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文明の衝突とロシア国家哲学

バーンズCIA長官からプーチン大統領を理解する

2023年7月1日 【伊藤貫の真剣な雑談】第7回[桜R4/6/25]

24:50辺りからプーチンの詳細な解説の始まり。

ウィリアム・ジョセフ・バーンズ William Joseph Burns
2021年3月23日より中央情報局(CIA)長官を務めている
バーンズはアラビア語、ロシア語、フランス語を理解し
大統領功労賞を2度受賞した
2005年から2008年まで駐ロシア大使

バーンズCIA長官の説明によると、プーチンの性格は
物凄く用心深く、理性的で決して寛恕的になる人物ではない。

物凄く辛抱強く、努力家。両親は貧しい家庭であった。
父は中卒で、母は小学校の学歴しかなかった。
プーチンは、地元の公立高校をトップで卒業し、
競争率40倍のレニングラード大学に入学し、柔道部に入部。
大学生活は柔道以外は、勉強ばかりしていた。
非常に静かで、優秀な学生であった。
(レニングラード大学はロシアで2番に難しい大学。
一番難しいのはモスクワ大学。)
KGBにリクルートされて、ドイツに派遣され情報分析官をしていた、
1989年にベルリンの壁崩壊して、東西冷戦が終了した。
プーチンは、レニングラード大学に戻り、法学部の教授になろうとした。
レニングラード大学もそれを受け入れ、
博士論文を書き終わったら教授にするつもりであった。
プーチンは、学者タイプである。
プーチンが論文を書いている時にレニングラード大学の
サブチェクという有名な法学部教授が
ペテルブルグの市長選に出たら当選してしまった。
政治に素人であったので信頼出来る部下が欲しいということで
プーチンに眼を付けて、ペテルブルグの副市長にした。
そこで、プーチンは自分には非常に行政手腕があることに気が付いた。
事務処理能力が凄かったらしい。
「ペテルブルグにブーチンあり」というほどまでになった。

プーチンのまわりで働いている人に言わせると、
朝早くから事務所に来て、お昼ご飯も食べずに、
黙々と仕事をこなしていた。
争いがあっても、決して大きな声を出したことがない
非常に冷静で落ち着いた声で議論をして、
絶対に感情を外には出さない人間であった。

3年ぐらい経って、人材不足のエリツィン政権からモスクワに呼ばれ
1-2年後にKGB→FSB長官に任命され、翌年に大統領代行になる。
そして、半年後にロシア大統領になってしまった。

物を考えるには、3つのレベルで考える力が必要。
価値観、世界観のフィロソフィカルのレベル、パラダイムのレベル、
ポリシーレベル。この3つの段階を分けて考える能力が必要。
プーチンは、この3つのレベルで物を考える能力の持ち主である。
プーチンは、行政法、政治思想、憲法哲学、国際法の知識があり、
それをマスターした人間である。

「アメリカが一方的に押してけてくる外交政策、経済政策、歴史認識に対してどう反論したらいいか」に対して、
きちんと物を考える力がないと反論できない。

日本の政治家には、3つのレベルで物を考えることはとうてい無理である。
プーチンは、それをやっている。

プーチンは、ロシアを3つのレベルで立て直す必要があると考えた。
価値判断は哲学からくる。どういう生き方が望ましいか。
正義とは何か。国家の任務とか何か。文明の違いとは何か。

2001年以降、プーチンは、独裁的権力を持ち出したのは間違いないが、
単なる独裁者ではない。

プーチンは、自分だけの欲望、経済適な欲望、
それ以外の欲望を満たすためにだけに
人間は存在しているという考え方に反対の人間である。
不思議なことに、プーチンは、義務感の強い人間であった。

プーチンが何をやったかというと、
ロシアの国会議員と州知事にナショナルテイーチング:
ロシア人はどういう文明、政治思想、哲学の流れの基盤・見解・視点を
目指すべきか、糞真面目に言い出した。

ウラジミールソロビエフ(1853-1900 プラトン・カントの考え方とキリスト教道徳をミックスした考え方)
、ニコライ・ベルジエフ(1974-ヨーロッパの哲学とロシア正教の神学をミックスした議論を唱えた)、
イバン・イリン(ヘーゲル哲学の専門家、政治保守主義とロシアナショナリズムをミックスした政治思想)(ソリジェニツインがプーチンにイバンを推薦した)、この3人の共通はアメリカ文明に批判的で、ヨーロッパ文明の盲目的な取入れにも批判的で且つスラブ文明至上主義に反対である。

この3人の著作をロシアの国会議員と州知事に読むように命令した。

プーチンの尊敬する政治家はドゴールである。
(日本にも1955-56年に活躍した重光葵副総裁兼外務大臣、
石橋湛山の学者タイプの政治家の2人がいる。)
プーチンはロシア保守派の中でもかなりの穏健派である。

常にリスクを十分に考えて動く人物である。
今回のロシアウクライナ紛争をやらざるを得ないと決断した。
なぜ、プーチンはそこまで追い込まれたのか。

西側の世界では、全く、理解できない。
ロシア国民の80%以上が今回の戦争に賛成している。

アメリカは、2014年にウクライナのクーデターで政権転覆させ、
ウクライナをアメリカの属国にし、ウクライナ軍と右翼組織を
アメリカに所属する戦闘部隊に変えていった。
このままいけば、ロシアはウクライナの軍隊に致命的なダメージを
受けることになると判断した。


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