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2章 アリゾナでサボテンの花にくるコウモリを探す

2-2 ツーソンでの「暮らし」

 われわれが動き回るのは、基本的に午前中と夕方から深夜が多い。なので1日の食事は、朝は軽くパン、夕食もサンドイッチのお弁当、しっかり食べるのは昼ご飯というパターンがほとんどだ。
 今までのモーテルは、調理できる設備は何もないか、電子レンジと小さな冷蔵庫だけあるという所がほとんどだった。何もなければ、食事は外食か、持ち帰りの料理だけ。電子レンジがあれば、冷凍や冷蔵のお総菜類とか、缶入りスープを温める。それだけだと野菜不足なので、ズッキーニのような野菜をレンジで調理して加えたり、生野菜でサラダにする。

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 今回ツーソンではミニキッチン付きのモーテルにしたので、一応2口のコンロがあり、食器や鍋フライパンも備わっている。初めて料理らしい料理をつくることができた。日本から電子レンジ用のお釜を持参しているので、ご飯も炊ける。でも日本で試しに作ってみたときはけっこううまく炊けたのだが、こちらではどうもべたっとしたご飯になってしまう。お米の違いだろうか。

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スーパーマーケットで1種類だけあった中粒米を買ったのだがいまひとつ。いっそフライパンで生米からピラフにしてみたら、この方がずっとおいしかった。ならば長粒米にしておけばよかったかも。

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 それにしても、日本のキッチン付き宿泊施設だと、食器洗い用洗剤とスポンジは必ずあるし、調味料が一通り揃っているところもあるのだが、ここは何もない。キッチン付きとはいっても大部分のお客さんは、せいぜい電子レンジで暖めるくらいなのだろう。

 ツーソンの町を挟んで東側と西側に分かれてサワロ国立公園がある。国立公園を回って、サワロサボテンの花の咲き具合を見ながら、良さそうな場所でソーシュルハナナガコウモリを探すことにしよう。
 5月22日は、その西側区域へ行く。昨日の砂漠博物館の少し先からが国立公園になる。サワロサボテンがちょうど満開だ。このあたりは砂漠博物館あたりよりも一段と立派なサワロサボテンが多い。
 サバクワタオウサギSylvilagus auduboniiは道路際の草を食べているのか、道路でよく見かける。

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 砂漠を低くヒメコンドルCathartes auraが飛ぶ。どこかに死体でも落ちてないか捜しているのだ 。近くまでくると、赤い禿げた頭がよく見える。時々獲物を見つけたのか地面に降りるが、このときは収穫がなかったようだ。

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 国立公園のビジターセンターでサワロサボテンを中心とした15分のビデオを見た。ビデオが終了するとスクリーンが上がって、背後のカーテンが左右に開き、窓から外のサボテンが林立する景色が見える。カーテンの遮光が優秀だったので、背後に窓があるとは気がつかなかった。ここでしかできない、すばらしい演出。

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 職員に聞いてみたが、ソーシュルハナナガコウモリは見たことがないとのことで、ポイントはわからない。ただ、コウモリなら町中のキャンベルアベニュー橋にねぐらがあって見られるという。ただしそのコウモリはメキシコオヒキコウモリTadarida brasiliensisで、今探している花蜜食コウモリではない。
 ビジターセンターでは、近郊のネイティブアメリカンの人たちの伝統的デザインを復元したクラフトを売っていた、種を貯蔵する壺でコウモリの模様のがあったので購入。ショップに居合わせた女性が、このクラフトを造っている居留地に滞在したことがあるといって、いろいろ説明してくれた。でもコウモリ模様は見たことがなかったという。

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 この夜は、昼間訪れた国立公園ビジターセンター前でコウモリを待つがやはりソーシュルハナナガコウモリは来ない。28kHzくらいのちょっと遅いリズムのコウモリと45kHzくらいの早口のFM音を出す2種類のコウモリが来た。朝の3時まで粘ったが、生き物の気配はあまり感じられない。