しての公開録音会や、リスナー参加”大人の社会見学ツアー”なども企画可能です」みたいな。
実際出来る可能性は極めて低くても”あなたの会社が予算を出してくれたら、こんな展開できるでしょ?”みたいな。大風呂敷でいいんです(笑)。だから”可能です”と添えて逃げる訳です(笑)。

■具体的な番組作りの準備

何やかんやで、実際、番組へのGOサインが出たとしましょう。
初回放送(配信)に向けてすべき事は?

台本を作りましょう
「いや、1人での配信だからメモ書きでいいでしょ」という人もいますよね。でも試しに、何も無しで録音してみて。「えー」「という訳で」「あのー」「まあ…」いわゆる繋ぎの声(言葉じゃないっすね)がしょっちゅう出てきて、聞いててストレス溜まります。
基本フリートークで行くにしても、ガイドラインになる言葉や、番組のキメ文句を用意しておけば、収録でも生配信でもスムーズに出来て、リスナーへ要らないストレスも与えませんからね。
また、台本には”想定”するコーナー配分や進行タイムの表記もしましょう。
自分の体内時計ほど頼りにならない物はないです。ザックリでいいですから決めておくと、押しても(オーバーしても)後で巻けます(縮小の調整)。

自分の場合、FM 育ちなので、台本は2種類並列でした。
1つは「読み原稿(例1)」。もう1つは「進行フォーマット(例2)」。
読み原稿はその名の通り、読むべき文章が書かれた原稿です。
進行フォーマットというのは、さっき書いた「キメ文句」や掛ける楽曲とその尺(イントロ/トータルの時間)、CMタイムを表記した進行台本。

基本は「読み原稿」に従って放送しながら「今、番組はどの辺のコーナーに行ってるか?」確かめる為に「進行フォーマット」を頼りにします。
全部を合体させた台本を作る番組も多いですが、自分の場合、どれだけトーク主体の番組でも、DJが(自分も)迷子にならない為に作成しました。

(例1 読み原稿)

★オープニング

21:00 TM(テーマ曲 ※25秒待ち)

    時計の針は夜9時を回りました。こんばんは、ふぐDです。
    「ふぐDのフグフグワイド」この番組は、巷に溢れる情報を
    ふぐD視線でセレクト、皆さんにアレコレ詳しくご紹介する
    勝手な生ワイド!興味津々、あれってどうなの?というネタを
    掘り下げて”丸裸”にしちゃいます。

    *近況 フリー(2~3分)

    *【今日のメニュー】
     ・このあと1曲挟んですぐ… ふぐDのニュース一刀両断
       (今日のテーマは?              )
     ・9時25分頃からは…ふぐDの疑問融解
       (今日は…事前取材/生電話)
       (テーマは?                 )
     ・9時55分頃からの…開封の儀
       (今日紹介するのは?             )
     ・10時30分頃からは…ふぐDのカルチャー倶楽部
       (今日は…音楽/映画/アート/演劇/書籍 その他)
       (具体的に…            …をご紹介)

     *自分で楽しみな企画は?…(           )

   …という盛りだくさんな2時間。今夜も夜11時までご一緒下さい!

21:06 Jingle 
    M1(   )                  (   )

(例2 進行フォーマット)

21:00 OP-TM IN
     *オープニングトーク ~メニュー紹介(5分半)

21:06 Jingle
     M1(  )                  (   )

21:10 【ニュース一刀両断 10分】
      ・リード (1分) 
      ・(素材①  2分18秒)
      ・解説トーク (5分程度)
      ・後クッション
     M2(  )                  (   )

21:25 Jingle
    【疑問融解     MAX15分!】
      ・(生電話→ 番号                 )
      ・(出演者…         氏)

21:45  M3(  )                  (   )
    予備曲(  )                  (   )

21:50 BGM~フリートーク(メール紹介 ※曲繋ぎの場合有り)
21:55(←※時間優先)【開封の儀】(※以下 22時台へ続く)

■色んな工夫

どうですか?分かりましたか?
補足すると…

読み原稿は括弧書きの余白が多いですよね。これは基本原稿スタイル。
ワード等で作成する際、いわゆる雛形を作成すれば、それを元にして…各回ごとに(  )の中を埋める形で完成出来ますよね。キメ文句をいちいち、毎回書かなくても流用出来ます。
進行フォーマットでは、オープニングから番組の半分迄カバーしています。
パッと見た時、自分が居る位置を把握する為に「1時間1頁」で作るようにしているんです。「開封の儀」コーナーの入りは21:55ですから、22時ちょうどを跨ぎます。コーナーの入り”まで”を1頁目にしておき、中身については
1頁めくれば、番組残り半分、先々を見通す事が出来る…という訳です。
どちらも、余白が多いほど、番組中のメモ書きも出来ます。

もう1つ…番組構成の工夫に気付きましたか?
例2(進行フォーマット)の下の方…予備曲と書いてあります。
その下の行、フリートーク(※曲繋ぎの場合有り)

「多分、時間調整タイムを設けたんでしょ」位は気付きますよね。
次のコーナー「開封の儀」は、実際の商品をマイクの前にスタンバイする必要がありますよね。ってことは?もし、うっかり手元に置いてなかったら?2Fのクローゼットから出してきて、用意するだけならいいですが、置き場所を忘れて探す時は?万が一のトラブルに備えて、どうでも対応できるように予備曲を準備して、「俺が戻って来なかったら、1曲繋いでて!」って出来ます。(1人なら事前に2曲繋いだパケ素材で出せばいい)
そういうリスク対応も、番組には大事な心掛けなんです。

首都圏のラジオ番組だと、最初の方に説明した通り、構成作家さんが付いて、色々対応してくれたり、即座に原稿を書いてくれたり…メールを選んでくれたりしてくれますが、地方局や、個人での配信となると1人で何役もこなす必要が出てきます。原稿の書き方も、誰もが出来た方がいい…という自論なので、DJやADさんであっても、こういう事は習得した方が後々役立つと思います。

一度お試しあれ。

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