人間としての形を保てなくて、横断歩道を無理矢理渡りながら、信号無視と速度超過の車両が僕を轢いてくれたらと思う。夕飯の鶏肉とセロリを買いにスーパーへ出かけたのに、二段飛ばしの春の暖かさが色んなものをぐちゃぐちゃにして、冬の間に僕が冷やし固めて来た自信も何も無くなって、死にたいなと思う。頭の中に道を作るために音量を最大まで上げたイヤホンが本当にうるさくて、顔は上げられなくて、溶けたクッキーアイスみたいな色の店内の床に視線を走らせながら、早歩きよりも早く歩いた。買い物かごは手に取ったけれど、怖くて、歩いてそのまま次のかご置き場に放り込んで逃げるようにスーパーを出た。道路を何度も渡り、轢いて、と思う。最後に美容院に行ってから二週間しか経っていないのに、窓ガラスに映って見える自分の頭は馬鹿みたいに最低で、歩きながらろくに前も見ずに、スマホを開いて散髪の予約を今晩に入れた。そのまま川沿いを早く歩いて、すれ違う人の誰にも会いたく無かったなと思う。アパートに帰って、コートを床に脱ぎ捨てて、そのままベランダに出て煙草を吸った。ベランダの隅で体育座りをして、なるべく小さく体を縮めて。

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