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【17歳 11月のアオハルⅡ】

「来月、寮でて引っ越すから」
と聞いたのは、付き合い始めて数日後だった。
いつものように話してた外庭駐車場ではなく、静まりかえった総合ロビーの長椅子だった。
道路挟んだ寮から遠く遠くなるイメージだった。
『夜勤はいいけど、中勤なんて終わるの夜中じゃん。あぶねーべ。』
夜中の丑三つ時に勤務が終わる中勤で思い出した。
と言うか、表のドアが閉まって使えるのが夜は従業員用の出入り口で、直ぐそばの階段で地下に降りれば霊安室があるのを知っていた。
普通に外部の人間が聞いたら怖いんですけど・・・ そばに警備員室あっても怖いんですけど・・・
で、通り挟んだ寮では無く、苦情が多いこの一帯、真夜中は暗いし直ぐそばには浄水場という広い敷地・・・
ハタチそこそこの女子が夜中に1人で歩くもんじゃござーせん。
「だったら、おにーちゃんが中勤の度にガードしてよ。」
なぜか、恋人になっても半年以上呼び慣れた〝おにーちゃん〟は、変わらなかった。まぁ、ヘタな呼び方で病院内呼ばれるよりは良かったし、母親と病院勤務者には言えなかったし。
『いいよ。それで安心するなら来てヤンよ。』
でも、夜中に起きられるか不安だった。
「大丈夫だよ。アパートは、正面入り口の裏。ココからでて、丁度、出っ張った部分に隠れたとこ。 建て始めてほぼ病院関係者で埋まったらしいよ。」
30年以上前の話として、看護婦寮である。と言うコトを前提に以下読んでください。
カノジョが住んでた所は、病院の女子寮。あの当時は、2人で一部屋だった。(5年後日立製作所の独身寮に住み始めた友人も二人部屋だと言ってた。あの日立でさえ。当時は普通だったと言うか、時代が流れ初めてはいたが。)一度だけ入ったが、なんというか・・・ そもそも、テレビでよく見てた女子寮。電話なんて1台を寮内での共同利用だから、繋がらない。ココは、チケットぴあか?的に繋がらない。ラッキーに繋がれば甘い会話が長時間。かと言って、夜勤だからと昼間電話すると機嫌悪い&繋いでくれる寮のおばさん(管理人に夜勤明けだよと怒られる)で、寮内の公衆電話大流行り。携帯電話無い世代は、忍耐強いわけだ。
となると、監獄的な女の園から逃げたくなるのは当然で、部屋が少ないながらも新しい建物へ増築されたときは、凄い倍率だったらしい。
そこに漏れたカノジョ・・・ アパートに逃げることになったという。で、アパートの住人の殆どがナースという夢のような建物で、大家さんも女性しか取らなかったらしい。
次の日に見舞いに来る前に通らないとこを通ってアパートを確認。なんで?
弟のとこに行くと、「兄貴なんで、裏の方から来てんの?」と、開口一番言われた。
??と思ったら、テレビのあるとこにデカい窓があった!ある意味丸見え。気をつけなくちゃ。

そんな事があってから、2週間。
当初は、白いマークⅡにのったカノジョ募集フラグがずっと立ってる彼が、やってる鉄工所で使ってるトラックで参上して、颯爽と運ぶはずだったらしいが、どこぞの高校生に狙ってた人を持って行かれたので、カノジョが呼べるわけもなく・・ 友人カレシのセダンでピストン輸送する事に。
弟の方からは、部屋の入り口が見えにくいのは確認済みだが、女子寮から段ボール箱を運び出さなければ行けない。
何度か会った事ある友人の彼氏さんと、寮の前で深呼吸して入り口にいる寮のおばさんに・・・
「こんにちは!xxさんの引越を手伝いに来ましたぁ」
頭の中で、北島三郎のマネをする清水アキラが・・・
 ♫は〜るばる来たぜ女子寮へ〜
  ブーロック塀を乗り越えて〜
  ココは女の塒だぜ
  白い太もも
  大きな乳房
  チラリ見えたぜ縮れッ毛
  と〜てもガマンがぁ〜 できなかったよぉ〜
と、女子寮の単語に興奮したバカ二人が、目的の3階の部屋に着くと、既に段ボールの山。
へ?  段ボールに詰めたりしないんですか?
なんか、女子寮の部屋⇔クルマ=3回だった。
だから、クルマ⇔新しい部屋=3回なわけで・・・
ヘタしたら、端の部屋からアパート見えちゃう近さ・・・

というか、引越って午前中で終わるような簡単な仕事なんですね・・・