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成行の大義と忠義~ローグ・ワン(Star Wars) キャシアンの台詞からの比較?~

スター・ウォーズシリーズのローグ・ワンを観ていたのですが、そこでのキャシアンという人物の台詞が気になって…。SF映画を観ていても十二国記に関連づけてしまう自分の十二国脳をどうにかする必要があるのですが…。
スター・ウォーズや十二国記をそれぞれ愛する方で、それらを混同するな!穢されたくない!という方はこれ以下ご注意を…。

ローグ・ワン(スター・ウォーズ)を知らない人へのざっくりとした状況説明(ネタバレです)

すっごくざっくりですが、その気になったという台詞を言ったのが以下のような状況でした(私の主観なので、解釈間違っている可能性もあります💦)。

スター・ウォーズは基本的に、「帝国軍 (悪)vs 反乱軍 (善)」という構造になっています。ローグ・ワンでキャシアンという人は反乱軍の情報将校です(https://starwars.disney.co.jp/movie/r1/character/character02.html)。映画の最後の方で、帝国軍が強力な宇宙要塞(Death Star)を手にし戦況が帝国軍側勝勢となり、反乱軍はそれに立ち向かうのは犬死だから、降伏する…といったような流れになり。でもジンという反乱軍側につくことになった女性がその要塞を打ち破る可能性がある為、戦いたいと進言するのですが、ジン自体が反乱軍の中で信用されず反対されます。ジンが落胆しているところに、このキャシアンという人がやってきて以下の言葉を言うのです(このジンとキャシアンはこれまでは反目していました)。

気になったキャシアンの言葉(引用)

我々(反乱軍兵士)の何人か いや ほとんどがー
反乱軍のために手を汚してきた
スパイ、破壊工作、暗殺
(俺がやってきた全て、)全て反乱軍のためだった

(忘れてしまいたいような)
後ろ暗い任務を終えるたびにー
大義のためと自分に言い聞かせた
(自分の信じる大義は価値のあるものだと)

でなければ― 全てが無意味になる
自分たちのしてきたことが

(いまここで投げてしまうと)
自分と向き合えなくなる
我々の誰もが

映画の字幕そのまま。カッコ内( )は私が勝手に付け足した意訳?です。下は英語原文。ちょっと和訳の方だとニュアンスが変わってくるので、英語の方が強い感じがします。

Some of us - well, most of us - we've all done terrible things on behalf of the Rebellion. Spies, saboteurs, assassins. Everything I did, I did for the Rebellion. And every time I walked away from something I wanted to forget, I told myself it was for a cause that I believed in. A cause that was worth it. Without that, we're lost. Everything we've done would have been for nothing. I couldn't face myself if I gave up now. None of us could.

これを聞いた時に、どちら側と断定せずとも、軍・武力組織に長く身を於いている人や、その中の「主公(あるじ)」と自分が定める人についていくのは、少なからずこういう考えもあるのかな…と。

「正義」を導くための殺戮行為を、自分の中でどう「正当化」「納得」させるのか…

十二国記(特に成行?)に絡めた感想

もし、友尚のように途中で霜元(驍宗)側につくと、今まで阿選を正なるものとして行った残虐な行為が、「無意味」になってしまうのではないか…という考えも、最後まで阿選側についていた成行の中にはもしかしてあったのかな…と。

阿選によって阿選麾下や阿選軍は罪のない民の殺戮や殲滅を強いられて(と感じるのは、その兵士によるかもしれませんが)いました。士真ら友尚軍旅帥の描写からも、その殲滅や殺戮を「主公」が言う事だから何の疑問を抱かずに行えれた兵士はやはり少なかったのではないでしょうか(特に烏衡のような殺戮を楽しむような人は、道義や規範がしっかりとしていたとされていた当初の阿選軍では…)。

ですが、じゃあ、嫌だったから、阿選の元を離れて逆側の立場について、今までの罪を贖う…ということで、今まで実際にしてきた自分の所業を簡単に「正当化」「納得」できるものなのか…とも思い…。

かといって、そのまま、阿選側についてその「悪」だと分かっている事にそのまま加担して罪を重ねるのも、かなり辛いことだとは思うのですが…。

友尚に関しては阿選を止める(殺す)ために形上霜元らについたのかもしれませんが…。決して阿選に歯向かうことで、自分を正当化しようとは全く思っていません。ただ、成行に関しては、自分のしたことをなかったことにできない、その前には戻れない…というのを、よくよく理解していたから、最後まで阿選に従うと決めたのかもしれないな…とも思ったのです。

武人の武力行使に対する考え方(?)

軍に所属する、ということはそもそも、単なる防衛だけでなく、ある目的のために「武力的」な手段を行使するということで…。その目的・結果が「善」であっても、その途中で採られた手段は「善」であり得るのか…という疑問が、私の中ではどんな場合でもあって…。

結局、善悪は相対的なものだし情勢状況によってどちらも白黒簡単に入れ替わってしまう。極端な例かもしれないけれど、太平洋戦争時、日本に原爆が投下された事がアメリカや海外では正当化されているように…。そこで失われた命は本当に意義あるものだったのか…。

自分たちの行いを、最後まで「善」または「正義」「正しい」としないと、自分のアイデンティティが崩れてしまうし、後でそれが「過っていた」とするなら(特に最初から「悪いこと」と理解していたのなら尚更)、自分の中で生じる矛盾に苛まれることになってしまうのではないか…。

「正義」を導くための、特に武力を持たない人達への殺戮行為を、自分の中でどう「正当化」「納得」させるのか…。『東の~』でも触れられているが、のちに何万人も失うことになるなら、今百人の犠牲はしかたがないのか…。その犠牲にさせる方法がどれだけ残虐であっても、どれだけ無辜の民が巻き添えになっても「正当化」されるのか。

上記のキャシアンが放った言葉の状況は、墨幟が最後の方でほぼ壊滅的であった時に、敦厚に王を諦めろ…と言われた時の李斎が感じた事とも状況が似ているな…と感じて。敦厚のその言葉に、李斎は

 ――この犠牲は何のためだ。
 ここで驍宗を諦めて逃げ出すのなら、最初から追撃などしなければ良かったのだ。そうすれば犬死に覚悟の悲惨な戦闘などせずに済んだ。
四巻306項

と思っています。

やはり自分たちの信念や自分としてのあり方に筋を通す意味でも、一度決めた(行った)事に対しては完遂する、という意思力が武人の方が(人の命の犠牲を伴うことが直接的に多いから)強いのかもしれない。

この李斎の考え方は、きっと成行も同じかなと思っていて、後々阿選が過っていたから麾下を辞めたり阿選を非難するようなことがあるのであれば、阿選が王でないこと、王を弑する行為や民を虐殺することが間違いと分かっていた、その最初の時点で、阿選についていかないという選択肢をするべきだ…というのが成行の根底にある考え方でなかったのだろうかと…。

だけれども、それをしなかったというのには、何らかの理由が成行にはあって、阿選の麾下としてついていくと選択したその時点でそれを貫く、そしてそれが自分が自分でありつづけるということ、自分がしてきたことが「無」ではなかったと、自分自身に顔向けができる姿でありたかったのかな…と、そんなことにまでキャシアンの言葉から想いを馳せてしまいました…。

おまけ?他のシーンで関連があるなぁと思った言葉…

ジンは大切な人をキャシアンが嘘をついたせいで危険にさらされ殺された…というようなことを言ってキャシアンに詰め寄るシーンがあります。それも「是非を考えるのは兵士の職分にない!」と言った成行とも被って…。

キャシアン:命令を受けていた。命令は絶対だ。
納得しないだろうが
ジン:命令?間違って(いると知ってい)ても?
ストームトルーパーと同じね
キャシアン:君に何がわかる?皆が自分の行動を決められるわけじゃない。
突然反乱軍と出会いそこで生きる者も(いる)。
私は6歳でこの戦いに加わった。
(君だけが全てを失ったわけじゃない。)
私も全てを失ったんだ。
だが、そこから立ち上がった者もいる。
ジン:(言い逃れしないで)
キャシアン:(する必要なんかないさ)
Cassian: I had orders. Orders that I disobeyed. But you wouldn't understand that.
Jyn : Orders? When you know they're wrong? You might as well be a stormtrooper.
Cassian : What do you know? We don't all have the luxury of deciding when and where we want to care about something. Suddenly the Rebellion is real for you. Some of us live it. I've been in this fight since I was *six* years old. You're not the only one who lost everything. Some of us just decided to do something about it.
Jyn : You can't talk your way around this.
Cassian : I don't have to.

命令を受けて考える余地なくただ従う…。だけれども、その中での自分のあり方、どうやっていくのか、行った行為に関して自分に対して説明をつけていくのか…。というのを改めて考えさせられたりしました。

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