TC03孤島サスペンスホラー「クルリウタ」のドラマを聴くための映画五選

先日、ラウンジの方がこんな事を言っていた。

「『クルリウタ』のドラマ、聴いてみたいけれど怖いのが苦手で聴けずにいるんです…」

 なるほどホラー、サスペンス、スプラッターなどなど、「怖さ」とか「グロさ」には、いろいろある。好きなアイドルたちの出てくるドラマCDだから聴きたいのはやまやまだが、「具体的にどう怖いのか」が分からなければ手に取るのも憚られるというもの。だが正直この手のジャンルは、「だんだんと慣れる」やり方しかないように思える。もちろんその方に最終的に聴けるようになって欲しい訳ではないし、頼まれて書いている訳でもないから、この記事はただ純粋に「『クルリウタ』ってじっさいどの程度怖いもんなの?」という問いに一つの基準のようなものを付けてみようという試みだ。ホラー映画とか、じつはけっこうジャンルとして難しいのだ。
 それでは早速見ていこう。もちろんネタバレは無しだ。で、これから紹介する映画には、「クルリウタ」のドラマを50ポイントとした時の怖さを数値化してある。この数値も勿論一個人の意見だからあまり真に受けないでほしいのだが、一応「クルリウタ」が「ゴア表現のあるスプラッター寄りなホラー」である事を意識して付けている。

1.イット・フォローズ(2014年公開)
「クルリウタ」ポイント:20
 いわゆる「ヒタヒタ系」のホラー映画。正直怖くはない。「嘘つけホラー映画マニアの言う『怖くない』なんて絶対に詐欺だぞ」と思われるかもしれない。それでも言うが本当に怖くはない。ストーリーは、主人公が自分のあとをゆっくりつけてくる「それ」から逃げるだけのお話。ゆえに物語の肝は「それ」と対峙する(=向き合う)事である。この映画、ストーリーの展開から「それ」の正体はエイズなんじゃないの?と言われる事もあるが、それは監督が自ら否定している。ジョジョの遠隔操作型スタンドが哲学めいた命題を引っ提げて追いかけてくるだけなので、ホラー初心者向けの映画である。

2.リング0 バースデイ(2000年公開)
「クルリウタ」ポイント:30
 日本のホラー映画、いわゆる「Jホラー」がまだジャンル映画としてちゃんとしたモノを作ろうとしていた頃の作品。「日本のホラー映画ってマジでクソじゃんwww」と言われる要因の一つに「アイドルの起用」が挙げられようが、「クルリウタ」はマジで怖いから安心してほしい。さてこの映画、『リング』で人々を次々に呪殺する女の霊「貞子」が井戸にドボンするまでの話である。そのため「呪いのビデオ」は出て来ない。「幽霊なんかより人間の狂気の方が恐ろしいよな」というタイプの映画。あまり知られていないが、本作で貞子を演じるのは当時20歳の仲間由紀恵。彼女の映画初主演は、なんとホラー映画だったのだ。この映画での演技が堤幸彦氏の目に留まり、『TRICK』の主演に抜擢されブレイクする事になる。ボッシュートされた貞子のラストシーンは必見。主題歌もラルクアンシエルだからコワクナイヨ、ホラキミモホラースキスキシヨウネー。

3.ウィッチ(2015年公開)
「クルリウタ」ポイント:40
 魔女をテーマとしたゴシックホラー。今作はキリスト教を中心に据えたある家族の物語である。こちらも直接的なゴア描写はないものの終始不気味な雰囲気が続く。この家族、とある事情で人里離れた森のそばで自給自足的な生活をするのだが、もうその時点で怖い。ろくな明かりもないし、ちょっと目を離したら赤ん坊消えるしでヤバイ。一番恐ろしい(=ホラー映画愛好家基準で本当に素晴らしい)のは、主人公の弟の演説のシーンであろう。そこにすべてが詰まっている。本作は、「救いとはなにか」「善とは、悪とは」が「あくまで映像を通じて」我々の肩にそっとのしかかってくる展開が特徴的だ。台詞が少なく基本的に静かな事が魅力的な作品であると言える。同時期の作品で、同じくキリスト教をメインテーマにしている映画としては『哭声(コクソン)』(2016年公開)があるが、あれはどちらかと言うとコメディに寄っている。あと主人公を演じるアニャ・テイラー=ジョイがマジでかわいい。オススメ。

4.SEVEN(1995年公開)
「クルリウタ」ポイント:45
 デヴィット・フィンチャー監督の傑作サイコ・サスペンス。こちらもキリスト教における「7つの大罪」がもとになってはいるが、教義や宗教にまつわる動物などの知識がなくとも楽しめる作品となっている。今となっては冒頭のクールなOP映像が有名であろう。ポイントが高めの設定なのは、作中起きる猟奇殺人がまぁまぁグロい点。そして、ラストが実にえげつない点。個人的には、W主人公を演じるブラット・ピットとモーガン・フリーマンが最高。この2人が好きなら観て損はない。対して犯人のサイコ野郎の名は「何者でもない」という意味のジョン・ドゥ。ネタバレ無しって言ったじゃんて思われるかもしれないが、本当にキャラクターそれ自体には意味がないから問題ない。ちなみに本作にインスパイアされて連載された漫画が原作の邦画『ミュージアム』(2016年公開)は本当の本当にオススメできないので、同じ時間を割くのならこちらを観た方が人生を有意義に過ごせると思う。

5.グリーン・インフェルノ(2013年公開)
「クルリウタ」ポイント:70
 新進気鋭のスプラッター監督イーライ・ロスの食人映画。正直慣れていないとめちゃくちゃグロい。なぜなら、目の前でさっきまでピンピンしていた仲間が解体されてお食事になるからだ。食人は、主に「動物的食人」と「社会的食人」に大別される。前者は、単純に飢えをしのぐ目的で為される。通りを歩けば何軒もコンビニがある今の日本では想像もできないであろうが、大飢饉や兵糧攻めなどでこの手の食人は容易に発生した。要は、食わないと死ぬから食うのである。対して後者は、さらに細かく「族外食人」と「族内食人」とに分かれる。「族外」は復讐、「族内」は葬儀の意味を有している(ただし、単に「供物」の意味を持つケースもある)。本作は、食人族の行う食人がこれらのどれにも当てはまらないために、学生運動家いわゆる「意識高い系()の大学生」が悲惨な目にあう以上の意味を持たず、ゆえにジャンルとしては段々とコメディ化していく作品である。コメディ化するからと言って楽しく観られるかと言うと、「(あくまでスプラッター好きの基準で)愉快な展開」である事は否定しない。そのためポイントは高い。では、なぜそうまでして紹介したかと言うと、「クルリウタ」で千鶴の演じる女主人が、まぁそういう役だからである。

以上。「クルリウタ」に挑戦したいが尻込みしているあなたに。1から順に鑑賞していって、4までいけたら「ほぼ大丈夫」、5まで観れたらもう立派なホラー映画マニア、じゃなかった「クルリウタ」耐性マックスだ。さぁそこの君もポイントを貯めて「クルリウタ」に挑戦しよう。

おしまい

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