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こうぞの森から -生物多様性と伝統文化を育む里山-

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里山の資源や環境価値を見直し再構築したい、そんな想いでフィールドを探していたところ、楮(こうぞ)という植物に出会いました。 生産・加工を学び、実践する中で日々感じていることや、…
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#品質

適地適木と微気象【前編】

前回の記事では、「評判がよい」と称される那須楮の品質基準の曖昧さについて触れました。今回は、自ら発したこの課題を明確にする上で、ヒントとなりそうな切り口について、ちょっと掘り下げて展開してみようと思います。 適地適木林業には、適地適木(てきちてきぼく)という用語があります。 農業より土地改良が困難な林業の世界では、その土地の気象・地形・土壌など環境に合わせた樹木を植栽するすることが重要です。逆を言うと、その土地の環境にあった周囲の樹種を観察してやれば、自ずと植えるのに適した

多様性 vs 品質

那須楮は高品質な和紙に使用されていると言われています。ここで言う"高品質"とか"高価"とか、価値を決めているものって一体何なんでしょうね。今回は地域で楮に関わる中で語られる品質について疑問に感じたこと、考えたことを綴ってみたいと思います。 量から質へかつて、工芸作物に限らず農産物の名産地とは、絶対的な産出量で語られることが多かったような気がします。原料生産に適した気候風土であるとか、歴史的に生産を奨励されたとか、その地域に根付き、たくさんの農産物を生む産地が形成されてゆきま