2022年3,4,5月 ポスト/ネオクラシカル振り返り

さて、今回は2022年の3~5月分の振り返りです。5月にリリースが集中していたので少し盛り沢山。


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1. Eydis Evensen- 「Frost」


リリースペースが凄まじいEydis Evensenの新作EP。安定してます。収録曲のMVも素敵でした。


2. Fennesz & Sound Earth Legacy - 「Sound Earth」


Fennesz(フェネス)の新譜は、空間性を強く意識させる神秘的なアンビエント。実験音楽の色合いが強いアルバムも4月に発表されています。


3. 「Piano Day, Vol.1」


こちらはPiano Day 2022に際して発表されたピアノ曲のコンピレーションアルバムより、Olafur Arnaldsの作品。他にもNils Frahmなどネオクラシカル系の作家も多数参加していますので要チェックです。
ちなみに、Piano Dayとは文字通りピアノを振興するための記念日。鍵盤の数にちなんで毎年1/1から88日目にかけて、ライブイベントやワークショップが世界各地で開催されています。


4. Hania Rani - 「Venice-Infinitely Avantgarde(Original Motion Picture Soundtrack)」


ピアニストHania Raniの新作は、ヴェニスが舞台のドキュメンタリー映画「Venice-Infinitely Avantgarde」のサウンドトラック。残念ながら日本への上陸予定は不明で、映画を観るのは難しそう。

2月リリースでしたが前回入れ損ねていたのでこちらに。


5. Olivia Belli, Hugar - 「Sol Novo(Hugar Rework)」


ともにネオクラシカルな作風を売りにするOlivia BelliとHugarの嬉しいコラボ(というよりHugarによるリミックス)作品。オリジナルからチェロの要素が引かれ、その代わりに電子音が加えられています。パッド音や深めのリバーブでより温かい作品となった印象。こちらの方が好みです。
なお、Slow MeadowやEd Carlsenのリミックスもありますので気になった方はぜひ。


6. Lissom - 「Eclipses」


珍しい歌もの。Julien MarchalとLowswimmerのコラボプロジェクトLissomの二枚目のアルバムになります。静謐なピアノとウィスパーボイスの相性が本当に抜群で、今年の歌ものネオクラシカルでは最も聴いている作品。素晴らしい。。


7. Tim Linghaus - 「Provenance」


Tim Linghausの新作は、ずばり原点回帰。電子音は封印し、ピアノ一本勝負で聴かせます。
ネオクラシカル系の作家にはだいたい2パターン──ここではないどこか=空間を想起させるもの、と、ここではないいつか=時間を想起させるもの──あり、Tim Linghausの場合は後者だと感じています。それも聴いている人間が実際に体験した過去のひととき、ではなく、体験したはずのない幻の過去、いわば幻肢痛のような奇妙な疼きを。
自身の過去を"sketch"した前作Memory Sketches IIは、体験した過去と合成された過去、捏造された過去や物語としての過去をないまぜにする、非常に批評的な作品でした。電子音を極めた意味合いもあった前作を経て、今作「Provenance」はTim Linghausの軽やかな跳躍が楽しめる名品と言えるでしょう。


8. ryu sugimoto - 「fragments」


最後はピアニストryu sugimotoのデビューアルバム。リフレインがたいへん美麗。今後を追っていきたい作家になりました。なりましたが、どうもSNSのアカウントがないっぽいのでどうか宣伝用のアカウントを…



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3,4,5月号はこんなところ。
次回7,8月号でお会いしましょう。では!

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