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コウモリを訪ねてアメリカ横断

はじめに


 1988年に南大東島でクビワオオコウモリという生き物に初めて出会った。ネコのような大きな目に丸い顔とふさふさの毛、果実や花の蜜などを食べるため、食虫コウモリよりもおっとりのんびり、ハタハタ飛ぶ行動も面白い。そんなオオコウモリに魅せられて、クビワオオコウモリのいる口永良部島から南の島々や、国内にいるもう1種類のオオコウモリ、オガサワラオオコウモリの生息する小笠原群島を巡り歩いた。日本には2種類のオオコウモリしかいないが、世界には201種(Bats of the World : A Taxonomic and Geographic Database 2020年11月による)のオオコウモリ科のコウモリがいる。海外にもオオコウモリを探しに行くようになって20ヶ国ほどを旅行した。オオコウモリがたくさん生息するオーストラリアには、2006-2007年に1年間滞在した。

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写真:沖縄本島のクビワオオコウモリ

 アメリカ大陸には、オオコウモリはいないが、似たような食性を並行進化させたコウモリがいる。ヘラコウモリ科のコウモリで、昆虫食、雑食のものもいるが、植物食のものも多い。その中でも砂漠の巨大な柱サボテンの花に来るという花蜜食のコウモリをぜひ見てみたい。観察するにはメキシコが最適のようだが、治安の問題や情報が少ないこともあって、案内してくれる人がいないと行きにくい。幸いにして夏の間、アメリカ合衆国南端のアリゾナやテキサスにも花蜜食のヘラコウモリがやってくる。ソノラ砂漠のサワロサボテンが咲く時期に合わせて行けば、きっと見られるに違いない。

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写真:ヘラコウモリ科のコウモリ(コスタリカのシロヘラコウモリ)

 植物食以外のコウモリにも興味が広がった。何しろ世界には1400種を越えるコウモリがいるのだ。夜空を飛ぶ哺乳類という点は共通だが、洞窟をねぐらにするものから木にぶら下がるだけのもの、屋根裏に棲むもの、葉を囓って自分でねぐらをつくるもの、そのねぐらでの生活も単独や小グループで棲んでいるものから1500万頭もの集団ねぐらになるものまでいる。食性も昆虫食、小動物食などさまざまだ。アメリカ合衆国にはこういった食虫性のコウモリの一度は訪れてみたいと思っていた名所がいくつかある。

 そんな場所を巡るため、2013年、二人とネコ1匹が5月3日から7月21日まで2ヶ月半のアメリカ合衆国コウモリ旅をした。