スタートアップに誘われたときに条件交渉しておかないと、後で激しく後悔することになること

「うちに入社してくれれば、ストックオプションを出す」
と言われた。

しかし、ストックオプションをもらうことに、どれくらいの意味があるのか?

もし、ストックオプションに意味があるなら、
条件交渉では、具体的に、何株の
ストックオプションを要求すべきなのか?

「株式を購入するより、
ストックオプションの方が得だ」
と言われたが、これは本当か?

こんな感じの相談を、友人知人から、ときどき受けます。

なぜ彼らが僕のところに相談に来るかというと、
彼らは、僕が何度か起業し、そのうち一社が上場したのを知っているからです。
また、僕の友人知人に、スタートアップをやっている人が多いのを知っているからです。

それに、僕は、友人知人のスタートアップ企業の人材採用の相談に乗ったりもしています。
ヘッドハントの手伝いもしているわけです。

というわけで、
ぼくが、スタートアップからヘッドハントをかけられた友人知人に話して、
実際に喜ばれたことを、テキストにまとめてみました。


まず、「生株よりも、ストックオプションの方が得だ」というのは、
大ウソです。

※生株とは、株式のことです。お金を払って、その会社の株式を購入することです。「将来的に株式を購入する権利」であるストックオプションと「実際に株式を保有すること」を区別するために、「生株」と呼びます。

実際には、ストックオプションよりも、生株の方が、圧倒的に得です。

理由はたくさんあります。

まず第一に、ストックオプションは、しょぼい金にしかならないことが、すごく多いです。

なぜかというと、入社時に「ストックオプションを与える」という約束がなされますが、
「具体的に、何株のストックオプションを与えるか」が決まっていないことが多いからです。

上場しても300万円にしかならない株数のストックオプションだったとしても、
会社としては、「ストックオプションを与える」という約束は、
果たしたことになります。

カイジの利根川さん風に言うなら、
「今回  まだ株数までは指定していない  そのことをどうか諸君らも思い出していただきたい  つまり・・・・我々がその気になれば、1株ということだって可能だろう・・・・・・・・ということ・・・・・!」

じゃあ、「具体的に何株のストックオプションをもらえるか」を、
入社時に決めておけばいいのかというと、
それは、なかなかうまくいきません。

まず、スタートアップを立ち上げたばかりの時点では、
会社側は、ストックオプションの具体的な株数を決めたがりません。

なぜかというと、実際に誰が会社にとって重要な戦力になるか、
雇う時点では、まだわからないからです。

会社としては、しばらく働いてもらった後に、
この人は重要だ、ということが判明してから、
その人にストックオプションを与えたいと思うわけです。

つまり、会社は、入社時の「契約金」としてストックオプションを払うようなことを言っておきながら、実際には、それをするつもりがないのです。
あくまで「ボーナス」としてストックオプションを払いたいわけです。
ボーナスとしてストックオプションを払えば、実際の現金のボーナスを節約することもできます。

つまり、ストックオプションは、実質的に、「契約金払う払う詐欺」として使われることが多いということです。

また、たとえなんとか交渉し、具体的に何株のストックオプションを受け取るかを入社時に約束したとしても、
うまくいきません。

たとえば、入社時に「10株のストックオプションを与える」という約束をしたとします。
そして会社が、株式を10分割した後に、10株のストックオプションを与えたとしたら、
実質的には、1株のストックオプションを与えたのと、変わりません。

だから、株数で約束することは、あまり有効ではないのです。

もう一つの注意点は、
ストックオプションは、厳しい行使条件がつくことがよくあるということです。
たとえば、「会社が上場したら、ストックオプションの1/2を行使できる。上場して3年後に残りの1/2を行使できる」という条件だったとします。

それで、会社が上場するのに6年かかったとすると、全てのストックオプションを行使できるようになるまでには、9年かかることになります。

しかも、途中で転職したりすると、ストックオプションが消失する契約になっているのが普通です。
何年もの間には、職場の人間関係も変わっていきます。
たとえ、すごく嫌な人が上司になって、職場に行くのが地獄のようになったとしても、ストックオプションをもらうためには、会社に通い続けなければならなくなります。
9年もの長い間には、あなたの予想もしなかった、いろいろなことが起きるのです。

さらに、

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