見出し画像

マイケル・ハドソンへのインタビュー

投稿日時: 2022年4月6日
マイケル・ハドソンへのインタビュー
by Andrei Raevsky

https://thesaker.is (March 25 2022)

プーチンがロシアのガスを敵対国にだけルーブルで販売すると発表したことを受けて、私はマイケル・ハドソンに(私の初歩的なレベルで)質問をすることにした。以下は、そのメールのやりとりの全文である。

アンドレイ:ロシアは、「敵対国」にのみガスをルーブルで売ると宣言した。つまり、敵対していない国にはドルやユーロで売り続けるということである。敵対する国々は第三国を経由してロシアからガスを購入することができるのでしょうか?

マイケル:敵対する国がロシアのガスを購入する方法は2つあるようだ。一つはSWIFTで禁止されていないロシアの銀行を利用することらしい。もう一つは公式または非公式な第三国の銀行や取引所として発展しそうなものを経由する方法であるように思われる。インドと中国がこの役割に最も適しているようだ。米国の外交官はインドに独自のロシア制裁を課すよう圧力をかけるだろうし、インドには強い親米派が存在する。しかしモディでさえも、ロシアと中国の「一帯一路構想」によるインドの地政学的地位から利益を得ることが、米国がするであろう何かよりも明らかに優れていると考えている。
1960年代、西側諸国はソ連とバーター取引をしていた。このバーターを手配することは銀行にとって大きなビジネスになった。バーターは信用経済の劣化の典型的な「最終段階」であり、それが貨幣経済となって崩壊する。
中期的には、多極化する世界においてドル建てのIMFに代わる新たな国際金融機関の創設が必要である。

アンドレイ:ロシアと敵対する国々はそのサービスに対して追加料金を支払うことになるが、ルーブルを手に入れる必要はない。そんなことが可能なのでしょうか?

マイケル:おそらくロシアは、米国の制裁を回避するために追加された銀行のコストを吸収することはないだろう。できれば攻撃後に下落したレートではなく、元々の「旧」ルーブル/ユーロ、ルーブル/ドルの為替レートで最終的に希望する価格を設定したあと、コストを上乗せするだろう。

アンドレイ: EUはルーブルを支払うことに同意すると思うか、それとも40%のエネルギーを完全に失うのでしょうか?

マイケル:彼らは支払うだろう。さもなければ選挙で落選する。もしロシアからのエネルギー輸入を削減することになればガスの価格が高騰し、大幅な供給不足に陥り、経済が混乱するだろう。エネルギーとは、生産性でありGDPだ。もちろんロシアにとってこれは後回しにせず、今すぐ断ち切るチャンスであり、供給停止の責任をNATOに押し付けておくこともできる。だから、もし私がロシアなら、対外支払問題の解決を急ぐことはないだろう。ネオン、パラジウム、チタン、ニッケル、アルミなど、石油以外の原材料も同様だ。

アンドレイ:今のところ、天然ガスにしか適用されていません。ロシアはこれを石油、小麦、肥料にも拡大すると思いますか?もしそうなら、世界経済にどのような影響を与えるのでしょうか

マイケル:ロシアの輸出品はすべてこの通貨統制の影響を受けている。なぜならすべての銀行送金が前述のような方法で制裁されているからだ。ロシアはドルやユーロを使うことができ ない。なぜならそれらはとられてしまう可能性があるからだ。これまでの国際法や金融政策の常識が通用しなくなった今、どのような通貨資産であっても完全にコントロールする必要がある。

アンドレイ:ロシアには多くの天然資源とたくさんの技術・商品があります。もしロシアがルーブル払いになることに成功したら、ルーブルは資源や商品に裏打ちされた通貨となり、主要な「逃避」通貨になる可能性があるのでしょうか?

マイケル:「逃避」通貨が何なのかよくわからないが、ルーブルは自立した通貨になるだろう。もし貿易収支が改善されれば、ルーブルの上昇を抑えることが問題になってくるかもしれない。そうなった場合、ルーブルの上昇によってロシアの輸出品の買い手が、自国通貨でより多く支払うことを義務付けられるかどうかが問題になる。我々がこの議論をしている間に、新しい多国間金融システムが構築されつつある。投機はおこるのだろうか?為替予約は?空売りやソロスのような強奪は?誰が参加し、どのようなルールの下に行われるのだろうか…?

アンドレイ:このロシアの決断は、ドルに対してどの程度打撃を与える可能性がありますか?また、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーンは中国と人民元での石油販売について交渉しているそうです。中国とロシアがペトロダラーを崩壊させ、ドルに代わって商品価値のあるルーブルと商品価値のある人民元を我々は目にすることになると思いますか?

マイケル:ペトロダラーは米国とその同盟国の間に残るだろう。しかしそれと並行して、サウジ・元やインド・元の取り決めも石油、鉱物、工業製品の貿易、そしておそらく国際的な投資のためにできるだろう。これらの製品の取引は多くの通貨で、おそらく多くの取引所で行われるようになるだろう。これらの分野の間で公式または非公式な裁定取引が行われる可能性があるかどうかは明らかではない。それはこれから策定されていくものの一部である。結果として生じる金融と貿易の取り決めを監督し規制するために、国際通貨基金(IMF)に代わるものが必要だ。米国は拒否権のない組織には参加しないだろう。そのため、世界は異なる貿易・通貨圏に分割されることになる。 その結果、対決というよりは、米国以外の世界は金融化された新自由主義に代わるものを開発するため、全く異なる2つの運営哲学が出来ることになる。

アンドレイ:米国は基本的にロシアの金と外貨を盗んでいます。ロシア側は、米国は墓穴を堀ったと主張しており、これはドルの評判を落とすことになるでしょうが、あなたはそれに同意しますか?

マイケル:もちろん。国王が倒された後のイラン、今年初めのアフガニスタンの外貨準備高、イングランド銀行に保管されていたベネズエラの金、そして今回のロシア。臆病なドイツでさえ、ニューヨーク連邦準備銀行に預けている金をドイツに戻すために飛行機を飛ばすように要求しています。

アンドレイ:ロシアが米国/イギリス/EUに報復し、ロシア国内、あるいはロシアやチヌアに友好的な国の資産を国有化したり、差し押さえたりすると思いますか?

マイケル:ロシアはすべて国際法に従って行うよう、非常に注意を払っています。もちろん様々な判例や言い訳がありますが、その裁判所は国連に沿った「法の支配」ではなく、「今日のルールベースの秩序」であると発表しているものであれば、何が合法であるかを米国版で支持する米国の裁判官によって支配されている傾向があります。NATOの投資家がロシアでの資産を放棄すれば、事業を維持することを約束する買い手におそらく値引きして売却されるかもしれません。ロシアは地主が建物を放棄して地元が清掃費用を負担するような場合は放棄に対して厳しい罰金を科すかもしれません。放置は「世間の迷惑」になる原因なので。
これは、現在の税金、家賃の支払い、給与の支払い、または現在の供給品(電気、燃料を含む)の支払いが行われていない場合、直ちに没収される原因となる。ガス代が払えず、配管が凍結して物件が水浸しになったらどうなるか考えてみるといい。適応できる罰則はいくらでもある。
国際法では、不当に没収された資産はある程度取り戻せることになっている。米国が没収した、ロシアが所有する埋蔵金や個人資産はそれにあたると思われる。この時点でロシアは失うものは本当に何もない。ロシアと欧州の相互投資もしばらくはなさそうである。ロシアは1991年以降抱いていた「西側に転じる」という希望をついにあきらめた。夢は悪夢に変わり、プーチン大統領やラブロフ氏は、欧州があまりに非文明的な行動をとることに嫌悪感を示している。つまり、ロシアにとって、そしてますます他の国々にとってもNATOヨーロッパと北米は、新たな門前の野蛮人なのである。ロシアは方向転換をしている。
もちろんそれこそが米国の政策の狙いです。ヨーロッパを自ら ドル化した新自由主義秩序に閉じ込め、ロシアやその背後にある中国との貿易や投資によって達成される相互繁栄を阻止すること。今おこなわれている制裁は今後数年間は続きそうです。だからもちろんロシアは旧NATOの所有する企業を稼働させ続ける必要がある。NATOの投資家には米国がつかみ取ったものから補償金を回収させる。(ヒント:米国はロシアで損失を出したNATOの投資家に支払うために、中国や中南米や近東の埋蔵金を奪い始めるかもしれない。アフガニスタンのお金を使って20年前にサウジアラビアの9.11テロの犠牲者に支払ったのがその見本である)。

アンドレイ:最後に、私が聞き忘れた質問があれば、それに対する返答をお願いします。

マイケル:あなたの質問は、具体的な問題点とその解決策についてです。しかし全体的な解決はパッチワークではなく、システム全体のものである必要があります。国際金融システム、世界貿易、世界法廷、米国の拒否権のない国連など、広範囲に及ぶ制度的再編成なしにはこれらの具体的な問題を本当に解決することはできない。そして、このような制度改革にはその基本原理を提供する経済ドクトリンが必要です。新しい国際経済秩序は、非新自由主義的な原則に基づいて構築されるでしょう。それはかつて人々が、産業資本主義の進化を期待したときに社会主義と呼ばれていたものの延長線上にあるのです。

アンドレイ:どうもありがとうございました!!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?