12ヶ月の詩

数年前に書いたものです。


1月
微塵に散らばり、雪の形成を置き去りにし、形を得た空気が育ちのいい両の目を熱くした

2月
かつてのさざ波へ思考する塔は赤い毛糸を咥えて、私の証明を栞として持ち運んでいた

3月
古臭いタンバリンを鳴らす天秤はあいまいな輪郭線でとうとうと笑う

4月
風の中で どこへ行っても 虚構へ声がさまよい出でる 狭い浴槽で その律儀な骨格が 不甲斐なさを泣きながら咀嚼している

5月
筆圧ですべてが始まり、港で破壊が緊急で煮詰まっていく

6月
右頬のほくろは3つ 想像力を掌握しようとして打ちのめされたその喪失は 手記の終わりをレンズ越しに提示している

7月
天国から転がり落ちる星を見て、貴方みたいだと笑う貴方が嫌い 好きだけど

8月
「手を繋いで海に祈りに行きましょうね、死を手懐けたあとで」

9月
定型の幸福の中で明日へ旗を振る 恩讐を越えられないまま無辜であると思いたい男

10月
暗い部屋で厳粛に遮断機の鳥が伸びていく 氾濫したさみしさは不眠症で返事を待っている

11月
消滅に色を与え、真昼は震え、我々は陸に手を引かれ、孤独からの解放、致死量を背負いながら

12月
歳月は動悸をもたらすほどに膨大で、海底でひとり音のない悪夢は配列され、すれ違うのをぼんやりと待っていた

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