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【Q3.拡大版立山黒部アルペンルート】2.立山駅から室堂まで(立山ケーブルカー・立山高原バス完全乗車)



立山ケーブルカーで美女平まで


 フロントの女性から昨夜受けたアドバイス通りに早起きする。まだ七時前だ。その言葉の通り、立山駅前には既に、ケーブルカーの当日券を買い求める客の列が出来ている。自分もすぐに並ぶ。


 自分の前には、祖父母、親子、親戚などで構成された、大家族の一団がいる。イントネーションから関西人と思われる。どこまでの切符を何枚買うのか、いつまでも相談し続けている。室堂まで行って日帰りするのか、長野県側の終着地である扇沢まで行くのか? その場合自家用車はどうするのか、今から自家用車回送サービスを頼んで間に合うのか? 誰がどこまで行くのか? 家族の間で、諸々が決まっていないようだ。なかなか話が纏まらない。
 背後をケーブルカーが走る。試運転のようだ。空は良く晴れているが、肌寒い。

 列は順調に少しずつ進み、自分の番が来る。ここ立山駅から扇沢までの片道切符、つまり立山黒部アルペンルートの通し切符を買う。ケーブルカーは何時の便が良いのかと聞かれたので、何時ならば空いているのかと逆に聞き返すと、今なら7時10分の便が空いているという。さすがに身支度が間に合わない。その次の、7時20分の便にしてもらう。


 慌ただしく宿に戻り、出発の準備をする。チェックアウトしようとするが、前の客が手続きに手間取っている。この客が事前精算なのか事後精算なのか、老齢のフロント係員が把握していなかったためだ。自分はネット精算の素泊まりなので、単に鍵を返すだけなのだが……。

 立山駅前のポストから、予め買っておいたレターパックを自宅宛てに送る。中身は、昨日午前の健診会場で受け取った、検便キットだ。旅行中、検便容器を持ち歩くのは流石に嫌なので、帰宅後に採便しようと思う。

 登山者の朝は早い。ケーブルカー立山駅は、この時刻からすごい人出だ。大都市の通勤ラッシュ並みの混雑を見せている。飲食店も土産物屋も、朝一番から全力で営業している。駅そばに気をひかれるが、食べる時間がない。土産物もゆっくり見られない。駅スタンプだけは忘れずに押し、ケーブルカーの列に並ぶ。


 ケーブルカーの改札の前には、先発の便の列と、次発の便の列が出来ている。本当に通勤ラッシュ時のようだ。アナウンスに従って改札を通り、階段状のホームにて指定のケーブルカーを待つ。撮影は白線の内側で行うよう、係員が呼びかける。
 奥まで目一杯人が詰め込まれる。車内が混みあうため、リュックなどは手に持って乗るように、また先端が鋭利な登山道具は予め収納するようにアナウンスされる。

 7時20分、ケーブルカー立山駅発。車内混雑のため、車窓を選んで撮影する余裕など無い。自分の居る位置では、景色の良い山麓側は写せないので、崖側の山肌を写す。山を下って来るケーブルカーと、途中ですれ違う。ケーブルカーの構造からして、このすれ違いポイントが、中間地点だろう。


 7時27分、美女平駅着。人々は争って次の旅程、室堂行きの高原バスの乗り場に急ぐ。自分もその勢いに釣られ、バス乗り場の行列にそのまま並んでしまう。後から考えるとこれが判断ミスで、ここ美女平駅の記念スタンプを押すのを忘れてしまった。高原バスは特に乗車する便が指定されているわけではないので、そんなに急ぐ必要もなかったのだ。

高原バスで美女平→室堂まで


 七時四〇分、美女平発。左側の窓際の席に座れる。車窓はしばらく森が続く。途中、ヘアピンカーブが何度かある。時に、私が座っている左側が山麓側となって景色が拓け、また逆に右側が山麓となり、こちら側が森となる。
 名所である称名滝を望むカーブを通る。遥かに遠い。バスは徐行し、撮影タイムを設ける。


 ヘアピンカーブが連続している、七曲り道路という区間に入る。英語アナウンスで「ナナマガリ ワインディングロード」と言っている。その部分だけ聞き取れる。
 年輩の女性が、車内で商談をしている。こんな所まで来て、ご苦労なことだと思う。
 阿弥陀ヶ原停留所。阿弥陀ヶ原ホテル利用者のための停留所だ。乗り降りする客がいる。


 道中、自動音声の車内アナウンスで、立山の見どころが一通り解説される。立山の歴史と山岳信仰、雷鳥や高山植物などの自然、有毒ガスのために現在は遊歩道に入れなくなった地獄谷……。 
 標高が高くなるにつれ、地表から次第に緑と土色の割合が減り、白の割合が増えてくる。
 天狗平停留所。ここも、宿泊施設に近接したバス停だ。標高もここまで高くなると、車窓は白の割合が大分高くなる。駐車場には除雪車両が待機している。
 天狗平を出発したタイミングで、車内アナウンスで立山三山の紹介が流れる。右から雄山、大汝山、富士の折立だ。
 両側を雪の壁で挟まれた「雪の大谷」を通り、八時三〇分、室堂ターミナル着。既に多くの人で賑わっている。

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