読了:ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーション技法

2019年5月5日
読み終わりました。ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーション技法。
ちょうど自分が案件の実質的なリーダーという役回りを求められ、
率いるメンバーが社歴が浅いメンバーばかり、だけでなく
社会人経験が浅いとか、エンジニア経験が浅いという中で目をつけた一冊です。


目次

  • はじめに

  • 第一章 マンガで学ぶ1on1ミーティングの基本

  • 第二章 1on1とは何か

  • 第三章 1on1における働きかけ

  • 第四章 1on1導入ガイド

  • 第五章 ヤフーが人財開発企業を目指す理由

  • あとがき

第一章「マンガで学ぶ1on1ミーティングの基本」は1on1の技法の下手な上司/上手な上司によって行われる1on1がどんなものかをマンガという形で対比したあと、それについて解説の文が続きます。
第二章「1on1とは何か」ではヤフーが1on1に取り組む理由(Why)から始まって、1on1を行うことによって何が起こる(起こす)のか、1on1を行うことによって得られるメリットは何かを主に取り扱います。また、ヤフーにおいて定着させるまでの苦労が綴られたコラムもありました。
第三章「1on1における働きかけ」では、1on1を行うにあたって、まず信頼関係を構築するところから始める必要があると強く訴えます。
また、アクティブリスニング(あえて傾聴をこう言い換えます)や
レコグニション(目の前にいる部下のありのままを受け入れ、それを伝える)、
コーチング(本人の経験から学び、次の行動を促すための質問を主としたコミュニケーション手法)、
フィードバック(客観的評価を具体的に伝える、上司と部下での目標水準をすり合わせる)
といった方法論を述べています。
第四章「1on1導入ガイド」では、ヤフーが実践する仕組みについて紹介した上で、1on1における疑問質問にFAQ形式で答えています。
第五章「ヤフーが人財開発企業を目指す理由」では、昭和から平成へと時代が変わり、必要とされるコミュニケーション手法やキャリア・マネジメントが変わってきたなかで、組織が個人にできることはなにか、現代の組織がすべきことは何かについて語ります。

感想

というか実はこの本読むの2度目。
一度目は実際に1on1を行う前に読み終えて、二度目はこの感想文を書くべくもう一度読んだのですが、やはりというか本は何度も読まないと血肉にならないような気がしますね。
読むたびに違う発見があるというか。そのあたりが本の面白いところです。
ちなみに、2度目を読み終えた時点でチームメンバーとの1on1をほぼ1週(1人まだできていない)しており、その経験も踏まえたことで改めて色々得られる部分があったのでしょう。
閑話休題、今現在の私の1on1スタイルを構築しているのはエンジニアリング組織論への招待とnitt-sanとのいきなり1on1、そしてこのヤフーの1on1です。
冒頭でも述べたとおり、今現在の私の置かれているシチュエーションは、
チームメンバー全員が社歴半年未満であり(そして私は社歴2ヶ月でした)
それまでのエンジニア経験がなかったり、社会人経験がなかったりといった状況で
私を含めた5人のチームの事実上チームリーダーとして振る舞うことが求められているというのが実情です。
そこで、「チームとしての最大限の生産性を発揮する」ために必要だと思えた一手が1on1でした。
なお、ここでいうチームとしての生産性はある瞬間のものではなく、瞬間の生産性に時間の経過を掛けた体積、ある一定スパンにおける生産量を念頭に入れています。
ここで、生産量を念頭に入れたことによって、例えば私がチームメンバーの1.5倍の働きをすることができるとしましょう。他方、私以外の4人のチームメンバーが1.2倍の働きが"自然に"できるようになるという方法もあるとします。この2つを比較したとき、他の4人に成長してもらうというほうが簡単ではないでしょうか?
なにより、私の率いるメンバーは経験が浅い面が多い分、伸びしろは私よりもはるかにありそうです。
それならいっそ、私が主体的に時間を使っても、メンバーの成長にコミットした方が高い水準の仕事をこなせるだろうと考えました。
そこで本書を読み進めるわけですが、1on1によって進める「経験学習サイクル」がまさに我が意を得たりというわけです。
「才能と情熱を解き放つ」というキーワードがまさにそれで、メンバーがそれによって成長してくれることを願ってやみません。
そのためにはまず信頼関係の構築が必要なので、私にできる限りのことをやってみたいと思っています。
幸いなのは、上司部下という概念が今の会社には存在しない上、給与に関しても自己決定制度が採用されているおかげで、私に何を言っても評価には一切関係しないということでしょうか。
おかげで、非常に初めやすかったことでしょう。(感覚的には先輩と後輩……でしょうね。)
また、チーム内での取り組みに関して特に誰が監督するわけでもないので、実験的な取り組みでもあまり気負いなく初められるのも良い点だったと言えるでしょう。 
How-toとしてメモしておきたいテクニックは
「今日は何について話そうか」から1on1を始める
(ただし何も出てこなかったときのためのテーマは複数用意しておく)
「本当に信念から出た言葉なのか、思いつきででた言葉なのかをそれとなく確かめる」
「今回の出来事から何を学んだのか問うてみる」
「この学びを次にどこで活かそうかを決めてみる」
あたりかなと思いました。
この辺りは次回の1on1を始める前に目に見えるところにメモとして置いておいて、タイムキープとともに使いたいセンテンスです。
私にとって難しそうだと感じたのはアクティブリスニングとフィードバックです。
アクティブリスニングは私はがっつりメモをとってしまうタイプなので、果たして能動的に聞くことと並行してできているか?その辺りはちょっとメンバーに聞いてみないとわからないです。
また、フィードバックについても、行動を褒めることや、ポジティブな次の行動のイメージを伝えてあげることについては非常に得意だと自負しているのですが、ネガティブな行動や結果を伝えてあげることに対してはそれと同じくらいハードルを感じています。
同じ仕事をするメンバーだけに、嫌な奴、仕事をやりにくい奴だと思われたくないのでしょう。
付け加えて、何よりも課題は「なぜ1on1をするのか」、Whyをメンバーにきちんと伝えられていないのではないかというものです。
これは単に私の説明不足だと思うので、繰り返し言葉にしていかないといけないのですが、それ以前に「チームメンバーの生産性(量)を最大化するため」でいいのか?ということについては一度突っ込まれてしまい、その時私は言葉にできませんでした。
果たしてチームメンバーの生産性を高めることは当人にとって幸せになるのか?
私は経験上、たくさんの事が上手にできるということは快感なのですが、他の人にとってはそうではないかもしれません。そこまで考えると、「なぜ1on1をするのか」については当人と私の二人で都度考えないといけないのかもしれません。
この辺りは、しばらく私に対して問い続けなければいけない問題になりそうです。
最後に、現在の社内の制度についてちょっと触れたいと思っています。
現在社内では(チームでは?)金曜日にchatbot(リマインダ)を通して、
毎週の振り返りとしてチームメンバーに対してフィードバックと内省を行う機会を設けられています。
これは、以下の36度を360日フィードバックの考え方に基づいて行われているものです。
また、それとは別に、KPT(あるいはKFCC)をチーム内で毎週水曜日に行っています。
360度評価ではなく、36度を、360日フィードバック|Ray Kataoka|note
弊社フロントエンドチームで行っている幸せの振り返りフレームワーク「KFCC」を紹介します|しゅけピー|note
ですが、果たしてこれで十分と言えるのでしょうか?
私のメンバーは社内の中でも特にフレッシュなメンバーだけで構築されているおかげで、より一層強く感じるのですが、「この会社は機会はいくらでも提供してくれるけれども、成長を後押ししてくれることはあまりないのではないか?」とこの3ヶ月で思いました。
成長環境しか我々には提供できない|Ray Kataoka|note
実際、CEO(Primary)のnoteにもそう書かれていますね。
とはいえ、目標の一つとして1000人の正社員を抱える企業へと成長するために、ポテンシャルに賭けて経験の浅い人を採用するという動きが活発化しています。
そういった方針や行動の変化に伴って、「成長の機会は提供するが後押しはしない」というのは勿体無いのではないかと思うようになりました。
だって、後押ししたらもっと早く、成長できて、色々なことができるようになったり、深いことができるようにするんじゃないですかね?
そこで、1on1といった取り組みを行うことは、より一層の成長環境の提供ということで非常にマッチするのではないかと思っています。
しかし、これは各員の自主性を重んじ、極力上下関係を作らないこの会社の文化とマッチするのかどうかという点で非常に難しいであろうとも思っています。
もっとも、私に見えている視野・視座からは、チーム内までしか見えていません。
社内全体については、社内でのチャットの動き程度しか追えないので……。
過去にどんなことがあったのか、現在他のチームで何が行われているのか、これから何が必要とされて、どんなことが行われるのか、私は何も知らないのです。
そのため、なおさらこのような動き方を全社的に広げようというモチベーションは今の所ありません。
それでも、チームメンバーについては、1on1を継続して(まだ2巡目は行っていないのです!)、メンバーが成長していってくれることを願ってやみません。
「人事が理想を語らなければ、誰が理想を語るのか」と本書にありますが、
果たして弊社では誰が理想を語るんでしょうね?
なにせ、全員CEOですからね。


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