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旅について行く夢_200327

師匠が北海道に行くらしいという情報を得た私は、
なんとかその旅に同行お許し願えないか交渉をしている
メールの返事は

「同行は許しません。
 インタビューなどのコメントもいたしません。
 ですが、私が行った先のGPS座標と画像を送るので、
 付いてきたければそれを手がかりに探すといいでしょう。
 探しても私はもうそこには居ませんが」

とのこと
やったぜ、という事で編集長から移動費前借りしてまずは社内で連絡を待つことにした
財布と携帯電話ぐらいしか持ってないので、
あんまり雪の深い山奥とかは行けないかもなあと思いつつ

ピコーン♪と着信音が鳴り1枚目の画像とGPS座標らしき数値がメールで届いた
それは東京駅
まさか師匠、陸路で行くのかな
もう出発しているだろうけど飛行機は乗らなかったのか
会社を出てタクシーを拾い、東京駅に急ぐ

駅前は人がいない
屋台の団子屋が「焼けてるよー美味しいみたらし団子ー」と叫んでいる
駅員を見つけ、北海道までの切符を買う
ここから3時間50分程で行けるそうだ
電車?新幹線?とりあえずなにかの乗り物がくるまで待つことにする

ようやく電車?新幹線?乗り物が来て乗り込み、一息つこうとした所でピコーン♪とメール
北海道とは思えないヤシやシダぽい木がたくさん生えた林の写真
北海道は嘘だったのだろうか?
しかしGPSの数値を調べると確かにそこは北海道
師匠のことだ、まこうと思えばすぐまけるし、やっぱやめた帰れと言われても仕方がない
一応認識されているとはいえストーカーみたいな取材なのだし

北海道に着くまでにここのことを調べよう
どうやら南国を模したガラス張りの植物園があるらしい
有名な建築家が設計したらしく、雪が降る時期のコントラストは素晴らしい、とある
師匠らしいなと思い、そこに向かう事にする

『アーゲア道立植物園は1990年に建築家竹下道尾氏指導の元建てられた
ハワイ、東南アジア、アフリカ大陸から集めた植物と、国内では沖縄、九州から集めた動植物により構成される
高い断熱性のあるガラスと特殊な構造、さらに竹下氏が発明した室内温度循環装置により、
マイナス30℃にもなる北海道の地でも問題なく稼働できる、道内唯一のガラス張り温室植物園である
バスケットコート5面分ほどの広さには、常時約3000種類の植物と50種類の小動物が展示されており…』


ピコーン♪と携帯が鳴る
写っているのは雪に開けられたらしきマンホールほどの穴を、下から上へ覗いたような画
数メートルはあろうかという穴の奥には空が見えており、太陽らしき光が差し込んでいる
ちょうど井戸から上を見上げるような画だ
そしてGPSの座標と「私は来なかった」というメッセージ付き
調べると、住宅街にある小さな公園のようだった
なんでも毎年ここには木々が埋まるほど深く積もった雪にキツネが穴を掘ってそれが残り、
その穴を覗いている時にキツネが落ちてくると良いことがあるらしい

急いで現場に行く
遊具がチラホラ置いてある、東京でも住宅街によくあるこぢんまりとした公園だ
周りはぐるりと半円に雪の壁になっていて、木がちょうど骨組みの役割をしているようだ
高さは3メートルほど、壁の上には骨組みの木の葉っぱが茂っていて、
自然は変なものを作るなぁと感心する
入り口から続く飛び石を辿ると『のぞきあな』と手書きで書かれた板が壁に立てかけられているのを発見した
たくさんの人が触れたように穴の入り口は溶けて凍っている
恐る恐る穴を覗き、写真と見比べる
確かにここのようだが思ったより細く、顔がまるまる入るぐらいしかない

太陽はそろそろ傾いて夕方、暗くなった穴からは薄雲のかかった空しか見えない
ここからキツネが落ちてくる事なんてあるのか?住宅街なのに?
ぼうっと穴から空を見ていると不意に穴が塞がれたように真っ暗になり、
濡れた毛皮の感触と軽い衝撃が顔面を襲った
驚きで声を上げて尻もちをつき、周りを見ると
小さな小麦色の生き物がテテテーと公園の外に走り出ていった
キツネ…?これがもしかして幸運のキツネ?
尻もちをついたまま唖然と公園の入り口を見ていると、管理人と思しきおじいさんが現れ
「今日はもう終わりだよー」と言い、立てかけられていた『のぞきあな』の看板を持って行ってしまった
…これはアトラクションか何かなのだろうか?
自然と野生動物と人工的な公園が織り成した奇跡とかそんなのではなく、
ただの装置というか、そういう遊具?


ピコーン♪と携帯が鳴った
添付画像はどこかのお土産屋の床
画面上1/3ほどは商品棚が写っているが、そこに寝そべって撮ったかのように床が写っていて、
商品棚の下に色んな物が落ちている写真
GPS座標と「こういう所にあることもある」のメッセージ

何がだ?
師匠はどうやってこれを撮った?
場所を調べるとそこは『カムスリ願大岩』という名所にあるお土産屋さんのようだ
古代よりカムスリ民族たちに神と崇められてきた大岩は、天にも届くほどの大きさがあり、世界遺産でもある
観光地の傍ら修行場としても有名で、宿泊施設や商業施設も栄えており、北海道といえばココ、という超名所
世界各国から様々な学者が来ているが、この大岩がなぜ、いつからここにあるのかなどは分かっていないらしい
ここは私もいつか行きたいと思っていた場所だ
写真でしか見たことは無いが、山とも見間違えるカムスリの大岩はおいそれと登れない分富士山よりすごい、らしい

すぐに行こうとしたのだが、さてこの時点で既に日はすっかり落ちていて、辺りは真っ暗
知らない街の知らない公園に取り残されている状態である
ここからカムスリの地はそれほど遠くは無いものの徒歩では無理だし、お腹がすいている
東京駅の団子が食べたい
とりあえず出来るだけ近くに泊まって、朝大岩に行こう

なぜか寝る前に「おやすみなさい」と気軽にメッセージを送ってしまう自分

朝になり、早速カムスリへ向かう
例のごとく夢の中では場面転換が頻繁に起こり、
食事のシーンがカットされているので、食べた設定なのにまだお腹はすいている
(こういう時はだいたいリアルにお腹がすいている)


カムスリ願大岩
視界を全て遮り、高さは雲を突き抜けまだ高く、長さは霞んで見えなくなるほど遠くまで断崖絶壁が続く巨大な岩
巨大すぎる
これじゃ飛行機は通れないしヘリコプターでも怪しい
ギアナ高地を灰色で塗りつぶし100倍にしたかのような絶句する大きさである
宇宙から見たらどうなっているのだ
デベソみたいに飛び出ているのか?それともチョンマゲのように乗っているのか?
これが一枚岩だって?
岩のふもとにあるお土産屋にたどり着く前に、遠景でですら圧倒される光景だ

驚きと恐ろしさで開いた口が塞がらないまま目的のお土産屋を探す
そこは屋台村のようにたくさんの店が軒を連ねており、
食べ物や民芸品やいろんなものをそれぞれが売っている
朝からお客さんも多く、とても賑やかだ
スープに浸かった小籠包のような椀物や、おしるこに似た甘い香りのする豆料理、
大きな栗の形をした焼き菓子や『カムスリまんじゅう』的なお菓子
蔦や鳥や花を模した複雑な民族柄の刺繍の鞄や服、人ともトカゲとも取れる不思議な形をした置物
まるで異国のような雰囲気がある

いくつか手に取り、食べたりしながら屋台村を散策し、ようやくお目当てのお土産屋を見つけた
そこは民族衣装やこの地域に昔からある玩具を売っていて、
写真の棚は屋台の隅っこ、値下げされた商品が積み重ねられている場所にあった
この下に何があるのだろう?
覗き込み手を伸ばしてそこにあるものをズルズル引き出した
それは、何だかとってもカッコイイバッグだった
特殊に加工された布のようで、焦げ茶の皮のような色と光沢があり光にかざすとうっすら透けている
分厚いキャンバス地のようなゴワついた固い感触だが、
それがしっかりとバッグの形をキープしてくれるので、底板を入れなくてもペチャンコにならない
デザインは今使っているものと似ている気がする
お土産屋にあるものとしては格段に実用的
ていうかむしろ、これは正しく私が欲しかったバッグだ
しかも値下げされてるだって?掘り出し物じゃないか!
「こういう所にあることもある」って、こういう事?

もちろん買って使ってみる
師匠に選んでもらった気がして嬉しい
さらに同じ素材で出来た新品のナイフケース、キーケース、あとよく分からない置物も追加で買った


予期しない掘り出し物にほくほくしていると、
屋台村の道が終わり、とうとう大岩へ続く細道へ出た
舗装もされていないゴツゴツとした土の道
道幅は1メートルほどで蛇のようにうねっており、岩の根元にある社のような建物に続いている
その途中途中で道が丸く膨らみ小さな広場のようになっていて、
そこで何人かの人が立ち止まって話をしている

最後の道の膨らみに、師匠がひとりでぽつんと立っていた
「まさか待ってて下さったんですか?すいません、ありがとうございます」
慌てて駆け寄ると師匠は
「ここからはヒントは無しです」
と大岩に向かって歩き出した

大岩は近くで見ると目の前全てが灰色ででこぼこの大壁だ、全貌なんてまるで見えないほど
あちこちに大小様々な形や色の社や祭壇のようなものがあり、
しめ縄や鳥居や仮面やら十字架やイルミネーションやらポスターのような張り紙や花輪や金属の円盤のようなもの、
色んな物が色んな言語で飾られている

カムスリというのはこの地域の古い名前で、それが民族や大岩の名前にもなっているのだけど、
もしかして世界中のあらゆる宗教や民族や国民がここに神を見出して崇め、願をかけに来ているのだろうか
見るとそこにいる人達も何一つ統一性がなく、老若男女服も人種もバラバラだ

大岩に触れる
感触は石やそこらにある岩のように乾いてザラザラしているが、
爪を立ててもひとつも崩れそうにないくらい締まっている
ガラス質ほどでもないけれど、砂岩や粘土より遥かに固い
古い古い木の机のような
木の化石ってこんな感触だろうか
なぜか安心するその手触りに、ペタペタと岩を撫でていく
冷たい所と温かい所があるのに気付いた
冷たい所は適度にひんやりしていて頬ずりをしたくなるほど
温かい所は地中の熱と響きを伝えるがのごとく微振動している
ズシン、ズシンと手のひらに響く細かな鼓動が心地良い

「わかりますか?」
師匠が言う
「これは生きているんですよ」
大岩は生きている
もしかしたら岩ですらないのかもしれない
ここにあったのではなくて、ここに生えている?
怖くなってきて大岩から手を離す
「もしかしてここまでに見てきたものは全て繋がっているのでしょうか?」
「もちろんです。繋がっていないものなどありません」
分かるような分からないような
でもなんとなくうっすら思っていた繋がりはたしかにあるような無いような

「なのでここで旅は終わりです。おつかれさまでした」
師匠は来た道ではなく、岩の方へと歩いていく

私はまた東京へ帰らなければ
ええと、ここまでどうやって来たのだっけ…
どうやって記事にするのだっけ…
考えながら携帯を見ると圏外だった

ああ、メール送れないからか
師匠は律儀だなぁ、優しいなぁ
と思いながら目が覚めた


この後に師匠の2020お誕生日おかげさまが来たので、
私はとても嬉しかったです

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