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人生最大の挫折

皆様こんにちは。魚谷侑未です。

今回のお話は前回のコラム『高校卒業後、競馬学校を目指し再始動』の続きになります。

さて、では何故私が騎手試験を諦めてしまったのか。
一年間で蓄積した挫折感が、孤独が、絶望が、全て放出されてしまったのです。

山形の家では、結局誰も私の「騎手になりたい」気持ちの味方にはなってくれませんでした。
当然かもしれません。祖父も祖母も高齢ですから、危ないことはさせたくない、普通の女性としての道を生きて欲しいと思うのも無理はありません。
山形には一人も友達が出来ずに、孤独でした。
孤独で辛くなった時、実家の母親に泣きながら電話をしたところ「明日早いから勘弁して」とガチャ切りされたことも。私は本当に一人なんだなと思いました。

毎日、乗馬クラブで挫折して、家に帰ってきて辛い思いをして、誰にも頼れなくて、どうしたらいいかわからなくて。

受験近くになっても、私は主観的にも客観的にも合格レベルには程遠い状態にありました。
乗馬技術に何も進歩はなく、乗馬しては落馬する。馬とのコミュニケーションも上手く取れないまま。最低限出来なくてはいけない懸垂も出来ず。体重は45〜46キロを行ったり来たり。

せめてどれか一つでも合格基準に近かったら…。

しかし、今の情けない私は、1年間やってきた事の積み重ねだったのです。きっともっと頑張れた事はたくさんあったのに、なかなか現実と向き合わずに限られた時間を消費してしまったのです。
だから、受験する前から分かっていました。「合格するわけがない」と。
気づいていたのに気づかない振りをしていましたが、受験が近づいてくるにつれて、見たくない現実を見ることになって…逃亡しました

人生で一番大きい挫折でした。前にも先にもきっとこれより大きい挫折をすることはないと思います。

そして、人生で一番辛い一年間でした。

頑張りたいと思った事が、自分には全く向いていなくて、誰も助けてくれない、味方がいない、本当に孤独で心で毎日泣いている日々。
この一年間があったから、それから先にある麻雀人生で「辛い」と思った事は一度もありません
勝ち負けや人間関係による、一時的な辛さはありましたが、それが続くことはありませんでした。
何より「麻雀は自分に向いている」と、自己肯定感を持ちながら日々を過ごせることを幸せに思います。
そして、孤独じゃない。仲間が、先輩が、ファンの皆さんが居てくれると思えること。これはとても、心強くて、自分の糧になっています。
だから、ちょっと辛いなと思うこと、思う時期があっても頑張れます。

麻雀プロの世界では、勝者は一人しかいません。
1000人の中から勝ち上がって、決勝戦に進んだとしても、4人の中で優勝しなければ全員が等しく敗者となります。
だから、辛く苦しい時期が続きます。勝つまでの道のりは果てしなく長いです。
それでも、次の勝利を応援してくれる方に届けたいから、挫けず頑張ろうと思えます
この先、一生麻雀で勝てなかったとしたら、いつか挫折してしまうかもしれません。
それでも、19歳の時に、とてつもなく大きい挫折を経験した私は、乗り越えられると思います。

人生で一番辛い一年間で、一番辛い挫折でしたが、当時の経験があったからこそ今の自分がある。これは間違いありません。
騎手を目指すための最善の選択は取れなかったかもしれませんが、麻雀プロとしては自分にできる最善の選択をしていきたいと思います。

(次回更新は8月31日)

うおたにゆうみ
十段位、王位をはじめ数多のタイトルを手にしている麻雀のトッププロ。2018年のドラフト会議でセガサミーフェニックスから1位指名されMリーガーになると、2019年にレギュラーシーズンMVPと最高打点賞の二冠を獲得。その実力で「麻雀に男女差はない」を証明し続けている。
麻雀プロを志す前は騎手を目指しており、実際に競馬学校騎手課程を受験したという経歴の持ち主。
X(ツイッター) @yuumi1102

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