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高額な視力回復機を買ったら詐欺だった話

 僕は小学生のころからファミコンなどのゲームばかりやっていたので、中学生のころにはゲーム画面の文字が見えにくくなりました。そこで僕がやったことは、自分の眼鏡を買うことではなく、母親が使っている度入りの黒いサングラスを借りることでした。それは僕の視力に合っていなかったため、僕の視力はどんどん下がっていきました。

 高校に入学するとさすがに自分の眼鏡を買ったのですが、しばらくするとそれは踏んづけるか何かしてバリバリに割れました。しかし貧乏性の僕は、新しい眼鏡を購入することをせず、割れた眼鏡の破片を学校に持っていってそれを通して黒板の文字を読んでいました。ゲームをするときは画面にめっちゃ近づいていたし、漫画本などを読むときも距離が近かったと思います。

 その結果、さらに視力は下がっていき、とうとう重い腰を上げて新しい眼鏡を買いました。その時点で視力は0.1くらいだっと思います。高校3年生になっていた僕はおよそ2年間、机にかじりついて受験勉強をしまくり、それでさらに視力は下がりました。最終的に視力はこれ以上下がらないだろうくらい下がりました。両目とも0.01くらいでした。とても度の強い眼鏡をつくり、それをかけて大学に通いました。

 そんな僕は視力を回復させることに強い興味があり、「みるみる視力が回復する本」みたいなタイトルの本を買いあさり、自宅で視力回復トレーニングを実行しました。近くを見て遠くを見たり、いろんな方向に眼球を動かしたりするやつです。それを毎日つづけても、視力は一向に回復しませんでした。

 そしてある時、実家でとっている新聞紙に、視力回復機のチラシが挟まれているのを発見しました。その機械の値段は5万円くらいでした。見た目は、丸みを帯びた分厚い白い目隠しのようでした。その機械の内側の画面に表示される光などを見るだけで、視力が回復するということが書いてあります。僕はそれを心の底から欲しいと思いました。

 当時、大学に通いながら郵便配達のアルバイトをしていた僕は、「金ならある!」という状態だったので、すぐにその視力回復機を注文し、2回払いで支払いました。わくわくしながらその機械が届くのを待っていると、2週間くらいで到着しました。かっこいいその箱を開けてみると、「え? これで5万円?」と思ってしまうちゃちい物体が入っていました。実際にそれを頭部に装着してみると、非常に重いです。安っぽいバンドで締め付けても、少しずつずり落ちてきます。

 機械のスイッチを入れたところ、目の前のゲームウォッチみたいな画面にヨットなどが表示され、僕はそれを見つめました。星のような白い光があちこちで点滅し、それを追いかけます。とても目が疲れました。機械を頭部に装着して、めっちゃ近くの画面を凝視するので、「これって逆に目が悪くなるのでは?」と思わざるを得ませんでした。そして5万円のことを思いました。暑い日も雨の日も風の日も、がんばって郵便配達をして稼いだ5万円のことを。

 僕は悲しみで涙がこぼれ落ちそうになりましたが、とりあえずしばらくその視力回復機を使用してみました。しかしながら、視力が回復しそうな感じはまったくしません。「むしろこれは視力減退機なのでは? そしてめっちゃ重いから首を痛めてしまいそうだな…」と思い、次第に使用しなくなり、その高額な視力回復機は押し入れの奥にしまわれることになりました。

 それから半年後くらいにテレビニュースを見ていたら、見覚えのある物体がテレビ画面に大写しになっていました。僕が約5万円で購入した視力回復機でした。それを販売していた業者が詐欺罪で逮捕されたとのことでした。僕は自分の馬鹿さ加減に、つい笑ってしまいました。笑ってる場合じゃないんですけど。

 ところで、いま詐欺についての法律を調べてみました。どうやら、そのときすぐに法的な行動を起こしていれば、悪徳業者からお金を回収することができたかもしれません。当時は法律に詳しくなかったので、ただ泣き寝入りをするしかありませんでした。そして今ではもはや時効が成立してしまっているため、何もすることができません。ガールズバーに行ったつもり貯金をして約5万円を貯めるしかないようです。以下に詐欺に関する条文をあげておきますので、みなさんがもし詐欺に遭ったときは僕みたいに泣き寝入りせず、ぜひ法的措置をとってください。

刑法第246条
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
民法第96条
第1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
民法第126条
取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
民法第724条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

 41歳になった今となっては、視力を回復することは諦めています。眼科に行って視力を測り、適切な眼鏡とコンタクトレンズを装着しながら生活しています。今後はいわゆる「視力回復本」を買うことはないし、ましてや「視力回復機」を買うことなんてないでしょう。適切な視力矯正をすることで、視力がいま以上に落ちることもなくなりました。両目とも0.01ですが、眼鏡やコンタクトを装着すれば生活に支障はありません。これからも、この0.01の両目と適切に付き合っていきたいと思います。みなさんもどうかご自愛ください。そして詐欺には気を付けてください。

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