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自分には声優さんを応援する才がないという話

 役者が役と混同されるというのはよくある話です。

 例えば「男はつらいよ」の渥美清さんだったり、「金八先生」の武田鉄矢さんだったり、「踊る大捜査線」の織田裕二さんだったり、「相棒」の水谷 豊さんだったり…我々視聴者の視点からすると、こうしたはまり役というのは、どうしても役者さん自身のイメージにも影響を及ぼしがちです。

 これは逆もまた然りで、大昔、私は声優さんがアニメ以外の場に出てこられることをあまり喜んでいませんでした。声優さんの顔や性格がちらつくと、アニメの物語の解釈にノイズが入ると思っていたからです。
 今考えるとこれはおかしな話で、普通の俳優さんはそこらじゅうで俳優以外の仕事で顔出しをしているのに、声優さんだけそういうことをしないでほしいというのは視聴者の横暴ですから。

 そういう偏見を持っていた私は、アイドルマスターのステージを見て衝撃を受けました。
 アイマスの声優さんは、自分の演じるアイドルを『背負って』ステージに上っています。もちろんステージ上で四六時中キャラクターを演じているわけではないのですが、しばしば『キャラクターそのもの』としての発言をします。
 公式イベントですから、脚本も普段のコンテンツ同様、公式としてセリフを書いているわけですし、歌唱する歌に至っては、歌詞も音楽も声も、普段の『本物』と何も違いがありません。いわば『声優』さんが『俳優』としてアイドルを演じてくれているわけです。
 特に歌唱している場面では、本当にそこに自分が応援しているアイドルが歌っている、といった感覚に陥ることになります。

 これは強烈な体験でした。特に私がシンデレラで担当しているもりくぼは、当初声がついていませんでした。第5回総選挙でボイスを勝ち取り、その後初めてステージ上で高橋花林さんがもりくぼを演じてくれた時、誇張ではなく、頭がおかしくなるかと思いました。

 そんなこんなで、アイドルマスターというコンテンツでは、声優さんとキャラクターの関係性が、他のコンテンツより深いという印象があります。キャラクターを応援していると、自然な流れとして、担当声優さんも応援したい、という気持ちになることがあります。私もそうです。もりくぼを演じている高橋花林さんや、エミリーを演じている郁原ゆうさんを応援しています。

 ただ、声優さんはそのキャラクターだけを演じているわけではありません。別のキャラクターを演じている仕事では、当然そのキャラクターや、そのコンテンツの話をしていますし、あるいは声優さんのラジオ番組では、特定のコンテンツに偏った発言はむしろ軽々にはできません。

 これが、どうにも私には無理でした。例えばラジオなどで桜守歌織役の香里有佐さんと、エミリースチュアート役の郁原ゆうさんが共演した、となると、もう頭の中が歌織さんとエミリーが共演した、に直結してしまうんですね。そうすると、番組に対するコメントとか、感想なんかも、気をつけていても内容が偏っていってしまう。そしてある時はっと気づきました。

 これ無茶苦茶迷惑なのでは、と。

 だから私はある時、声優さんの活動を追うことをぱたりとやめました。もちろん今でも郁原さんや花林さんをはじめ、アイマス声優の皆さんを応援している気持ちには変わりありませんが、私はあまりにキャラクターを偏愛しすぎていて、他を見ることができず、ゆえに声優さん自身を見て、応援する才能がないからです。

 その分、これからもしっかり、もりくぼとエミリーを応援していきたいと思っています。

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