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移行している最中の世界を体験し、新しい世界を描く 〜環境〜

「移行している最中の世界を体験し、新しい世界を描く」 では、「暗いトンネルに入っていると思っている「今」が、実は新しい世界へ向かっている最中の体験なんだ」という視点に立ち、世界を6つに分類して、今後どうシフトしていくかを考えています。考えの起点は「恐れ」ではなく「希望」です。
本章では「環境」に焦点をあてます。
写真:海氷が溶けた水を蹴立ててそりを引く犬たち/Steffen M. Olsen/AP CNNニュース2019.06.18より

科学者からの提言

1922年、憂慮する世界科学者同盟(UCS)が、一つの提言を発表しました。科学分野のノーベル賞受賞者の大多数を含む1,700人以上の科学者が「世界の科学者が人類への警告」という提言に署名しました。
「地球は有限である・・・先進国・発展途上国双方において環境に悪影響を与えている現在の経済活動は、修復不可能な損傷を地球に与えている。」

更にそれから25年後、世界科学者同盟(UCS)は新たな提言を発表しました。「世界の科学者が人類への警告:第2版」です。184カ国、2万人以上の科学者が署名しました。
「私たちは森林破壊、海洋の酸性化、淡水供給の減少、動物の大量絶滅の危機、人口の急増、過剰消費、大気汚染などに直面している。」

科学に基づく警告は、前代未聞のグリーンランドの氷河溶解や、オーストラリアの山火事、日本においても毎年のように大型の台風による広範囲で大規模な災害、毎夏の猛暑の到来などの形で現実のものとなっています。

第25回気候変動枠組条約締約国会議(COP25)が2019年の終わりにマドリッドで開催され、パリ気候合意を支える枠組みの主要な議題に関して合意するため、200カ国の代表が出席しました。しかし、各国間の炭素市場の規制を作成するような差し迫った気候変動に対しての対策は、次の2020年11月の気候会議に持ち越され、気候変動に対する前向きで希望的な行動への機会を逃すことになりました。
この気候変動への各国のリーダーシップの欠如は、どこからくるのでしょうか?

地球を物質的にしか捉えず、物質で自己を満足させることが最優先の意識と生活様式

この気候変動への各国のリーダーシップの欠如は、実は私たち一人ひとりの意識が根底にあります。地球を物質的にしか捉えず、自己を満足させることが最優先の私たちの意識と生活様式です。

例えば、「ファッション業界」。世界中で年間約1,000億の衣類が製造され、(20年前の400%増)その1/3はゴミ処分場に行き着き、現在も年間7%の割合で増加しています。生産されるすべての衣類には、エネルギー、水、化学物質、土地利用に関して環境コストが伴います。国連気候変動枠組条約によると、世界の温室効果ガス排出量(GGE)の約10%は、その長い供給連鎖とエネルギーの集中生産のため、ファッション業界により大量排出されています。

このように、地球の温室効果ガス排出量(GGE)のほぼ1/4が、人間の不必要で間違った土地の利用によるものであると言われています。木材を得るためや土地を得るための森林破壊、食用に飼育されている膨大な家畜、大量生産で農作物をつくるための化学肥料の過剰使用・・。

毎日、食べきれない食料を買い込み、その一方で賞味期限の切れた食料を捨て、毎シーズン着ない洋服を購入し、その一方でまだ着られる洋服を捨て、必要ではない雑貨を買い、家がモノで溢れていくー。
私自身の行動もこれに当てはまりますが、先進国はどこもこのような生活様式が当たり前のものになっているようです。

私たちの生活がこのように地球を犠牲にした土台のもとに、築かれていることを私たちは見ないフリをしてきました。最も気候変動を増大させているものは、わたしたちの地球をただの物質、つまり「素材」としか捉えず、自分たちの尽きることのない欲求を満たすことで、破壊してきたのです。

そして、いま、人類に起きているのが新型コロナウイルス感染症の拡大です。因果関係は、まだはっきり解明されていませんが、確実に言えるのは、人類が地球を貪欲にただの物質として消費してきた結果であると思います。
地球は単なる物質ではなく生きた有機体であり、わたしたちの「母」なのです。

新しい原動力「分かち合い」と「協力」

気候変動の問題が、世界中の人びとに「自分たち自身の取り組むべき問題である」と印象づけたのは、2018年に始まったグレタ・トゥーンベルさんの「気候のための学校ストライキ」でしょう。
それから約1年後には全世界的な緊急気候変動のストライキに拡大し、2019年9月20日から27日までの1週間で世界中で760万人以上の人々がこのストライキに参加しました。これは、歴史上最大の世界的な抗議行動の一つです。
世界は若者を中心に目覚め始めました。
この抗議活動は日本にも波及し、何百人もの学生と環境活動家たちが、「グリーンに行こう」「地球を救え」などの手書きのプラカードを手にして「気候正義!」と叫びながら行進しました。

私たちは、破壊より分かち合うことを優先し、競争よりも協力することを優先したとき、そして地球に対して個人的、集団的責任を受け入れたとき、全く新しい文明・制度・技術・インフラを再創作することが可能になります。
そして、それを創りあげていくことは、簡単な道ではないかもしれませんが、人類の新たな歓びの道になる可能性があります。
なぜなら、分かち合いと協力を表現することが、これからの私たちの新しい原動力になるからです。

S・O・P(セーブ・アワー・プラネット)とわたし

以前noteで「S・O・P(セーブ・アワー・プラネット)とわたし」というタイトルで書いたものを抜粋します。
わたしとわたしの家族の行動の変化が出てきたのは、2年ほど前、地球の置かれている現状を知った頃からです。いつも何気なく買っていた衣服や雑貨を、SOPの観点から、製造工程や企業の姿勢を選んで買う。
電子レンジを持たず、「わたぼうし」という保温アイテムを作ってお釜やお鍋を保温する。プラスティックゴミを減らすべくペットボトルを買わない。ビニール袋は貰わない、など。

「そうしなければ地球は壊れちゃう!」という悲観した気持ちからではなく、「地球に優しく行動できる自分がいることが、嬉しい」という新しいよろこびの感覚から自然に行動が起きています。

以前、目にとまった記事を紹介します。

アメリカのカリフォルニア州出身のリヤン・ヒックマン君は、3歳の時に、父親に連れられて地域のリサイクルセンターを訪れました。そこで、プラスティックの缶やボトルを入れた袋を現金に換えた時に、「僕はこれから先もプラスティックをリサイクルするんだ!」という一生の使命に目覚めたそうです。
翌日から、プラスティックバックを隣人に配る考えを両親に伝え、リサイクル活動が隣人や友人に広まり、現在ではカリフォルニア州のオレンジ郡全体に広がっています。
現在8歳になったリヤン君は、毎週トラック1台分の缶やボトルを仕分けしてリサイクルセンターに運びます。「リサイクルすることはとても簡単なことです。ただボトルを持ってそれを同じ種類の置き場所に持っていくだけです。」と述べています。

幼い彼は、人によく思われたいとか、賞賛されたいとかではなく純粋にリサイクルする歓びからシンプルに行動しているのです。

今後はこの「分かち合い」と「協力」という、周りを含んだ歓びの意識が、人間が行動する動機の大きな土台になっていくでしょう。







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