見出し画像

ブランコ

公園のブランコ
小さな女の子

ふと通りかがった公園で
ブランコが揺れていた
揺れるプランコに
誘われるように 乗ってみた

キーキー ブランコの音
懐かしい 

ふと気がつくと 
白いシャツを着た 小さな女の子が 
隣でブランコを漕いでいるのが
うっすらと見えた

紺の吊りスカートを履いている
赤い長靴
おかっぱ頭 
顔はなくのっぺら

いつからブランコを漕いでいるのだろう
のっぺらぼうになるなんて

さみしくないの?
声にならずに問いかけた


ううん!全然!お母さんを待っているの!

女の子ははっきりと答えた

お名前は?

忘れちゃった

キーキーキー ブランコの音

女の子のスカートは揺れる
キーキーキー

赤い長靴は 行ったり来だり

いつしか私も白いシャツに半ズボン
紺色の長靴

そうか 私は 父を待っていたんだ

キーキーキー
揺れるブランコ

キーキーキー
紺色の長靴は 行ったり来たり


私は誰だったのだろう
私も顔をなくし
のっぺらぼうになったみたいだ

いつ何処でなくしたのだろう
さて どんな顔だったのか
何をして 何を考え 
何処に行くつもりだったのか

暫くブランコを漕いでいたら
なんだかどうでもよくなって

ブランコを降りて 帰路についた


振り向くと 
公園もブランコも
女の子も消えていて
真っ白な公園に うっすらと街灯が灯っていた

深く蒼い空には
大きなお月様が 黄色く笑っていた

いつからお月様は そこに居たのか
声をかけてくれたら良かったのに

もし話しかけてくれていたら
私の手足は こんなに冷たくならなかった

黄色く光るお月様に
今朝方の太陽の 様子を教えてほしかった

お月様は ふんわりと笑うばかりで
女の子のことも 忘れてしまったみたい

私はなくした顔を拾って
前を向いて歩き始めた

おうちに帰ろう
おうちに帰ろう

お父さんが待っている
お母さんが待っている


おかえりなさい お父さん
おかえりなさい お母さん

よろしければサポートお願い致します❣とっても励みになります^^