作品のみアップしたアカウントより〜fuco:と表現されたもの
私たちにとって転機になるような2023年
まず3月に、fuco:とも自閉症とも福祉ともちょっと距離をおいたfuco:laboをつくり、アート靴下を製作販売始めました。支援されるという形をとらず、「いいなと思った靴下が、実はそういう人が描いたアートから生まれた」そんな新しい入り口を目指して。こちらは現在新しい売り場で、新しい出会いがじわじわと広がっているところです。
そして8月に、アート作品というもう一方の入口もつくりたくて始めたのが、Instagramアカウント「fuco _maru.art 」になります。こちらには作家については年齢、性別も含めて一切あかさず、使用した画材、制作年月のみを記録。本人の顔もちらっとくらいしか映らず(そのため一部で男の子と思われていますw)、淡々と制作風景や作品がアップされているだけです。リール動画にも全く加工がありません。
それがですよ!全くの素人個人ながら、たった3ヶ月でフォロワー数8000人超え、投稿によっては370万再生のアカウントになっているのです。そして毎日世界各国から沢山のコメントが来ています。
あぁ、現代の素晴らしさよ!私はグーグル先生をフル活用させていただき、そのメッセージ(国が書いてあるところでは英語圏以外にもイスラム、フランス、アジアなどなど)のほとんど全てを読み、英語で返信させていただいています。そのコメントはいくつかの内容に分けることができると思います。
作品そのものへのメッセージ
一番多かったのは作品そのものへ。シンプルに「素晴らしい、本当に美しい、すごい、」。毎日毎日決まったモチーフを描き続ける作品に飽きもせず、世界中からコメントは続きます。
・あなたは日に日によくなる、能力が素晴らしい。
・もう完全に作品のファン
・今お気に入りのアーティストの一人
・工業的でないランダム感がワクワクする感じで素敵
・スケール感がすごい
・今まで沢山のアーティストを見てきた中、この人の世界観はトップクラスで好き
・個展に行きたい
・購入したい
・I'm in love with your artwork!
・世界観に魅入ってしまった
・同じものがずっと絶え間なく続いているのが、とてつもなく安心感
・心が吸い込まれるほど素敵
・I love it sm this looks great!
・色使いが綺麗で元気をもらう
・信じられないくらいかっこいい などなど
単なるモチーフの連続と思っていて、描き始めた時も外に出すことに躊躇があった私たち家族。このような感想を毎日毎日いただきびっくりしています。そこにはアートに対する、シンプルな「好き」があふれていました。
次に続くコメントは、制作風景について
・とても落ち着く
・気づいたらずっと魅入っていた
・していることの全部が大好き、リラックスする
・この動画大好き、いつも楽しみにしている
・ただただ凄い、圧倒される。脳と手が連動していてかっこいい。
・リズムが一定で心地いい
・集中力が凄い
・もはや職人!昔の絵師の風格が漂っている
・正確に同じものを書き続けるのが凄い天才
・完成が待ち遠しい
・このリズムを聴きながら眠りたい
・壮観!爽快!
・簡単に見えて絶対難しいはずだと真似して描いてみたが、同じ形を同じ大きさで美しく配置するのは想像以上に難しい。その時本人の気持ちいいリズムや感覚で、この美しく熱い作品ができるのだろう
・顔はわからないけど笑っているように見える。イキイキしている。
制作している動画をあげ続けたら、意外なほど「音」に注目されました。こういうのって今ASMRっていうんですね。一定なリズムが気持ちいい、リラックスすると言われて、中にはラジオやYouTubeをしてほしいとの声もあったくらいです。もしかしたら本人も描くという行為と一緒に音も楽しんでいるのかもしれないと思いました。そして、モチーフを等しく、安定感抜群に、凄い集中力で描く様子も注目されていたようです。
大きかった新プロダクトへの期待
他に多かったのは、壁紙、ファブリック、着物、包装紙、カーテン、洋服にして欲しいという声です。ネイルの柄にというのもありました。「全てのデザインを布地にすべき、fucoアートの服を着たい」というコメントなどには、せっせとヘラルボニーのアートドレスをご案内させていただきました。爆売れしてなかっただろうか(笑)。
モチーフの連続という特徴から、素材感が強く、いろんなプロダクトへ汎用しやすいということがあると思います。私たちは現在靴下だけでお腹いっぱいなので、今後企業様などに期待させていただきたいです。引き続きどうぞfucoアートをよろしくお願いいたします!
「もしかして自閉症ですか?」に続くコメント
ある動画がきっかけで、日本だけでなく海外からも、「もしかして〜」と質問いただき始めました。そこで「そうです」と答えると、また沢山のコメントが来るようになったのです。
・娘も自閉症だから何か没頭できるものがあるといいな
・個性を見つけて伸ばすってとてもすごい
・羨ましい。小さい時に好きなものを8年間書き続けて親に禁止令を出されたから、好きなことをひたすらさせるって素晴らしい親だ。
・うちの子も自閉症で描く事が大好き
・自分の知り合いも自閉症で、同じ数字をひたすら描いている。天才気質が似ている。
・楽しいことをずっと続けていられる。自分たちよりずっと幸せかも。
・天才オーラやばい、その才能を大人たちに潰されないようにね。
・一つのことに全力で頑張ってる。自分も頑張ろうと思った。
「ただのアスペルガーじゃないか」とコメントあった時には「そうなんです。でも美術館や博物館で作品展示されたこともあり、企業様から使用料をいただいてつくられた製品が全国で販売されている。ただのって人は誰もいないと思います」と返信したところ、数百以上のいいねがつきました。
「自閉症じゃないか」とか、「ただのモチーフじゃないか」には私が返信しなくても誰かが(海外なら英語で続きます)何か愛あるコメント返しがあって、いろんな方が見てくださってるのだなと感じました。そして、自閉症って顔が映らなくても動作だけで世界共通なんですね(笑)!改めての発見でした。ここまで盛り上がるとは!
そして、3つの切り口「マルツナガル」「fuco:labo」「fuco:」
最初、重度障害者であるfuco:の限られた生活圏内から、もっと多くの人と関われたらいいなと始めたのが「マルツナガル」。そこでは自閉症であること、障害があることを軸に、彼女がアートを通じて世界を広げていく様を発信しています。
だけど、それをあえて語らなかったら、彼女は誰と出会うだろうとアートをのせたプロダクトにフォーカスしてみたのが「fuco:labo」。ありきたりでないグッズは身に纏うとワクワクしたり、思いがけない人とのお揃い感はプロダクトならではの良さです。
更にアートだけを取り出してみた「fuco:」では、思いがけないほど海外の人との交流があったり、作品に癒された、好きだと沢山のリアクションがありました。
何故私たちはこんなに何通りもの入り口をつくるのだろう、持ちたいのだろうと考えてみるのですが、言葉による表現が少ないfuco:のことを知りたいからかもしれません。
彼女は果たして支援される側だけの人なのか(これはどうやら違うよう)、彼女とのコミュニケーションはどんなものがあるのか、彼女のことを知った人はどう思うのか、彼女は福祉制度以外でどんな生き方があるのだろうか、彼女は誰かのために何もできない人なのか(これもどうやら違う)。出会っていく人や反応も多様になることで、いつも新しい発見があります。
なんでもないモチーフを、いつも何も言わず、何も狙わず、ただ嬉々として、とてつもないエネルギーで描き続けるfuco:。
私たちはこれからもなくなるたびに紙やペンを彼女に渡すでしょう。そのアートや課程にどんな価値があるのだろうかなどと考えずに。生きることは表現すること、表現することは生きることなのですね。それはきっと100人いれば100通りで優劣もNGもないということ。出会った皆様から、そしてその言葉から、私たち家族は実感を持って今そのことを教えていただいています。
さぁ、この今年つくった3つの入り口から、今後どんな人たちが入ってくださって、どんな事が待っているのか、どんな彼女が見えていくのか。もっと軽快にあちこちに進んでいきたいです。追いかけられるかは自信ないですが(笑)。
そして、いつも見てくださっている方々が、こんな私たちをちょっと自分ごとのように思ってくださったら嬉しいのです。だからやっぱり「さぁ、このワクワクをご一緒に!」とね。
※次回note投稿は12/15を予定しています(何とかこのペースで継続できそうな予感)。それではまたお会いしましょう!
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