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【偏愛土木写真024】川全体がダム?―阿賀野川・只見川のダム群―

 皆さんこんにちは、土木写真部新潟支部のたかてぃです。今回は新潟・福島県境の阿賀野川・只見川にあるダム群についてご紹介します。

只見川の概要
 尾瀬を源流に奥会津を下る、只見川。喜多方市山都町で阿賀川に合流し、新潟県に入ると阿賀野川に名前を変え新潟市で日本海に注ぎます。尾瀬から日本海までの145㎞のあいだ、上流・中流域にダムが16あり、これらのダム群が連動して利水や発電に利用されています。只見川はJR只見線から見える美しい景色が有名ですが、付近にはダムもありこちらもぜひ注目したいところです。

只見川沿いを走る只見線(2023.1.22撮影)

ダムの計画
 日本有数の豪雪地帯を流域とする只見川・阿賀野川は戦前から電源開発計画が出され鹿瀬ダムなどダムが作られていきます。戦後、「只見特定地域総合開発計画」が策定、電源開発公社も参入し発電用ダムの建設ラッシュに入ります。

①上流域


 1951年に日本の発送電が分社化、奥只見ダムと田子倉ダムは電源開発公社が建設にあたります。

奥只見ダム(新潟県魚沼市・福島県檜枝岐村)〈関越道・小出ICより40分〉
 奥只見ダムは1954年より22㎞の建設用道路を作り凍てつく寒さのなか突貫工事で1960年に完成します。国内のコンクリート重力式ダムでは最も高い堤体を有します。

奥只見ダム(2022.10.26)
越後山脈のど真ん中にそびえたつダムは圧巻です

 現在も建設用道路は「シルバーライン」として供用され22㎞のうち18㎞がトンネルで、アトラクションのような気分を体感できます。奥只見ダムにはダムカレーが2種類、そして堤体までのモノレールや遊覧船もあり半日は滞在できます!

シルバーライン(2021.9.17撮影)
地下水により湿った路面、そして薄暗いトンネルが異世界(奥只見ダム)へと誘う
2種類のダムカレーも必見!
2種類のダムカレーも必見!

田子倉ダム(福島県只見町)〈磐越道・会津坂下ICより60分〉
 住民の移転補償をめぐり着工が遅れ「田子倉ダム補償事件」とも呼ばれる闘争が起きた田子倉ダム。ダムの建設のため会津川口駅から現在の只見線にあたる専用鉄道の敷設や国道252号(六十里越街道)の整備で会津若松~只見~小出が繋がるなど町に大きな変化をもたらしました。磐越道・会津坂下ICから60分、国道252号を進むと見えてくる。重力式ダムでは国内第6位の堤体高さを誇ります。冬は田子倉ダムの麓にある発電所まで通行可能で雪に包まれたダムを眺めることができます。

田子倉ダムから発電所を眺める(2022.9.24)
眼下に広がる山と発電所の設備の組み合わせは良きです
雪に包まれた田子倉ダム(2023.1.22撮影)
表情を一変させる冬のダム

②中流域

 福島県金山町・三島町・坂下町・喜多方市・西会津町、新潟県阿賀町には東北電力のダムが続きます。高低差を利用し、川全体がダムのように階段状に水を貯めるという考え方のもと一体的に管理されています。1951年に発足した東北電力の初代会長・白洲次郎は「東北の繁栄なくして当社の繫栄なし」を掲げ、東北地方の電源開発のためダムの整備に奔走します。その模様は道の駅かねやま内にある「奥会津水力館みお里」で学ぶことができます。

奥会津水力館みお里の展示(2022.9.25撮影)

 以下、中流域のダムのうち特にオススメしたいものに絞って掲載します。

本名ダム(福島県金山町)
 只見線・第六只見川橋梁すぐ近くにあるダム。ダムと橋梁のコラボレーションが見られます。

第六只見川橋梁と本名ダム(2023.1.22撮影)

片門ダム(福島県会津坂下町)
 阿賀野川との合流前の最後のダム。磐越道・只見川橋のすぐ近くにあり、堤体からはカーブを描く磐越道を見ることができます。

片門ダム堤体から磐越道・只見川橋梁を見る(2022.8.21撮影)

鹿瀬ダム(新潟県阿賀町)
 1928年竣工と阿賀野川水系で最も古いダム。20門あるゲートがズラリと並ぶ様子は圧巻です!

鹿瀬ダム(2022.7.2撮影)

おわりに
 只見川・阿賀野川には戦前~戦後にかけて作られたダムがいまも現役で、それらが連携して利水や発電に使われています。豪雪地帯というマイナスな条件を逆手に取り電力開発に利用しようとした先人の思いに触れる旅はいかがでしょうか。

 ダムめぐりの最後には温泉、ということで鹿瀬ダムの近くの日帰り温泉をご紹介します。「かのせ温泉 赤湯」は鹿瀬ダムから車で3分ほど。58℃の源泉かけ流しのあっつい温泉で体もポカポカ?鹿瀬ダム・豊実ダム・揚川ダム(いずれも東北電力管理の阿賀野川にあるダム)の写真を提示するとここでダムカードをもらえます。

かのせ温泉 赤湯
ダムカード3枚とカードフォルダー(期間限定?)をゲット

文・写真:たかてぃ
この春、就職して川崎から新潟へ移り住む。休日は県内のインフラ巡りに没頭中。新潟配属中に県内の全市町村(平成の大合併前の単位)の訪問、県管理の20ダム制覇が目標。新潟にお越しの際はぜひお声がけください!