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Vol3 アントノフスキーの健康生成論 ・SOC

 今日はアントノフスキーの健康生成論・SOCを紹介します。『健康の謎を解くーストレス対処と健康保持のメカニズム』(有信堂)という日本語に訳されたアントノフスキー著の本もあります。今回は山崎喜代比古監修『健康生成力SOCと人生・社会ー全国代表サンプル調査と分析』(有信堂)を参考にします。
 私たちは病気になるとその原因を取り除き、再び健康を取り戻そうとしますが、アントノフスキーやそうした考えを疾病生成論と呼び、健康生成論という新しい健康に対する考え方を提唱しました。アントノフスキーは、ユダヤ人強制収容所に入所した経験のある、ない、更年期女性の健康度を比較したところ、経験のある人の方が健康度が低いという結果を得ました。そこでが考えたのが、「何が健康をつくるのか」ということでした。アントノフスキーは、健康と健康が破綻した状態を連続体としてとらえ、破綻する方向に働く要因を危険因子、健康に導く要因を健康要因ととらえることにしました。
 環境破壊、大気汚染等、ストレスの多いこの社会で生きる人の多くが、何等かの不調感を抱いている人も少なくないと思います。アントノフスキーの健康生成論は、どんな重い病や障害を持っていたとしても、その人にとっての健康を生成する要因があるので、それを支援強化しよう、という発想です。
 SOC(首尾一貫感覚:Sense of  Coherence)は、人生における究極の健康要因であり、健康生成論の要とされています。アントノフスキーの定義は、「その人にしみわたった、ダイナミックではあるが持続する確信の感覚によって表現される世界規模(生活世界)の志向性」です。把握可能感、処理可能感、有意味感の3つの下位概念からなります。把握可能感とは、自分の身に起きた問題に理解や納得ができるという感覚、処理可能感は、直面する問題に対して有効な対処資源があって、いつでも動員できる、という感覚、有意味感は、直面する問題に対する努力や苦労のしがいを感じられるという感覚です。
 SOCは、人生に生じる様々な向かい風に対して、自分なりの価値づけや、それをサポートしてくれる他者の力を得たりして、心身の健康を守り、成長・発達していく、まさに「健康に生きる力」と言えます。
 健康に生きることを支えてくれるものは何か、それをアントノフスキーは「汎抵抗資源」と呼びました。「身体的、生化学的、物質的、認知・感情的、評価・態度的、関係的、社会文化的な、個人や集団における特徴のことで、あまねく存在するストレッサーの回避あるいは処理に有用であるもの」と定義しています。
 SOCは生活世界や人生に対する見方・向き合い方、かかわり方の感覚であり、生じた様々なストレッサーに対処するために必要な、その人の内外にある様々な汎抵抗資源の活用可能性を包含した自己概念なのです。
  
 

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