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上司の溜息

主任昇格の内示があった週末。
そろそろ学生さんの夏休みも終わるかな?という土曜日。テスト項目が終わらないから、休日出勤したいという新人女子社員yuki。来週から客先での結合テストが始まる常駐メンバーには入っていないし、別に進捗が遅れても問題が無い場所なんだが・・・
出席予定者がいないから1人でゆっくり作業しようと思ってたんだけど・・・
フロアで新人を1人で出勤させてはイケないというお約束。
休日出勤者は前日までに予定を上長の許可を得ることというお約束。
等々、面倒臭いコトやってたら、夕方にフロアキーとビルの管理キーを持って、総務のおねーちゃん登場。

は? ビルの管理キーって、明日このだだっ広いビルに二人っきりですか?

笑いながら頷いて、各フロアの救出予定者表を課長の机におく総務。
新人の女の子に手を出さないように・・・ (笑)
下らないこと耳打ちしていくな!
若干、明日の休出ヤバそうな匂いがし始める。

隣のコンビニでサンドイッチと缶コーヒー買って、ビルの裏出口に行ったら、yuki嬢がお待ち・・ お前は学生か?あっ、数ヶ月前まで大学生か・・・ という感じの私服。
ビルの中真っ暗だから、マニュアル記載通りにスイッチ押せば電気が点いて、1Fが明るく。で、エレベーターとかツイ意識してしまうし・・・ シティハンター冴羽燎状態・・・
で、自席について気がついた・・・
yuki嬢の後ろじゃね? ヤバい席じゃね?
自分のPC立ち上げて暖気開始は同じ感じだけど、プロジェクト共有UNIX立ち上げを自分のノート見ながら時折溜息吐きながら進めていくyuki嬢

惚れてまうやろぉ〜(当時まだ、Wエンジンでてきてません。)

とか何とか言いながら、自分の持っている他のプロジェクトの進捗チェックとか普段出来ずに遅れ気味な部分を消化し始めた。
経過時間と言うより、作業に没頭。
「すみません、この部分の事が解らないんですが・・・」
表示される変数の値の動きをステップ単位で追って・・ というやり方と変数値の表示について教えていたとき・・・ HDDの音しか聞こえないフロアに他のモーター音が聞こえてくる。
え? 昼間ですけど・・ このビル出勤予定者は僕らだけの予定で、ある意味2人の甘い場所なんですけど・・・
「モーター音聞こえます?」yuki嬢が画面見ながら若干ビビリ気味。
暫くすると、モーター音は止まってフロアにチーンというエレベーター停車音と、入り口のセキュリティキー押す電子音。
ドアを開けてオタク的なウチの課長登場。
はぁぁ 流石に溜息でた2人。
で、見渡す課長席に座る課長様。
淡々と自分のPC立ち上げ、A3の紙がファイルされた細かい字が埋め尽くされた課の売上げ表を見始めた。
ある意味、変な間違いを起こさない為に舞い降りたチンクの様にさえ思えた。(注:リボンの騎士)

それからは、3人のキーやマウスをクリックする音、偶に聞こえる課長の溜息・・・ その音の波に支配される静寂に包まれたフロア。
暫くして、課長がその表を僕のトコに持ってきて、夏休み前に立ち上げたプロジェクトの予実差について聞いてきたので色々と話すと、下のフロアにある喫煙所に行くと、部屋を出て行った。
すかさず、yuki嬢は僕の隣の席に座って話し出した・・・

「あの・・・課長が偶に溜息しますよね?」
あの溜息の音気になるのかな? と思っていたら・・・
「ココの席じゃ、見えないですね・・」というと、説明を始めるyuki嬢
それによれば、
課長の席はフロア全体が見渡せる位置で、丁度端から端まで並んだ大きな窓を背負う形。yuki嬢の位置から課長席を見ると窓には課長のPC画面が写っている。只今スクリーンセーバーが起動されているあたり、離席時はスクリーンセーバーとパスワードという社内ルールを守っているようだ。
そして、yuki嬢は恐ろしいコトを言い出した。
「私見ちゃったんです。」と、まるで黒い電話帳にyuki嬢の電話番号が、男名前で書いてあるような感じで・・・(島津ゆたか【ホテル】)
「課長がやたらと、クリックするなと・・・ ったら、窓に課長の画面映ってて・・・」(火サスのCMジングル)
「マインスイーパー上級編ですよ・・・ 爆発のタイミングで溜息ですよ・・・」

いやはや、課長!部下に何見つかってるんですか・・・
しかも新人って・・・