作ると決めたあの日から、もう、こんなところまで来てしまった。
ああ。もうすぐだ。
もうすぐだもうすぐだ。
でもまだだ。
まるで熱に浮かされているかのようで、目がまわりそう。

もう言葉にならないまま、きっとこのまま生まれてきてしまうのだろう。

現実的なことはまだ何ひとつ決まってないのに、ただ制作は走り続ける。
気がつけば、9月。
仲間と一緒にちくちくと縫った一項一項は、ひとつに綴じられるまで本当にあと少しのところまで来ている。
最後の最後にこんなに体力と気力を要するとは。

綴じるけど、閉じない。
だからまたほどくことができる。
血も心も通っている。だいじょうぶ。

なぜ作らないの?と聞かれ続け、I've run out of excuses not to make this book. もう、つくるしかなかった。

自分自身の輪郭をなぞるように、今はなき魂に語りかけるように、一語一語、丁寧に綴っていく。

また糸だ。
なるほどな。そういう事だったのか。全部初めから決まっていた。そうだったのか。

きちんと手に触れて確かめることのできるものを。
ちゃんとそこにいて、「だいじょうぶだよ」と語りかけてくれるようなものをつくりたかった。何よりもわたし自身が、それを求めていた。
安心したかった。ほっとしたかった。
たぶんそれがこの本をつくり始めた一番の理由かも。

ほんとうは、大切な人ひとりひとりに会って伝えたい。
だけどもう言葉にならないから。

握りしめてきた思いは、きっと書くことはできないだろう。
でも、それでもいい。
これはみんなの本だから。

今わたしを繋ぎとめる、一本の糸。
撚りあって、結び合って、だんだん強くなっていく。

これができたら、どんなにほっとするだろうか。
どんなところまで、遠くいけるだろうか。

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