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ふへん庵当日記~雲の彼方に~(R5 2次試験当日ドキュメント


~出陣~


10月29日朝。4時頃目が覚める。直前一か月はほぼこのルーティンだった。いつも通りの朝だ。
身体が硬直している。手も足も、すこしぎこちない。昨日もそうだった。今年は、緊張感がつよいな。
昨日は、朝会メンバー向けの血判状を書いているうちに、気持ちが楽になった。気晴らしを考えたけど、それも思いつかない。部屋を歩き回ってみたが、落ち着かない。
かといって、親友の事例ⅣR1をがっつりやる気も起きない。経営分析だけでもやるか。

たった10分だったけど、いつも通りにやれることを確認出来て、スッと気持ちが落ち着いた。昨日作ったファイナルペーパー、今年はただ手書きでザっと、全体のイメージを描いて、少し補足をいれた簡易なもの。それに目を通し、いくつか注釈をいれながら、確認をする。特に事例Ⅳは、前日にやったR1。経営分析の見直しのしかた、設問完了時にしっかりと見直しをする手順、各問題の解答桁数、単位のチェック、終了5分前の合図で切り上げて、見直しをする練習。幾度も幾度もやって、昨日ようやく完璧にやれた過去問を、なんども見返した。今年は絶対に、経営分析でミスはできない。2度も涙をのんだ。それだけは守る。

例年、前日にTwitter断ちをして、ひとりで過ごしていた。今年も、前日にそれっぽいポストをしておいたけど、普通にX廃として過ごすことにした。適当なポストをしていると、気持ちもほぐれたし、いつも通りの朝に、リラックスもできた。

嫁ちゃんが合格弁当を作っている。前回までは、弁当箱をあけると、合格旗が立っていたり、ミスしない!などの付箋が入っていて感動したものだが、今年はもうそういうのないよ、めんどくさいから、と1次試験のときに宣言されていた。まぁそうだな。2020年から数えて1次2次あわせて6回目だ。サプライズも何もなくなっているのも、俺のせい。
でも嫁ちゃんのサンドウィッチじゃなきゃ、俺の腹は満たされない。合格できない。そんなことを思って、隣の換気扇の下でタバコをふかしていた。

最後の準備に入る。wakaの特ち物チェックリストで確認する。トクチモノ。あいつ、これで笑わせてリラックスさせるつもりなのか。どこまで仕掛けてあるんだ。すげーよwaka。youtubeデビュー、待ってるよ。youtubeといえば診断士ラボだが、いや、ドキュメントに戻ろう。

出発の時間だ、ポン次郎がやたらと吠えている。てめぇミスしてくんじゃねーぞ、そう言っているようだった。嫁ちゃんとお出掛けのチス。
完璧な出立だった。

~道中~


トップガンのオープニングをヘビロテしながら駅へ向かった。トップガンアンセムからのDangerZone。甲板クルーを受験支援者に、カタパルトから発進するF14トムキャットを受験生に見立てる。これほど試験当日の気持ちを高揚させるシーンはない。昔からそうだった。なんどかそういうTweetをしたことがあるが、反応はなかった。説明が足りないのかなと思い、今年はわざわざ課金して、あまり好きではない長文で丁寧にシチュエーションを解説して、動画をはりつけた。反応はあまりなかった。悔しくて、普通のポストで何度も擦った。いや、そんなことはどうでもいい。電車に乗らねば。

江古田駅に近づくと、ほらっち先生と江口先生が武蔵大学に応援にきているという。エミリーも武蔵にくるらしい。恩師たちが勢ぞろいか。今年はめずらしいな。例年、誰も応援の来ない某多摩キャンパスとか、調布の奥地だったからな。エミリーは9:00に武蔵につくという。いや、遅いだろ、エミッターマイヤー。間に合わないじゃないか。というレスを思いついて、むしろもっと早く入場することに決めた。小腹がすいていたので、コンビニでおむすびでも買おうと思っていたけど、急ぐあまり、すっかり忘れてしまった。

武蔵大学につくと、江口先生とほらっち先生がいた。約束にはまだはやいが、ひとまず江口先生の腹にワンパン入れさせてもらうことにした。ほらっち先生とも固い握手を交わす。I先生とも握手し、なんかもうひとりいたので、誰かはしらないが、とりあえず握手した。

俺は、会場に到着した。

~開始直前~


武蔵の会場は、いわゆる大教室だった。机の縦幅は34cmだった。測ったつもりだったが、いま定規をあててみると、こんなに狭かったかな。曖昧だ。なんの役にも立たない情報だが、縦はちょっと狭めで、横は無限に広かった。

緊張は、まぁしている。さて、どうしようかな。小腹が減っていることを思い出し、おもむろに早弁をはじめた。お弁当は、こだわりのパッケージに入った作り手が見える、食べやすいロールパンタイプのサンドウィッチ。モリモリと食べた。いきなり弁当を食べ始める巨漢に、会場の誰もが度肝を抜かれたに違いない。腹は満たされた。
お昼は残りの二つで足りるのか、心配になった。

お弁当のあと、おやつのチョコ、ラムネをガバガバと口にいれ、俺の周りは、試験直前とは思えないランチタイムのようなムードに包まれた。異様なムーブを繰り返しておきながら、会場の雰囲気に息が詰まり、一度教室を出た。身体がガチガチだ。力強いポーズをとりながら、謎のストレッチをはじめた。普段から運動しないからストレッチのやり方もよくわからない。不可思議な体操をしながら、とにかく身も心もリラックスすることを心掛けた。

指がうまく動かない感じがしたので、ファイナルペーパーに書き込みながら、字を書く練習をした。金沢のほうに生息してる死刑囚が、開始10分手が震えて字が書けなかったと言っていたのが、少しわかる気がする。手が馴染むまで、練習をした。

さて、本題に入ろう

~事例Ⅰ~


事前体操は、結局いつも通りだ。社長の思いを共有して、その思いを達成する組織を作る。それだけを頭の中で繰り返した。
できるだけ頭をぼやっとさせて、余計なことを考えないようにした。経営資源の集中、分散、リスク分散、シナジー、まなびノートから拾っておいた、いつもでてこない言葉を繰り返す。指、肩、首周りをリラックスするいつものルーティンをこなし、開始時間をまった。緊張は、それほど感じなかった。やはり与件が楽しみだ。

(試験を開始してください)
メモ用紙を作りにかかる。さらりと冊子をめくると、お経のような与件文が目に入る。緊張が走る。なっが。
ま、まぁとにかくメモを作ろう。ゲぇ、4Pまで与件文が食い込んでる。これじゃぁ・・・、王蟲にドームが食い破られたペジテ市よ。ワロえるわ。
設問は、まぁ普通っぽい。

与件文を読む。蕎麦屋。また飲食かよ。苦手なんだよね。肥満だけど、食はプリングルス中心だから。P2まで読み進めると、天啓走る。
自主性キター!。前日にsususu事例集で読んでメモったやつだ。眼球に血流が集まる。あきらかに興奮した。まずい。自主性という言葉を導ければと思ったが、それは与件に書いてある。強みには使えるけど、どうか。あまりここに入れ込むのは危険だと思った。いつも通りのあたりまえ体操をしなくっちゃ。意識はするが、脳みそはもう、かなり引っ張られている。それは自覚できた。

それとX社との統合か、PMI。これも前日の夜会でテーマになったやつだ。いけるか?いや、設問を読むと、俺が付け焼刃で活かせそうなところがなさそうだ。あわてるな。うわつくな。いつも通りの解答の筋があるはずだ。冷静にいこう、それを心掛けた。与件を読み終わり、塗り絵も終わると、与件が長いわりに、引用すべき個所はいつも通りかなと思った。

第1問

猛烈なチャンス感を抑え込み、「自主性のある風土」だけをを強みに置いた。あとは再現答案にある通り。それほど特別なことはない問題だったと思う。

第2問


これも難しいとは思わなかった。ここで前日の与件、それといつも心に共有を、の精神とのシナジーを発揮し、社長の思いを共有することで、社員の自主性が醸成され、結果、サービス向上に結び付いた、というsususu白書の事例のストーリーを中心にすえ、経営資源の集中、もしっかり入れて答案をつくった。満点だと思った。
「蕎」は、こぶし大くらいに一回拡大して書いてから、解答用紙に書き込んだことは、言うまでもない。

第3問


いいね、これもX社に「自主性」がないために、仕事がつまらないルーティンになっている。ここにA社の風土を持ち込む。これが主題。あとは、ダメなところを良くしていく、という内容を書いた。満点だと思った。

第4問(1)


どのように組織の統合を進めるか、か。そろそろ社長の思いも共有し飽きて、社員もうんざりするんじゃないかと思ったが、高らかに思いを共有させた。あとは、A社の良さを生かしたX社の社風改革。そして、PMIっぽい論点というか、あたりまえ体操というか、円滑に統合を成功させる、も書いた。まぁ、8割は取れていると思った。

第4問(2)


事業展開、競争戦略、成長戦略の観点と。100字だから、競争戦略は差別化、成長戦略は、新規サービスで新規顧客を獲得、つまりいつもの観点で、いつも通りかけばいいだろうと考えた。あとは、大大問(各大問の上位、事例Ⅰの最大の制約条件である、「組織、人事を中心とした経営の戦略および管理」に関する出題)の制約を守り、仕入先との関係性強化、従業員の育成を苦し紛れに入れ込んだ。

総評:


最後で映画スピードのテーマが流れることがないよう、サクサクと割り切って70分くらいで解き終わった。解答を見直して、誤字や読めない漢字を書き直すなどして、まぁ、まぁいいだろう、という答案は書けた。タイムマネジメントはうまくいった。これはやはりとても重要だと思う。既視感のある与件テーマに興奮したが、その興奮にある程度は引っ張られながらも、自分をギリ保つことができたのは、毎日毎朝、朝会メンバーと話し合ってきた成果。大大問制約、あたりまえ体操。それが活かせたと思う。
再現答案を読み返すと(そもそもあまり正確に覚えていないが)、至らぬ点ばかりが目立つが、まぁ、まぁ、いいだろう。事例Ⅰは。
あと、sususu事例を読んだから思ったが、過去問ばっかりやってないで、直近の白書事例も研究してこいよ、というメッセージは強く感じた。

~事例Ⅱ~


事例Ⅰが終わって、かなり緊張が解けた。さっきはあまり気づかなかったが、やっぱり緊張していたんだ。教室をでて、また謎のストレッチをする。緊張がほぐれてきて、それとともに、満点かもとおもった事例Ⅰの粗がいくつも見えてきた。が、できる限り切り替えた。考えてもしょうがない。それより事例Ⅱだ。休憩時間の使い方は、ファイナルペーパーを眺めるよりも、歩いて血の巡りをよくし、リラックスすることを選んだ。

事件がおきた。

(これから問題用紙を配ります)

あれ、ボクの受験票どこ・・・
あ、ファイナルペーパーと一緒にカバンにしまったか、てへぺろ。ない。嘘だろ。
なくした?馬鹿な。教室を飛び出て(いや、モタリ、モタリ・・・と出てったと思うが俺は急いでいた)みると、ストレッチしていたところにあった。

焦った気持ちを引きずりながら、事例Ⅱがはじまった。

(試験を開始してください)
まぁ、事例Ⅱはね、だなどこ+鬼太郎に組織にのフレームで瞬殺できるようになっていたので、何の心配もしてなかった。おちついてやりゃーできる。エレベータを操作するパズーのような気持ちだった。

冊子をめくる。なぁっ・・・っふ。見慣れない感じだ。与件はまたペジテ市状態。またかよ。設問も視界に入るが、あきらかに長い。やめてクレヨン。
深いため息をついた。はぁ。めんどくさ。一旦、気持ちをオフ、オンで切り替えて設問を読んだ。

このドキュメント、どこまで書くのか不安になってきたので、設問ごと対応で抱き合わせて書くことにする。

第1問


いいね。3C は直前にしっかり対策してきた。怪しいと思ってたんだよね。顧客増減、自社強み弱み。そしてねとたすさんの、「観点から述べよ」にも注意して、最後は、「(弱み)の解決が課題」と締めくくった。完璧だと思った。あげた項目は、まぁそう外してはいないと思う。

第2問


感想戦でも一番の話題かもしれない、「新しいプライシングの流れ」。設問を読んですぐに、サブスク?とメモした。与件を読むと、買い替えの金銭負担が大きいという根拠がある。サブスクで決まりかな、と思った。けど、野球用品でサブスク、というのは違和感があった。みんな感じているだろうなと思った。それ以外だと、高付加価値系か?ダイナミックプライシングなわけないし。悩んだが、ここは設問からありありと感じる、「このプライシング、与件には書いてないからね、ちゃんと最近の流れを勉強してるかを聞いてるよ」というメッセージに素直に従うことにした。念のため、レンタルも書いた。定額制で金銭的負担を軽減し、固定客化のコンボ。どうかはわからんが、有効打になっているという手ごたえはあった。

第3問


いやー、用品店がチームメンバー獲得って・・なんの話だよ。そういうことがあるのかもしれないけどさ・・・と思いつつ、第2問でB社の弱みは補完できたが、強みを生かせていないところから、ユニフォームの試着会を考えた。イメージは、女子が制服で志望校を決めるみたいな、あの感じ。姪っ子が女子野球をやっているので、姪っ子を想像したが、ガチ野球選手なので、フェミニンなイメージはあまり思いつかなかった。やはりkawaii系だよな。かわいい、とは書く勇気がないから、SNSでオリジナルのユニフォームを発信、試着会に誘引して、ニーズ収集してオリジナルのデザイン、提案力で勝負か。あぁ、そうそうやはりそうだ。このかわいいユニフォーム着たいからこのチームはいる。あるよな。知らんけど。それでチームに加入すれば、女子チームともいい関係が生まれる。そんなところだろう。6割もらえたらいいかな…。

第4問


長期的、ときて書きやすいかなと思ったけど、ターゲット毎にわけて具体的な話を盛り込むのはきついと思った。残り20分くらいあったと思うけど、こだわると事故ると思った。ターゲットは全部かいておいて、施策は総花的に。長期的にっていうんだから、満足度からの愛顧向上、関係性強化のいつものコンボをぶちこんだ。あぁ、こりゃ、ちょっとやばいかもなぁ。と思ったが、書き直すような時間もない。施策面はもうちょっと踏み込むべきだったな、と胃がキュッとする。まぁいい。いいさ。

総評:


まぁなんか、一見遠く見える女子チームのメンバー勧誘みたいな話があったりして、おもしろい事例だったと思った。サブスクは、感想戦でやっぱりポエムだったかなと思ったけど、実際の野球用品店がサブスクしていると知って、一安心。いまどきのバット5万円もするのか。そりゃ高いよな。なんだかんだと、いつもの通りというか、事例Ⅱらしい問いと、解答になっていたんじゃないかと思う。存外、これといった感想がないかな。

~事例Ⅲ~


事例Ⅲねぇ。北村先生の動画で、だいぶ理解がすすみ、前日の晩に嫁ちゃんに講義しながら、自分なりの理解をすすめた。

◇生産計画・統制:どれだけの生産力があるかを把握し、受注量等に合わせて計画を作り、管理する営み、◇生産効率、稼働率:作業場における非効率性の改善、稼働率の向上で、現状よりも生産性をあげる営み

この整理があれば、怖いものはないと思っていた。強み弱みも、どうせいつも通りだろう。それより事例Ⅳだな。まぁ折り返しまでもうきちゃってることに若干の面白さがある。事例Ⅲの時間帯はいつもそう感じる。もう今日も終わりかけだ。

(試験を開始してください)
冊子をめくる。
もはや、与件が短く感じた。3ページか。よかった。よくない。また設問がなげーよ。ながい。先に設問解釈?んー、ざっくり論点だけ覚えて先に与件整理しよう、と決める。
これも食品か。溜息でるな。まぁ飲食は割合も多いし、問題も多いしな。一通り整理が終わるが、与件はいつも通りという感じだった。

第1問


生産面の強みってどこ?
最後に回して、残り15分というところで着手。もともと見当たらなかったので、たった40字で2つ、という制約だけど、それだけに沼ったら死ぬなと思い、与件のピンク(強みやポジティブ表現)個所を凝視して、選んだ。60分前の自分を信じるしかない。それ以外に誰を頼れというのか。人をあげた。0点の可能性あり。

第2問・第3問


切り分けなんて不要!と直前期に達観したが、さっそく切り分けに入る。第3問との関連性について一番悩んだ。が、ここは前段の◇の整理を信じて適用することにした。ここで悩みすぎて時間を使うのは避けなければいけない。ある程度ふんわり混ぜ込んで解答することにする。この2問でひととおりの改善点はあげたつもり。◇の考え方が違えは大きく失点するのかもしれない。でも今日までの自分を信じる。それをぶつけてみないことには、来年の実りもない。土壇場で何を信じるというのか。自分の努力でしか、あるまいに。自分の知識と、あたりまえ体操、そして混ぜ込みハック。いいよ、これが今は精いっぱいなんだよ、クラリス。いいだろ。

第4問


外部人材ってなんやねん、もう採用したんやろ。いつまで外部言うとんねん!という突っ込みをしつつ、いろんな人の経験をいかして企画力を強化する話を書いた。
いいだろ、今はこれが精いっぱい・・・ドキュメント書く精力もそろそろ精いっぱい

第5問


妥当性ねぇ。最近こういうのがお好みだよね。ただ、これだけの情報じゃ、goともnot goとも言えないよ。という素直な気持ちを書いた。社長がやりたいって言うんだからやればいい?それが社長に寄り添うってことなのかな。新規事業を進める、これはとめないよ。とめないどころか、それは経営者が決めること。それにはもちろん寄り添う。だけど、生産管理の強化、効率性向上で生産能力をあげるのが先決でしょう?まずはそれ。そのうえで、収益性を考慮して、それでも新規投資が必要なら、投資すべきでしょう。社長がやりたいっていってるからやる、それじゃただの太鼓持ち、イエスマンでしょう。方向性は支援する。けど、その手段や手順は助言する。それが診断士じゃないの。と思った。

(終了5分前です)

答案を見直すと、
「妥当性は慎重にとする必要がある。理由は~」と書いてあった。あれ、なにこの日本語。おかしくね。

時間は、、、あと5分か。直せるかな。「妥当性については慎重に検討すべきである。」こう書きたかったはずなんだ。
「(慎重)にとする必要がある。」1234..9文字か。「(慎重)に検討する必要がある。」1234...10文字か。入らねぇ。
てにをはの変更、省略、いずれもできない気がする…。

実はもう、該当箇所は消しゴムで消してある。だいたい、一文字くらいはいつもなんとか修正できるからだ。
うぉ、はいらねぇ・・・

やばい。やばいだろこれ。どうやって削る。俺の最高の慎重な検討答案が。
時間はあと1分少々。少々って何秒だ。正確な時間はわからない。トゥンク。

だが、修正できない。日本語も思いつかない。頭が、脳みその動きが低下していく。このまま空白になったら・・・
いやだ、まて、考えろ、なんとかしろ

手が、手がうごかねぇぇ

「妥当性は慎重なる検討が必要で、理由は~」

(試験終了です)
チーン😇
ま、まぁ、なんとか、ね。今はこれが精いっぱい。

~事例Ⅳ~

事例Ⅲの最後で死にかけたこともあり、なんかそれまでの事例の記憶がすべて飛んでいた。ある意味、良かったのかもしれない。
事例Ⅳでやることは少ない。やるべきことはミス防止のための事前準備、見直し。経営分析を解いて、記述を書いて、あとは算数問題を楽しもう。
それだけのトレーニングを積んで、成長してきた。はずかしながら、はじめて、事例Ⅳの過去問を解きまくった。人並みにできるようになった。
こんなに嬉しいことはなかった。10月のはじめに50点で喜んでいた過去問も、直前には80点でも嬉しくはなかった。でも、その過程は、いままで体験したことのない楽しさだった。頭の使い方が変わったんだ。すごい体験だった。自分の成長が嬉しくて、楽しくて。

そして、自分の限界も知った。処理速度が遅い。まだまだ転記ミスも凡ミスもする。速度をあげればあげるほど、欲をかけばかくほど、ミスは増える。
やるべきことは、ミスを限界までしないこと、そしてそれをリカバリーすること。そのプロセスの確立だった。直前は、そのプロセスを徹底的に練習して、自分に叩き込んだ。
生まれて初めて、俺は自分ができなかったことが、できるようになった。

前日のR1事例Ⅳ過去問の問題用紙と解答用紙を眺める。
これを、この通りやればいい。そうしたら、俺は・・・。俺は。

(試験をはじめてください)
冊子を広げる。なんかすごい問題量だ。でも大丈夫だ。経営分析もあるし、第4問は記述問題だ。あとはCVPとNPVか。俺は勝利を確信、いや油断はしなかった。
手順を進める。単位や四捨五入の条件を、りほエッティ方式でグリーンで塗り分けた。経営分析の条件を目を皿のようにして、一行一行を隠しながら読み取る。読み取った内容を解答用紙のチェックリストにする。準備は完了だ。もう五合目に到達できた。あとは、CVPが解けるかどうかか。いける。今の俺は解ける。大丈夫。

事例Ⅳは解いた順番でいくか。

第1問


経営分析は、数字が厄介で、単位が千円。このへんが面倒なポイントか。生産性の指定はなし、記述が悪化を一つ選び、かちょいちょい入れてくるな。慎重に条件をクリアしていく。サン式経営分析で指標計算を進めて、異変に気付く。有形固定資産が勘定科目に使われて、ないのか。まぁいい。計算をすすめた。

悪化候補は有形固定資産回転率か。与件を読むと、色々と違和感があった。OEM生産が中心、人件費を削減しない方針、与件からも、有形固定資産がポイントという気がしない。そもそも、なんで勘定科目が有形固定資産じゃないんだ?過去にも販売用不動産とかあったけど。うーん、与件を読むと、コスト増とか、仕入原価は今後の予想になってる。今期の原因じゃない。となると、販売低迷くらいしか書くことない。悪化した原因を書け?販売低迷だけで?違うな。

前期当期の比較、売上高の減少、人件費を削減しない方針。勘定科目の違和感。一人当たり売上高が浮かんだ。やはり生産性か。今年は明示はしないと。そうだな、今年も明示したら、これまでも生産性を指摘してこない受験生が、設問に明示しないかぎり、もう永遠に指摘してこなくなる。もう設問では指定できない。なるほど、それで今年は、勘定科目をあえて有形固定資産にしないことでヒントにしていたのかも。指標分析をメタるつもりはなかったが、与件と財務指標から腹に決めた労働生産性を解答に書く勇気を得るには十分だ。

[感想戦では、有形固定資産一択の雰囲気の中、ひとりで絶望していた。が、少しずつ一人当たり売上高勢が声をあげはじめているように思う。生の声をSNSで収集し、解答に反映していきたいものだ。たったいま、生の声を収集したところ、LECでは労働生産性ではないらしい。まぁね。いいよ。いいさ。ダメってことはないだろう?]

まぁともかく、経営分析はチェックリストに従って、なすべき確認はすべておこなった。電卓のスイッチの切り替えもOK。

第4問


あたりまえ体操して終わった。

第2問


CVP。うん。変動費率と固定費、BEP売上高を出せ、か。高低点法というか、連立方程式タイプか。
OK、お前が俺の今日の相手か。なんとまぁ、随分小物がでてきたな。

しかし、ということは、こいつを落としたら。ズクン

緊張が走る。いいだろう、俺の持ち時間はまだまだある。じっくり、ゆっくり相手をしてやる。
慎重に慎重を重ねて数字をメモに転記する。指差し確認、後ろから前から。よし、完璧だ。

連立方程式を作る時も気をつけろ。あわてずに、ゆっくり転記だ。慎重に。
引き算で変わる符合も、赤ペンで記入する丁寧さだ。いいぞ。

あとはこの=を押せば、検算も終了と。ズクン

異変が起きた。

検算が合わない。そんなはずはない。間違っているはずがない。
だが、間違えたのか?まだ時間は十分にある。この問題は落とせない。

仕方がない、もう一度・・・
もう一度・・・ズクン

ちくしょう。なんでだ。ズクン

しまった、もう50分過ぎてるだと。この検算と心中するのか。馬鹿な。
この程度の問題が解けないはずがない、計算間違いだと。してない。してるのか?どこで?

どうする。時間が、時間がない。まだ第2問の(1)じゃないか。それも例年の算数問題じゃない。誰でも解いてくる問題じゃないか。
あとあと1問は取らなきゃいけないはずだ。くそ。

60分までだ、60分まではこいつをやろう。事例Ⅳで良い感じの点数、このR5の問題なら解けると感じた。けど諦めよう。ここは、こいつを取らなきゃ話にならない。計算過程も書けるわけじゃない。正答しなきゃいけないんだ。というか、できる問題のはずだ。

こいつを落としたら、経営分析と記述だけになっちまう。これまでと何も変わらないじゃないか。そんなわけは、ないんだ。
「事例Ⅳだよ、事例Ⅳ」
入場口でワンパンいれた江口先生の言葉があたまを過る。あれから変わらないだと。そんなはずはないんだ。俺は。俺は成長したんだ。

事例Ⅳの過去問を見るだけで脂汗をかいて、問題を開くだけでも何時間もかかった、その俺じゃないんだ。
俺はふへんものタイプ5。タイプ2とタイプ3は、もう俺の中に吸収し、消化されてるんだ。
あの涙を、嗚咽を、忘れたのか?あいつらはもういないんだ。

しっかりしろ、もう一度、もう一度やってみるんだ。

検算は合わなかった。

現実を受け入れることができなかった。時間は60分を経過した。
真っ白な解答欄を見つめて、しばし呆然とした。
何が、何がいけなかったというんだ。

気持ちを取り戻せ、こうなったら、書けるところに解答を書くしかない。

第2問(3)


この記述で得点しないと。振り絞った。ややもすると呆然とする自分を振るい立たせた。書こう。書くんだ。俺よ。朝会有志の会を毎日欠かさず開催してくれていた土建屋コウちゃんの言葉が聞こえた。「自分なら、書ける記述は書きますねぇ、うん。」あぁ、そうだ。俺たちは、書くんだ。

第3問


ここで1問、ひょっとしたら1問取れるかもしれない。

だめだ、だめだ。もう頭に入ってこない。絶対的な手順として決めてきた残り5分の使い方。そのルールは、破れない。
だからあと10分もない。こんな状態で、まともな解答を書き込めていない中で、できるかどうかの見通しも立たない第3問が、頭に入ってこない。
本当にダメなのか?

どうやら、ダメだ。この緊迫した状態でNPVを冷静に解けるほどの訓練は、してきてない。トレーニング不足か?
そうかもしれない。でも、持てる時間は精いっぱいやってきた。だから、これは今の限界だ。

第3問を解くのは諦めよう。

となれば、あとは、第2問を解くしかない。可能性があるのは、あれしかない。

この時点で、相当の精神力を消耗していた。一度、落ち着こう。これ以上慌てても何も良いことがない。
いつものコーヒーを口にする。

さぁ、もう一度、設問からしっかり読み直そう。なにかヒントがあるかもしれない。

「固定費及び~は、小数点第2位まで表示した変動費で計算し~」

ズクン

あっ

え・・・

ズクン

そんな・・・。これなのか。

ズクン

これを、見落としてた?のか?

ズクン

だめだ!だめだだめだ!切り替えろ!あきらめるな。それが分かったのなら、計算できる。解ける。
心を閉じるな、タイプ5よ。

海より深い絶望と悔しさがこみ上げる中、もう一度冷静に制約条件と残り時間を確認する。
変動費率を計算し直す時間はない。これは合っているものとして、残り時間で固定費だけはたどり着こうと決めた。
焦るな。時間はある。3分あれば辿り着ける。自分に言い聞かせる。飛躍なき、丁寧な計算メモ。大丈夫だ、間に合う。

計算式を書き、電卓を叩く。あとはそれだけだ…せめて一矢報いたい
手が、指が…動かない…くそぅ

テンキーと俺の指が反発しているようだ。キーが押せない…
落ち着け…押せ、テンキーを押せ

ちきしょう。エミリー。エミリーよ。
貴様、東大卒なら超能力くらい使えるんだろう。手を貸してくれ。
やはり朝、エミリーと会って力を分けてもらうべきだったというのか。

違う。俺はフヘンタールとして完璧なレスをエミッターマイヤーにしたはずだ。
奴は俺の二番弟子。俺は弟子に勝利した。レスのセンスで。

気づくと、ふへんものタイプ5が絶望の淵で倒れ、泣いていた。
まてよタイプ5。泣くのはまだはやい。気持ちはわかるが、たったあと10分なんだ。

まぁ、寝ていろ、そこで、泣いていろ。泣いてもいい。気持ちはわかる。
だが、俺は行かせてもらう。俺は3分前までのタイプ5じゃない。ふへんものタイプ5改。さっき誕生した。
受験生はいつだって成長する。試験終了まで、成長するんだ。そこでやすんでいろ、タイプ5。

手が、動いた。

計算結果をメモして、冷静に四捨五入しろ、単位に、単位に気をつけろ…
もう合っているのか検算する時間はない

(終了5分前です)

なんだと…経営分析の見直し時間か…
くぅ…どうする…見直しはせず今年も経営分析を落としたら…

いや違う、期待値だ。手順が大事なんじゃない。このあと5分で得点を一番伸ばす行動はなんだ…
経営分析は散々見直してある。後悔のないレベルで見直した。ここでダメ押しの見直しに向かうより、損益分岐点売上高を出そう

後悔しないか?本当に?焦ってるだけじゃないのか?

いや

いや、正しい。

経営分析のダメ押しで得点が伸びる可能性のほうが今は小さい…

俺は、経営分析の見直しをしに来たんじゃない。そんなことは、昨日の練習で克服済みなんだ。俺は合格をムンズと掴みに来たんだ。練習の成果を出しに来たんじゃない。

俺はそれを選んだ。後悔はない。焦っていない。冷静だ。
俺は損益分岐点売上高の計算に入った。

冷静に、丁寧にメモと計算を重ねた。そして、丁寧に解答欄に転記し、前から後ろからのチェックも忘れなかった。

残り時間は?

あと1分あるかどうか。何ができる?俺に。

捨てガマリだ。朝会メンバーよ、ありがとう。事例Ⅳ四天王のひとりを、俺は討ち取って見せる。
届かなくとも、俺はあきらめない。

第3問設問(2)(1)


「設備投資に関するデータ」

いた、こいつだ。おっと、10%?あぶない、残存価額ありか?あぶない。

ん?ちがう。こいつは臭えぇ、ゲロ以下の臭いがプンプンするぜ
残存価額はゼロ。

解答を修正する。ミスは起きる。修正する。
俺はベスト・キッド、いや、RXふへんものタイプ5改

第3問設問(2)(2)


残り時間はもう10秒もないかもしれない。
初年度、2年度期首、どっちだ、ゴッド姐さんなら2期首だ。
「2年度期首に、」

(試験を終了して下さい)
カッ・・・
投資するまで書かせてくれ、せめて

(筆記用具を置いてください!!)
この瞬間、俺のR5二次試験は終了した。

この日、宇宙世紀2023/10/29
この戦いのあと、ふへんもの星人と診断協会との間に、終戦協定が結ばれた。

さようなら、すべてのふへんゲリオン、ありがとう、全てのふへんゲリオン。

(完)

再現答案


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