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ひいろのお面

…やってくれたな、サンリオ。

というわけで、まいまいまいごえん6話について、シンタに焦点を当てて解釈・感想を書き連ねようと思います。
何卒よろしくお願いいたします。

⚠ゲーム版6話までの重大なネタバレ及び漫画版14話までの若干のネタバレを含みます


シンタのヒーロー観

シンタにとってのヒーローとは

「ぼく……いや、オレはある日ヒーローになった。
ヒーローになりたいと思って、
お面をつけて、マントをつけて……
ヒーローの装備をばっちり整えたから、
当然オレはヒーローになったんだ。

……ヒーローになったはずなのに、
あんまりヒーローになれてなかったらしい。
だってヒーローになったなら、オレだって
ブラックみたいになんでもできるはずだ。

でも……おばけは怖いままだし、
野菜を残したら怒られるままだ。

まさか、ひとりでヒーローになっても
あんまりなにも変わらないのか…?」

プロローグで描かれたシンタの心情では、シンタはヒーローであること、アキが目指したものが「唯一無二」なのだとしたら、すなわち彼は「完全無欠」な存在に強く憧れを抱いていたことがわかります。それも辛い過去からのものでなく、おそらく子供らしい純粋な憧れ。
装備を整えたんだからヒーローになれているはず…という台詞から彼は形からヒーローになろうってタイプなのでしょう(というかこの年齢で本質的なヒーローになろうという思考に至るほうが怖かったりするので、当たり前っちゃ当たり前である)そのため作中でも必死に自分はヒーローだと言い聞かせて、ヒーローである自分を保とうとしていたのでしょう。「シンタ」を殺して、「ヒーロー」であろうとしていたのでしょう。
ただ彼はその「完全無欠」には程遠い存在だったことには薄々気付いていました。だからこそその穴埋めとして、自分がヒーローとして輝くための舞台として、ヒーロー戦隊を結成したのです。
「手下の手柄は戦隊の手柄、だからオレひとりがヒーローになれなくても…」
と、自分の欠点を戦隊の存在で補おうとしていた彼は、その戦隊が半ば崩壊したことで自分の弱さが顕になってしまい、6話前半でピリピリしていたのでしょう。純粋な憧れ、理想像が自分の首を絞めることになってしまうような不器用さがありますね。

また、彼にとって、ゆぅろぴあで園児たちが見せた活躍は、彼の思う「ヒーロー」そのものだったからこそ、彼は自分だけ戦力になれていない「上っ面だけのヒーロー」であることを気にしていました。

「戦隊のメンバーが、なんであんなことをしたのか まわりのヤツも、なんであんなことができるのか
まったく、ぜんぜん、わからない。」

シンタにとっての戦隊

前述した通り、シンタは戦隊においてフォーカスを当てているのはそれぞれの子供たち…というよりは戦隊というグループそのものです。彼は戦隊のリーダーとして、レッドとして輝くことが最重要であり、戦隊のメンバーそれぞれを「レッド」として大切にしているとはあまり言えません。(シンタとして、ならまた話は変わってきますが…)そのため、えいゆうシアターAでも「今度こそ完璧な戦隊ができた」と言っていたのでしょうか。

漫画版において彼は「シルバーもグリーンもパープルもゲームオーバーしたらヒーロー戦隊しっかくだろ」と涙を流しながら、感情を顕にして言っていたのは、純粋に仲間を失った悲しみでしょう。しかしゲーム版ではそのような仲間を失った悲しみよりも、「戦隊のメンバーがなんであんなことをしたのか」という、疑問と彼がヒーローでいられないことの焦燥感の方が大きいのではと思われます。

これはあくまで私の推測に過ぎませんが、この別れ道は「シンタの戦隊5人の中で、戦隊のことがだ~いすきな人は何人デミ?」の問題、そしてマモルの「僕は…… ……シンタくんの戦隊にふさわしいヒーローでいられたでしょうか?」の言葉がターニングポイントになっているのではと思いました。

6話終盤では「こんなヒヨコにえらそうにされてみんな嫌だったよな」と戦隊が独りよがりであることを脱落した後に内省したのですが、漫画版の彼は戦隊のメンバーは戦隊が大好きなはずだという自信を持った状態でいきなり、戦隊のメンバーみんなが戦隊をだ〜いすきというわけではないという事実を突きつけられました。

漫画版では「自分だけになっても戦隊は解散しない」、ゲーム版では「今度こそ完璧な戦隊でヒーローになってみせる」と戦隊に対するアプローチが異なる彼。6話更新前はゲーム版の彼は「戦隊にふさわしい自分を演じている」と考察していましたが、6話はどこかヒーローらしい活躍を見せた戦隊メンバーおよび園児たちから少し目を逸らしているように見えました。目を逸らしているというよりは、自分が圧倒的なヒーローであろうとすることに夢中になり、周囲が見えなくなったというのが近いでしょうか…。

戦隊というヒーローとしての舞台が崩壊した彼の行動が、漫画版ではどうなるのか楽しみですね。

理想と現実

シンタは猪突猛進的で、何も考えずに前に突き進める…のですが、岡田相手に「オレなんか」と、卑下するような発言をしていました。
彼は自分なんかヒーローなんかじゃないことをずっとわかっていました。だからこそその理想と現実でメンタルが不安定になり、焦ってしまったことであのような結果になってしまったのでしょう…。
彼は自身を客観視できるからこそ、あのシーンカードでは「みんなこんなごっこに付き合わてしまった」「こんなヒヨコにえらそうにされて嫌だったよな」と内省し、立ち上がることを怖がることを恐れてしまいました。

彼が目指したかったもの

シンタは本当は素直で優しいのですが、ヒーローという完全無欠で気の弱い彼とは違った強い存在に憧れて夢中になって、だからこそ周りが見えなくなってしまって、本当の彼自身を見失ってしまったのだと解釈しました。そんなシンタが、6話で本当の彼を取り戻すきっかけは、彼の傍にいた友だちでした。

シンタと戦隊

ブルー

彼らは元々「レッド」と「ブルー」ではなく、「シンタ」と「ワタル」として、ふたりで遊んでいました。マドカが無理矢理参加させられたしたときも、「オレたちでヒーローになろうぜ、ワタル!」と。しかしヒーロー戦隊が成立してからのシンタは、自分をレッドとして、ワタルをブルーとして、自分たちそのものとしてではなく戦隊の一員として扱うようになったのです。これは自分を「シンタ」としてではなく「ヒーローのレッド」として扱う、演じるようになったことの延長線だと思われます。そんなシンタに、ワタルは「正直、前のほうが面白かったのら……。」と吐露しました。

「本当はぼくは、最初からずっと、
ブルーなんてやりたくなくて……
シンタがヒーローかどうかなんてどうでもよくて……
レッドとブルーじゃなく、
シンタとワタルとして遊びたかった。
戦隊とかヒーローなんて気にしないで
ふたりで脱出できればそれでよかった。」

と、彼はただ「シンタ」にしか興味がなかった、二人で遊べればそれでいいのに自分を自分として見てもらえない寂しさに、ワタルは嫌われたくないという思いでフタをしました。言ったら、もうシンタはワタルと遊んでくれなくなっちゃうと思っていたから。

彼にとってはそのままのシンタでも「いつだってぼくをわくわくさせてくれるヒーロー」であり、そんなシンタと、遊びたかっただけだったのです。

戦隊メンバー

カエルタマゴの集合意識下、シンタは全部全部に後悔していました。
いつから間違っていたのか、気付いていました。
ヒーローの殻を被っただけのヒヨコなんかがえらそうに周囲を手下扱いして、みんなきっと嫌だっただろうけど、こうしてカエルタマゴでいればそんなことを気にする必要もない…
そう思っていたシンタに、マモル、リンリン、マドカが声をかけました。

「いつも前向きで明るいシンタくんと遊びたいからそばにいたんです。もしシンタくんに憧れていなかったら今の僕はありません。」

「シンタくんがヒーローの殻を被っただけのただのヒヨコなんて、とっくに知ってるよ。……そんなシンタくんが、転ぶのが怖いなんてなんだかいまさらすぎておかしいな。」

「被写体がフツーでもネタがおもしろくてバズることだってあります。べつにシンタを撮るのがつまんなかったわけじゃないですよ。」

と。この彼らの発言が本当なのだとしたら、ワタルも、戦隊のメンバーも、みんな「シンタ」と一緒にいるのが楽しいから遊んでいたのです。

彼がヒーローだったことなんてありませんでした。だからこそ、そんな全然ヒーローなんかじゃない、でもヒーローでいようとするシンタに、周囲に人が集まったのです。

本当の「シンタ」とは

……たしかに、お前は誰よりも子どもだ。

「マモルのほうが物知りで…
リンリンのほうが思いやり深くて…
マドカのほうが何かに一途で…
ワタルのほうが人付き合いがうまい。

お前は全然ヒーローなんかじゃねえ。」

「考えなしに突っ込んで、すぐ転んで……
……それを素直に反省して、すぐ立ち上がれる。
転ぶことを怖がらない。
そんなお前に惹かれて集まってきて、
いつの間にかでかい輪ができてる……。

……それが、シンタってヤツだ。
……俺には、とてもマネできねぇ。」

シンタは、周囲よりも劣っているからこそ転ぶ数だって多い、それでも何度でも立ち上がるような子供らしい強かさを持っています。
子供になりきれず、素直になれず、一人でなんでもできてしまうハヤテにとって、一人じゃなんにもできないけど仲間に囲まれてる、誰よりも子供らしいシンタが少しだけ羨ましかったのです。
そんな少しだけ羨ましかった彼が立ち上がれなくなってしまったのが、ハヤテにとっても悔しかったのでした。
だからこそカエルタマゴになった彼を鼓舞しました。かつての彼がころんだ時のように、立ち上がれるように。

シンタとワタル

カエルタマゴでいればもう傷つかずに済む、転ばなくてもいい、みんなでずっと戦隊でいられる…
でもそこにいたのはかつての戦隊の仲間ではない、カエルタマゴだった。
「どうするのが正しいかなんて、今のぼくにはわからないけど…やっぱりカエルタマゴ戦隊じゃイヤだ……!それだけは確かだ……!」
シンタは、カエルタマゴとしてではなく、ブルーとしてでもなく、「ワタル」に話したいと思って、ワタルの場所へ駆けつけました。本当のワタルの声を聞くために、殻を破って、「本当のおまえをさらけ出してくれ」と掛けました。
「ぼくはおまえを嫌いになったりしない」と言うシンタに、ワタルは涙を浮かべながら
「ブルーはイヤなのら!」
「ぼくはシンタと遊びたいだけで戦隊になんか興味ないのら!」
「だから戦隊じゃない遊びもしたいのら!」
と感情を顕にして言いました。

顔がいい

その時のシンタの顔が少し悲しげなのは、
戦隊を否定された悲しみ…はたまた、自分がワタルに無理な思いをさせてしまったことへの後悔なのか。
私はこの表情は、ワタルがずっと苦しい思いをしていたことに対する後悔の念だと解釈しました。

そんなワタルへのシンタからの第一声。
「__ごめんな、ワタル!!
ほんとうのこと言ってくれて、ありがとう
じゃあ、次からそうするか!

シンタとワタルとして、また遊ぼう!」
シンタはヒーローであろうと強くあろうと盲目になってしまい、すぐ傍にいたワタルにとってのヒーローは、どこかにいってしまいました。
そんな「素直で優しい」シンタを見失っていたシンタ自身を、ワタルが呼び起こしたのが心に来ました。

「ぼくも…こんなんでごめん…」

ヒーローの孵化

殻を被っていた「レッド」は、「シンタ」として殻を破りました。漫画版では「集団側」として描かれていた彼が、「個」として殻を破る展開が素晴らしいですね…。
しかし終盤のシーンにて、

「マモルも、リンリンも、マドカも!
「オレ」が連れ出す!
またみんなで遊ぶぞ!」

と、「オレ」として言いました。
これは、戦隊のメンバーのために、戦隊のレッドとして、必ず連れ出して見せるという彼なりの強い決意の表れだと解釈しました。
「むりにヒーローのフリをしてるより、おまえと遊ぶほうがずっといい」と話したシンタにとっての「オレ」は、無理をしている、届かない存在であることはわかっていました。
だからこそ、「オレが連れ出す」と決意したのでしょう。
シンタにとっての「ぼく」と「オレ」が、また前に進めたような気がしますね。

彼は弱い自分を好きになったわけではなく、弱い自分も自分だと認めることができたのでしょう。

いや〜…六話、すごかったなぁ…

さいごに

六話、本当におもしろかったです。
こんな素敵なゲームをプレイさせていただいたこと、まいまいまいごえんという最高のコンテンツに触れさせていただいたことに感謝の気持ちで一杯です。サンリオ様、ありがとうございました。これからも応援しております。




最後に、聞いてください

聞いてください

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