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カマキリは六本足で歩く
中央線高架下の、シェアサイクルの駐輪場でカマキリに懐かれる。
気がつくと、腕の上に乗っている。
待ち伏せタイプの捕食者なので、さすがに静かである。気配を感じさせずに忍び寄る。
目と目が合う。互いに見つめ合う。
最初は、前足である鎌を上品に畳んで静かに佇んでいたが、やがて肩に向かって二の腕を登り始める。
その歩く様子を見つめる。
カマキリの前足は奇襲攻撃と捕獲に特化した文字通りの鎌で、歩行は中足と後足の四本で行うものだとばかり思い込んでいたが、実はそうではない。
前足である鎌の先端から、細い接地用の爪先が毛のように伸びていて、歩く時にはそれを用いるのだ。
つまり、カマキリは六本足で歩く。
良く見なければ、気づかないことだ。
この年齢になるまで、私は全く気づかなかった。
何時の間にか、カマキリはどこかに行ってしまった。
今日は朝から曇天であった。
そんな秋の午後だった。
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