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電動キックボード法改正のハナシ

先日、電動キックボードの法改正のニュースが出て、それに対してTwitterでコメントしたところ、開発者からの意見だったので関心を引いてしまったのか、いわゆるバズッた状態になってしまいました。たぶん炎上では無いと思う。(笑)
ツイートのリンクこちら

私のコメントの趣旨は、
電動キックボードは、便利で楽しい乗り物。とは言え、自転車やバイクと同じようにリスクのあるモビリティなので、安易に無免許OKにしてしまうのは危険なのでは?
というものです。
それに対して、多くの方が(たぶん)賛同の意味で良いねをしていただきました。
中には、「こんな危ないモノを公道走らせるな!」みたいな否定的なコメントも。
まぁでも、いろんなご意見あって良いのでは、と思います。

法改正に際して、危険性について皆さんそれぞれ感じるレベル感は異なるものなので、自由気ままに「危ない!」「危なくない!」と議論しても着地点なく終わりが見えないので、通常の手続きならば、実証実験して統計データ取ったうえで各省庁の合意形成したうえで法案化、国会に提出、という流れで進んできたハズです。
今回の法案では、電動キックボードシェアリングのLUUP社が中心となっているマイクロモビリティ推進協議会が取り纏めてロビーイングして、法案化~可決に至ったのだと伝え聞いております。
その過程で、弊社にも警察庁の担当官が東京からわざわざ鈴鹿までお越しになり、開発製造事業者としての意見を求められた事もありました。

各事業者や団体からの意見聴取、全国各地で実施された実証実験の結果、「社会として許容できるレベルに安全」だと判断されたのだろうと思います。
手続き的には正しかったのでしょうが、「16歳以上は無免許OK」というルールは、保守的な日本社会としてはかなり前のめりだなぁと感じています。


私としては電動キックボードは非常に利便性高く、楽しさもあり、素晴らしい乗り物だと捉えています。だからこそ、自社で製品を開発して商品化しています。
けれども、メリットの裏にはデメリットもあり、そのひとつとして交通の中での危険性があります。
①走行性能は自転車以上バイク未満
弊社で製造しているSunameriの場合、カーボン製フレームや、様々にレーステクノロジーを投入している事もあり、制動性能や旋回性能の面で一般のバイクに劣る部分はありませんが、一般の電動キックボード(2輪)の場合、制動性能や旋回性能でもバイクから大きく劣るものもありますので、一般論としては、
走行性能は自転車以上バイク未満
と考えたほうが良いと思います。
②小径タイヤなので荒れた路面や段差は苦手
街を走る自転車の径は16インチ以上が多く、ママチャリだったら24インチ、マウンテンバイクなら29インチというのもあります。
バイクなら原付バイクで10インチから、スポーツバイクなら17インチという感じです。
対して電動キックボードの場合、6インチや8インチが多いです。
弊社のモビリティでは、10インチ未満は公道での使用に耐えないという理由で10インチ未満のタイヤは使っていません。
それはやはり、タイヤ径の大きさと段差の乗り越え性は比例関係にあるからに他なりません。
さらに、走行安定性に関与する要素として、回転するホイール&タイヤが生み出す「ジャイロ効果」というものがあります。
この「ジャイロ効果」もまた、径が大きいほど大きくなるものなので、同じ速度で走っていたとしても大径車のほうが「そこに留まろうとするチカラ」が強く、外からの影響に強くなります。
③立ち乗りなので重心が高い
立ち乗りの爽快さと裏腹で、重心が高いため、急激な姿勢変化に対して弱い傾向があります。
特に急ブレーキをかけた際に運転者がつんのめって前に転がってしまう事があります。

と、電動キックボードが持つネガティブな要素を抽出してみましたが、それは、「知って、学び、訓練すること」で乗り越えることができる課題だと考えています。
私は、もともと自動車レースのフィールドで乗り物を学んできた人間なので、危険が傍にある状態に慣れているタイプです。
自動車レースの世界では、「危険=遠ざけるべきもの」ではなくて、「危険=いかに知り、制御するか」が大切なスポーツの要素として存在しています。
なので、今回のTwitterのコメントで散見された、
「こんな危ないモノはダメだ~!」と門前払いする姿勢にはいささか違和感を感じています。
「知り、学び、訓練する」と言っても、そんなに難しいものじゃありません。普通自動車免許を取得する際に学ぶ基本的な交通に関する知識に加えて、電動キックボードの特性を体験すればきっと多くの方は、問題なく公道を走る事ができます。免許未取得者でも1日もあれば充分。
そしたら、あの楽しい走行体験を手に入れる事ができます。
今までレーシングカーやスーパーバイクといった楽しい乗り物を散々味わってきた私がのめり込んで開発しちゃうような電動キックボードですから、その楽しさは保証します。


LUUP社のようなシェアリング事業者にとって、より手軽にサービスを使える仕組みに改編していくことが彼らの事業を成功に導く鍵と捉えて、今回のやや勇み足気味な法改正に向けて邁進したのかもしれませんが、事故が頻発すれば事業の発展はおろか継続も難しくなるでしょう。
法案が可決してしまった以上は、2年以内に施行されて、無免許電動キックボードが巷に出てくる未来に向けて備えなくてはいけません。
私たちは、開発製造する者の責任として、試乗会+安全講習のイベントを行っていきます。(本心としては、設計開発に専念したいけれど…事故のニュースはできるだけ聞きたくないので)

今回、Twitterを通して皆様の生の意見をお聞き出来て本当に良かったです。
厳しいご批判も含めて。
より便利で楽しい移動のデバイスが広がる将来に向けて頑張りますので、よろしくお願いいたします。

フヂイ エンヂニアリング



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