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僕は財布を3回なくしたことがあり、神はいない

 恥ずかしながら、僕は財布をなくしたことが3回あります。3回とも、酒を飲んで酔っ払っているときになくしました。だからみなさん、酒を飲んだときはくれぐれも財布をなくさないように気を付けてください。逆に、素面しらふでいるときになくしたことは43年近く生きてきて一度もありません。財布をなくさないためには、つねに素面でい続けることが大事なのかもしれませんね。僕は現在、高血圧と不整脈により禁酒中であるため、財布をなくす確率は極めて低いです。この調子で禁酒をつづけ、財布をなくさない穏やかな人生を送りたいものです。

 最初に財布をなくしたのは、池袋の居酒屋においてです。当時僕は、池袋のメイドカフェのメイドさんに恋をして、足しげく店に通っていました。ある日、その帰りに友人のご主人様たちと一緒に居酒屋(坐和民)に行きました。そこで数時間飲んでベロンベロンに酔っ払った僕は、おそらく財布を座席に置き忘れたまま店を出ました。坐和民を出たあとに、財布がないことに気が付きました。すぐにお店に電話して財布があるかどうか確認したけれど、どうやら財布はありませんでした。他の客が盗んだのかもしれないし、もしかしたら店員がパクったのかもしれません。店を出て歩いているときに落とした可能性もあったけれど、いちばんあり得そうなのは座席への置き忘れでした。

 僕はお金とともに、いろいろな大切なカードをなくしました。身分証明書とかもなくしたけれど、いちばん悲しかったのは、行きつけのメイドカフェのポイントカードを数枚なくしたことでした。そのカードには、当時大好きだったメイドさんの手書きメッセージがたくさん書かれていたからです。僕は友人たちに慰められながらヤケ酒を飲みました。そして夜明けごろ、友人たちとともに千鳥足で池袋東口の交番に行きました。警察官の目の前のパイプ椅子に座った僕は、財布をなくし、そこにはメイドカフェのポイントカードが入っていたことを申告しました。しかしながら、財布が戻ってくることはありませんでした。

 2回目に財布をなくしたのは、電車のなかにおいてです。そのとき僕はやはり酔っ払っていました。ジーパンの尻ポケットに二つ折りの財布を入れた状態で、友人と並んで長いシートに座っていました。目的の駅について電車を降りたあと、尻ポケットから財布がなくなっていることに気付きました。どう考えても、座っているときに尻ポケットから落ちたに違いありません。ただちに、財布をなくした旨を駅員さんに報告したけれど、財布は発見されませんでした。電車のシートに財布が転がっているのを見た何者かが、「財布だラッキー!」とでも思って懐に入れたのでしょう。

 僕はとりあえず、一緒にいた友人にお金を借りて、友人の家まで行って泊めてもらいました。友人のS君、その節はありがとうございました。そして警察に届出をしたけれど、なくした財布が戻ってくることはありませんでした。そのあと僕は、財布を尻ポケットに入れるのをやめました。必ずトートバッグの中に入れるようにしました。しかしながら今度は、そのトートバッグごと何者かによって盗まれてしまいました。

 3回目に財布をなくしたのは、夜の小さな公園においてです。そのとき僕は、またぞろ酔っ払っていました。池袋の行きつけのメイドカフェの前に、こぢんまりとした居心地のいい公園があり、そこで友人と酒を飲んでいました。500mlの氷結レモンを飲み終わった僕は、近くのファミリーマートに行って酒を買い足そうと、立ち上がって歩き出します。そしてファミマの店内に入って酒を買おうとしたところ、トートバッグを持っていないことに気付きました。僕は「しまった! 公園に置いてきた!」と思ってすぐにファミマを出て、さっきまで座っていた場所に小走りで戻ります。

 そしてその場所に、僕の黒いトートバッグは見当たりませんでした。周辺を探してみるも、やはりありません。僕は夜の公園で、力ない街灯の光に照らされながら、呆然と立ち尽くしました。僕がトートバッグを公園に放置していた時間は3分くらいのものです。それなのに、そのたった約3分間に何者かによって持ち去られてしまいました。もしかしたら、僕は狙われていたのかもしれません。我々の近くにいた何者かが、「あいつは酒を飲んでいるから、トートバッグを置き忘れたりしそうだぞ。そうしたら盗んでやるぞ」と考えて見つめていたのかもしれません。僕は夜の公園で肩を落としながら、「さすが池袋だなあ、治安が悪いなあ…!」と呟きました。とぼとぼと交番に行って警察官に報告をしたけれど、やはりトートバックも財布も戻ってくることはありませんでした。

 僕は逆に、財布を拾ったことが何回かあります。そしてそのたびに、必ず交番に届けています。お金を抜き取ることも決してしません。それなのにどうして、僕が財布をなくすと決して戻ってこないのでしょうか。神はいないのでしょうか。神はいるけど、僕のことはたまたま見てなかったのでしょうか。全知全能の神がそんなうっかりさんなことってあります? これからも僕は財布を拾っては届け続けるので、次からはちゃんと見ていてほしいです。

 3つ目の財布をなくした僕は、その後しばらくは財布を持ちませんでした。細長い茶封筒を、財布がわりとして使用していました。池袋の行きつけのメイドカフェで支払いをするとき、茶封筒からお金を取り出したら、メイドさんに「ふちりん! 生々しいんですけど!」と言われました。

 夜の公園で3つ目の財布をなくしてから数か月経って、僕はやっと新しい財布を購入しました。僕は財布を尻ポケットには入れないし、トートバッグの中に入れることもやめました。友人にアドバイスされて、ジーパンの右前ポケットに入れるようになりました。それならば、座っているときにポケットからぽろっと落ちることはないし、公園に置き忘れることもありません。ジーパンの右前部分が膨らんでしまい、いささか不格好ではあるけれど、なくさないためには仕方ありません。そして僕は3回目に財布をなくしてから10年以上、一度も財布をなくしておりません。

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