見出し画像

【Q1.二〇二三年三月一八日開業の新駅を巡る】1.朝の新綱島駅

 朝の綱島駅前には、陸続と路線バスが到着し、また発車していくため、駅構内にまでバスの排気臭が流れ込んでくる。その臭いの中を、新綱島駅まで歩く。
 東急東横線綱島駅と、新横浜線の新綱島駅は、徒歩による乗換えが可能な距離にある。例えば、津田沼と新津田沼、秋津と新秋津などよりは、乗換えは容易であるように感じられるが、間に通る綱島街道を横断しなければならない。
 新綱島駅は、三月十八日に開業した新駅だ。日吉と新横浜を結び、相鉄に乗り入れる新路線、東急新横浜線が開通したのと同時に、その両駅の間に設けられた駅である。
 この駅自体は地下駅であるが、その地上部分に当たる区画では、巨大建設物の工事が行われている。朝の七時から、クレーンは既に稼働している。大型車両の後退音、誘導の笛の音、建設工事の作業音が街に響いている。今日は実に良い天気だ。本当のいわゆる五月晴れだ。ワイヤーに吊られた建築資材が、その今朝の青空に向かって、ゆっくりと上昇していく。


 新綱島駅周辺の敷地は、ほとんどが高くて白い工事現場の壁で囲まれている。そのエリアの一角に、新綱島駅の入口がある。駅に向かう人もそれなりに居るが、綱島駅と比べると、やはりまだ少ないように思われた。
 その広大な敷地の周囲を歩いていくと、民家らしき建物が目に入る。用地買収交渉が、まだ完全に終わっていないのだろうか? 民家にアクセスする道があるようだが、当然ながら関係者以外立入禁止となっている。


 現在建設中のタワーマンションは、全て完売との掲示がされている。


 工事関係者らしき人の姿が、既に何人も見える。路上で、業務上の打ち合わせらしき立ち話をしている。
 新綱島駅周辺には、商業施設らしきものは、まだ何も無い。一度綱島駅側に戻り、「渋そば」の店内に入る。東急沿線で良く見かける、東急系列の立ち食い蕎麦屋だ。ご当地グルメの一種と、言えないこともない。


 かきあげそば。店の前の路上を、速足で駅方面へ向かう人々を眺めながら食べる。JR東日本系列の「いろり庵きらく」とは、やはり味が違うような気がする。ゴールデンウィークの期間中とは言え、今日は平日なので、通常通り通勤・通学者も一定数いるのだろう。ただ、この店の客はそれほど多くなかった。


 駅の南側、新横浜方面には堤防がある。登る。鶴見川だ。川に向かって右手の上流側には東横線の橋梁が、左手の下流側には少し遠くに東海道新幹線の橋梁が架かっている。トレインビュースポットだ。現在建設中のこのタワマンからの眺望も、さぞかし気持ちの良いものであろう。


 東横線を走る各種車両や、新幹線をしばし撮影する。東横線の橋梁を走る車両は、川面にその姿を朧げに映しつつ駆けていく。新幹線は、やはり速いので、撮影がやや難しい。東側なので、少し逆光になっている。既に日は高い。
 爽やかな気分になる。堤防沿いの道を、散歩者、犬の散歩者、ランナー達が思い思いに往来している。

詩的散文・物語性の無い散文を創作・公開しています。何か心に残るものがありましたら、サポート頂けると嬉しいです。