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4章 テキサスはコウモリの都

4-7 タトル家訪問

 翌朝9時、タトルさんの住所をナビに入れてたどり着いたのが、塀で囲まれた住宅街の門の前。ゲートにある装置の♯を押すと、各住民の名前と番号がでてくるのだが、タトルさんの名前は出てこない。ちょうど出てくる車が一台あって、運転していた女性が、入れと手で合図している。入口側のゲートを開けてくれたようだ。住宅番号をたどりながらタトル家にたどり着くと、ポーラさんが前庭にいるのが見えた。ゲートの♯を押して住民を捜す機能は使えなくなっているそうで、電話してくるかなと思っていたとのこと。ちょうど車で出ていく人が、われわれを入れてくれたと伝えると、「きっとあなた方はいい人に見えたのよ。」と。ここの庭もテキサスの暑さのせいか花は終わっていて、野菜を育てていた。
 書斎のパソコンで写真編集ソフトのライトルームを立ち上げて待っていたタトルさんが、最新のメキシコでのコウモリ調査の写真を例に、画像処理を見せてくれる。われわれはオルガンパイプサボテン国定公園でソーシュルハナナガコウモリを見たが、タトルさんたちは同じコウモリをメキシコのバハ・カリフォルニアでカルドンサボテンの花に来る様子を撮りに行っていた。カルドンは、巨大なサボテンなので、車の屋根に三脚を立てて撮影した話を聞かせてもらった。また、ソーシュルハナナガコウモリが群れで次々と花に来る様子もポーラさんのビデオで見せてもらった。
 カエルクイコウモリがカエルを捕る瞬間、ゲジをくわえたサバクコウモリ、花蜜を舐めるメガネオオコウモリ、岩の隙間から顔を出すマダラコウモリ、甲虫を捕ろうとしているアフリカアラコウモリなど、タトルさんの有名な写真を撮った時のエピソードなどを聞かせてもらった。またBCIのツアーでアフリカに行った時に、目の前にケンショウコウモリがやってきて、参加者もみんな撮ることができたことなどなど、さまざまな話を聞く。
 玄関の間(息子さんの勉強部屋でもあるようだが)に機材が置いてあり、カメラやストロボ、三脚などいろいろ見せてもらった。三脚を延長して上方からストロボを吊すための工夫や、ストロボの光を集中させる機器などなかなか面白かった。複数のストロボを無線で同調させるところも見せてもらった。カメラにもストロボにも全部記号番号が付いていて、どこに置くストロボか、調子が悪いのはどれか把握しやすいようになっている。
 機材は旅行前に入念にテストして、データをノートに克明に付けてある。説明書の必要な部分もコピーしてノートに貼り付けてある。それでもけっこう撮影しようと思ったら思うように動かずに、毎回慌てると。
 何月何日にどこで何をどういう状態で撮影したかは丹念に毎日メモしてあり、何十年にもわたる記録ノートも見せてもらった。次はインドネシアに撮影旅行に行くということで税関申告のために作った機材リストもプリントアウトして頂いた。
 タイでは、コウモリの会が調査をしているのと同じ場所で、キティブタバナコウモリやインドヒオドシコウモリを撮影しているので、現地でわれわれを案内してくれたS氏や、国立公園のS氏、おなじみの村の人たちなどの姿が写った写真を見て、思わず名前をつぶやいたら、「君たちも同じ所に行ったんだね。」
 夕志の撮ったマルチストロボの写真を見て、こういう機能が在ることは知っているけど、撮ったことがないと興味を持って、タトルさんの機材でポーラさんが説明書を読みながら設定してみた。書斎で夕志がミニタオルを投げて撮影してみたけれど、明るすぎて半透明のミニタオルの5連続写真になってしまう。書斎に隣接するトイレ入口でタオルを投げると、なんとかそれらしくタオルの連続写真となった。
 ということで、9時から15時近くまで、途中でポーラさん手作りの昼食、野菜の和えた物を頂きながら、長々と過ごしてしまった。タトルさんは青汁を飲んでいただけだったけど、昼食はとらないのだろうか。
 書斎の窓の外に鳥のフィーダーがたくさん吊してあって、ハチドリが来ていた。

 現在タトルさんはMerlin Tuttle’s Bat Conservationという団体を創設して活動している。ブログでは世界各地でのコウモリ撮影旅行や講演のようすなどが読める。
メキシコ撮影旅行のようす
タイ撮影旅行のようす

トップの写真は、タトルさんの著書(左3冊)とタトルさんを紹介した章がある本(右)

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夕志のマルチストロボの写真