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オートファジー

2023年6月30日 

最後にものを食べて10時間ほどたつと、
肝臓に蓄えられた糖がなくなって脂肪が分解され、
エネルギーとして使われるようになります。

16時間たつと、今度は体の中で「オートファジー」が機能し始めるのです。

私たちの体は、約60兆もの細胞でできており、
細胞は主に、タンパク質で作られています。

日々の生活の中で、古くなったり壊れたりしたタンパク質の多くは
体外に排出されますが、排出しきれなかったものは
細胞内にたまっていき、細胞を衰えさせ、
さまざまな体の不調や病気の原因となります。

一方で、私たちはふだん、食べたものから栄養を摂取し、
必要なタンパク質を作っています。

ところが、なんらかの原因で栄養が入ってこなくなると、
体は生存するために、
なんとか「体内にあるもの」でタンパク質を作ろうとします。

そこで、古くなったり壊れたりした、細胞内のタンパク質を集め、分解し、それらをもとに、新しいタンパク質を作るのです。

なお、各細胞の中には、
「ミトコンドリア」という小器官が、
数多く(1個の細胞に数百から数千個)存在しています。

ミトコンドリアは
酸素呼吸を行っており、食べものから取り出した栄養と、
呼吸によって得た酸素を使って、
「ATP」(アデノシン三リン酸)という、
細胞の活動に必要なエネルギーを作り出します。

新しく元気なミトコンドリアが細胞内にたくさんあればあるほど、
たくさんのエネルギーを得られ、人は若々しく、健康でいられるのですが、オートファジーによって、このミトコンドリアも新たに生まれ変わります。

つまり、オートファジーとは、古くなった細胞を、
内側から新しく生まれ変わらせる仕組みであるといえます。

細胞が生まれ変われば、
体にとって不要なものや老廃物が一掃され、
細胞や組織、器官の機能が活性化し、
病気になりにくく若々しい体になるのです。

さらにオートファジーには
細胞内に侵入した病原菌を分解・浄化する機能もあり、
健康であるために欠かすことのできない仕組みなのです。

空腹が、細胞の生まれ変わりのスイッチになる

ただ、オートファジーには、ある特徴があります。
食べものによって得られた栄養が十分にある状態では、
オートファジーはあまり働かないのです。

なぜならオートファジーは、
体や細胞が強いストレスを受けた際にも生き残れるよう、
体内に組み込まれたシステムであり、
細胞が飢餓状態になったときや低酸素状態になったときにこそ、
働きが活発化するからです。

具体的には、最後にものを食べてから16時間ほど経過しなければ、
オートファジーは活発化しません。

つまり、空腹の時間を作らない限り、
オートファジーによって細胞を生まれ変わらせることはできないのです。

逆に、たとえ週に一度でも、
睡眠時間に加えて何時間か「ものを食べない時間」を作れば、

「内臓を休める」
「脂肪を減らす」
「血液の状態を改善する」

といった効果に加え、オートファジーによる
細胞の生まれ変わり効果を享受することができるのです。

大隅良典(おおすみ よしのり)/東京工業大学科学技術創成研究院栄誉教授。理学博士。
1945年福岡県生まれ。東京大学農学部農芸化学科にて博士(理学)取得。東京大学理学部講師、
同教養学部助教授を経て、1996年岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所教授、
2009年東京工業大学統合研究員特任教授。
14年同大学栄誉教授。2012年京都賞、
2015年国際生物学賞など受賞多数。
2016年ノーベル生理学・医学賞受賞(撮影:尾形文繁)

なお、2016年には、東京工業大学の大隅良典栄誉教授が、
オートファジーの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

実はこの話には続きがあり、
オートファジーが発動するときに運動を組み合わせれば
第3のメリットまで享受できるという。

最近の研究ではとある新事実が判明したのだとか。
「空腹時に運動や筋トレを取り入れることで、
動かした局所のオートファジーが
より活性化することがわかってきたんです」。

空腹の12〜16時間の間に軽い筋トレを行うと
オートファジー効果が高まるという。
「週2回程度、約20分を目安に
全身の筋肉を軽く動かす運動を行ってください。
スクワットやプッシュアップなどの自宅でできる筋トレで構いません」。

オートファジー(Autophagy)


マクロオートファジーとミクロオートファジーの模式図
オートファジーが行われる過程とその写真
オートファジーでのAtg14、Beclin-1、VPS34、VPS15の働き


マクロファージ(Macrophage, MΦ)


マウスのマクロファージ
病原体の可能性がある2つの粒子を捕食するため、細胞体を突起状に伸長させている。
マクロファージによる食作用の経過
a. 貪食された異物が食胞(ファゴソーム)に取り込まれる
b. 食胞はリソソームと融合しファゴリソソームを形成、異物は酵素により破壊される
c. 残渣は細胞外に排出される(あるいは消化される)
1. 異物(病原体)、
2. 食胞、
3. リソソーム、
4. 残渣、
5. 細胞質、
6. 細胞膜

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