わが投資術 市場は誰に微笑むか

著者:清原達郎 / 出版:講談社 (2024/3/1)

《目次》
■第1章 市場はあなたを見捨てない
間違っても損をするとは限らない 正しかったら儲かるとは限らない/投資のアイデア=株価に織り込まれていないアイデア/すべての情報にはバイアスがかかっている/情報収集に金をかける必要はなし/投資家は相場に勝てるのか/パッシブ運用vs.アクティブ運用 ほか
■第2章 ヘッジファンドへの長い道のり
野村證券入社──抱いた「強烈な違和感」/損をする個人投資家のパターン/北尾吉孝氏に救われる/軍曹/「腐れ玉」の行方/「ロング・ショート運用」の夜明け ほか
■第3章 「割安小型成長株」の破壊力
実は役に立たない「PBR」/キャッシュニュートラルPERの問題点/「1段階モデル」は低PER株に有効/金利が上がると、高PER株は不利?/「イメージの悪い業界」こそチャンス/バリュエーションの梯子を上る/資金100万円で「割安小型成長株」投資/「成長株投資」と「バリュー投資」の違い/マザーズ(グロース)は「最悪の市場」/「トレンドフォロワー」と「コントラリアン」 ほか
■第4章 地獄の沙汰は持株次第─25年間の軌跡
K1ファンドの運用スタイルの変遷/ファンドのパフォーマンス ほか
■第5章 REIT─落ちてくるナイフを2度つかむ
まさかのIPO「20億円分」当選/リーマンショックとREIT暴落
■第6章 実践のハイライト─ロング
■第7章 実践のハイライト─ショート・ペアートレード
個人投資家には個別銘柄のショートは勧められない/ショートの分散投資はおろかな行為/日経225指数の闇/ようやくわかったショートの勝ち方 ほか
■第8章 やってはいけない投資
ESG投資はナンセンス/未公開株は決して買ってはいけない ほか
■第9章これからの日本株市場
10年以内に起きる破滅的リスク/今後の日本株を取り巻く環境「8」の予想/縮小を続ける内需/日本株ショーテッジ時代の到来 ほか

紀伊國屋サイトより

清原 達郎:
1981年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業。同年、野村證券に入社、海外投資顧問室に配属。 スタンフォード大学で経営学修士号(MBA) 取得後、86年に野村證券NY支店に配属。91年、ゴールドマン・サックス東京支店に転職。その後モルガン・スタンレー証券、スパークス投資顧問を経て、98年、タワー投資顧問で基幹ファンド「タワーK1ファンド」をローンチ。
2005年に発表された最後の高額納税者名簿(長者番付)で全国トップに躍り出る。 23年、 「タワーK1ファンド」の運用を終了し、退社。 本書ははじめての著書である。

本書の著者紹介文より

下記、本書からの引用

現実的には「大勢と同じ考えやポジションを持っていると間違ったときに大損しやすく、少数派の考えやポジションであれば間違っても損失が少ない」ということなのでしょう。平たく言えば、「自分の考えはみんなと同じ」なら投資のアイデアにはなりません。「自分の考えはみんなと違う」時に投資のアイデアになるのです。
そんな投資のアイデアを市場は歓迎し貪欲に取り込もうとします。市場があなたに冷たい態度を取るとしたら、あなたが「自分でよく考えずに大衆に迎合したとき」だけです。
勘違いを防ぐために申し上げますが、「みんなが強気で私も強気」だからその他大勢と意見が同じとは限りません。
大多数の投資家が「A社の株はこれから5年間、年率10%増益で行けるので強気」だと思っているとしましょうか。それに対し、あなただけは同じ強気でも「いや、30%増益で行ける」と思っているのなら、あなたは少数派であり、立派な投資アイデア(買いのアイデア)になります。

18-19

「投資のアイデアを探す」ということは「株価に織り込まれていないアイデアを探す」ということです。もともと少数派だった自分の考えやポジションが「実は多数派になっていた」ことを発見した時は、何らかのアクションを取ったほうがいいかもしれません。大きなリスクを抱え込んでしまった可能性がありますから。個人投資家が少数派でいることのメリットは「株式市場の売買手数料がとても安い」ことにも支えられています。自分だけが開違った判断をして、その誤りに気づいて反対売買をしても取引コストがとても低いのでほとんど損をしないのです。

20-21

私の結論を簡単に言えば、「投資家はマクロで勝つのは非常に困難だが、ミクロでは勝てるチャンスが多い」ということです。マクロとは日経225、為替、金利のように経済全体にかかわるような指標のことです。ミクロというのはその逆でさっきのレストランの例を思い浮かべてください。
私が証券会社に雇われて「日経225先物を売り買いして稼げ」と言われたとしましょうか。1ヵ月以内にクビになると思います。為替のディーラーとして雇われてもすぐクビになるでしょう。明日の相場がどうなるかなんて私にはまったくわかりません。
もちろん、いついかなる時も株式相場全体の動きがまったく予想できないわけではありません。市場が合理性を失ってしまうまれに起きるパニック売りの時などは日経225株価指数先物や大型株の売買で儲ける瞬間的なチャンスはあるのです。
我々のファンドでも、国債の先物をショートしてけっこう儲かったことが一度だけありました。でも、「今日、国債の先物は売りか買いか?」と聞かれても見当もつきません。為替、株式市場、国債のような大きな市場(マクロ)では相場の予想は通常は不可能なのです。日経225先物を毎日売り買いしている個人投資家は長い目で見るとたいして儲からないと思いますよ。

41-2

ヘッジファンドに投資を考えておられる方はリスクについても心配でしょう。日本株のロング・ショート運用に関しては、「相場の上昇時だけではなく、下落時も儲けます。相場が上がっても下がっても安定的なリターンを稼ぎます」というピッチで投資家にアピールします。我々もそうでした。
しかし、我々の経験だとヘッジファンドの運用にはリスクが伴い、パフォーマンスは安定しません。ヘッジファンドはリスクの高い投資だと投資家も運用者も認識すべきでしょう。
一方で、昨今のヘッジファンド(というかヘッジファンドに投資している機関投資家)は月次のリターンのブレを気にしすぎる傾向があると思います。2ヵ月連続でマイナスのリターンだと「イエローカード」だとか。最近、何人かの日本人のロングショートマネージャーに会いましたが、顧客である機関投資家の「安定的に儲ける」という無茶な要求のためにリスク管理にエネルギーを取られ過ぎてしまっていて、その豊かな才能が無駄になっていると思いました。
ヘッジファンドがリスクを減らすために一番いい方法は大儲けすることです。ヘッジファンドの運用とはリスクを取る仕事です。リスクを減らす仕事ではありません。リスクをヘッジしてたら、しまいには円ベースではリターンはゼロ近くになります。ある月に20%儲ければ、次の2ヵ月間がマイナス1%ずつでも問題ないのです。ある年にパフォーマンスがプラス100%なら次の年はマイナス10%でもいいのです。
断っておきますが、過去のリターンが安定していたからといってそのヘッジファンドがリスクの少ない運用をしているとは限りません。ボラティリティー(過去の基準価格の変動)をリスクと勘違いしている金融関係者が多すぎます。そもそも毎月のリターンを安定させるにはdeep out of the moneyのオプション(ストライクプライスが今の株価を大きく上回るコールオプション、もしくは大きく下回る場合のプットオプション)を売るのが一番楽です。リーマンショックみたいなことが起きれば破綻しますが(※強調引用者)、平時では毎月安定した綺麗なリターンとなります。

86-7

株式市場の誤謬のかなり多くの部分は、この「割安」という言葉を定義なしでいい加減に使っていることによる誤解や矛盾に由来します。

96

割安小型成長株投資の「破壊力」
ここまでは「割安株」の定義の話をしてきましたが、ここからが本題です。我々が「小型株」投資に傾注してきた理由は以下の通りです。

1.割安株が多い
2.独自のリサーチがしやすい
3.機関投資家が持っていない
4.アナリストがカバーしていない

我々の戦略は割安小型株の中から「割安小型成長株」を探すということです。手間はかかりますが、これが日本の株式市場で一番儲けやすく、しかも大きく儲ける方法です。数は少ないけれど「成長株が割安小型株の中に紛れ込んで」いて、株価がとっても安く放置されていることがあるのです。
我々が言う小型株とは、先ほど定義した時価総額500億円未満の株式のことです。店頭登録株(1998年12月以降はジャスダック株、今ならスタンダード株)をイメージしてください。我々は、割高な株が多いマザーズ市場(現在のグロース市場)はほとんど相手にしてきませんでした。

121-2

小型株が割安である理由
小型株をPERとPBRだけで大型株と比較して割安だと結論付けることはできません。なぜなら、小型株には低PER、低PBRである正当な理由があるからです。
まず挙げられるのがその流動性の低さです。流動性が低いので機関投資家の投資対象になりにくい、従って株価が安い。これは誰にでもわかるでしょう。
しかし、低PER、低PBRで評価されている正当な理由は、他にもまだ可能性としていくつかあります。

1. 大企業の下請け的な仕事をしていて「価格決定力」がない
2. 参入障壁が低い
3. 優秀な人材がいない
4. オーナー経営者の息子(次期社長)がバカである
5. 世の中の関心が薄いため経営者が不祥事を起こしやすい
6. TOBしにくい株主構成になっているので経営者が堕落しゃすい
7. 粉飾決算があった時にダメージが大きい
8. 海外に進出するだけのリソースがない
9. 株を相続する時のために(相続税を安くするために)できるだけ株価は安いほうがいいとオーナー社長が思っている
10. オーナー社長が引退する時に莫大な退職慰労金が支払われることがある
あくまでも可能性の話ですが、こうしたリスクが小型株にはあるのです。

125

人気のないセクターの代表として中小の不動産会社の話をしましたが、ほかにもイメージの悪い業界はあり、往々にしてそこに面白い投資機会が隠れています。
家具のニトリなども以前は人気がなかったんですよ。景気がどん底の北海道銘柄ということで。家具という市場自体が魅力的なビジネスではないですからねえ。ニトリの株価が10倍になって我々は売りましたが、日本の家具市場の規模はその間に半分になりました。業界としてみれば最悪だったわけです。人材派遣業も胡散臭い目で見られていたので「UTグループ(第6章で後述)」のような成長企業を機関投資家は見逃しました。
ほかにも例を挙げるなら、我々は長い間「上村工業」の株主でした。この会社は超ハイテクな優良企業です。しかし、「メッキ」の会社というイメージ(下町の汚い工場で金属をメッキ液にドブづけしているようなイメージ)が強くて、我々が投資し始めたころはPERが低かったのです。
こうした成長性がないと思われている業界やイメージの悪い業界からぜひ成長株を探してみてください。割安なら、業績が横ばいの会社でも少しは儲かる確率が高いし、成長株を当てれば株価は何倍にもなりますから。

小型株の成長性は「経営者」が9割
では、長期的な成長性を見抜くにはどうしたらいいでしょうか? いくつかのポイントを示します。

1.経営者がその企業を成長させる強い意志を持っているか
要条件)
2.社長と目標を共有する優秀な部下がいるか
3.同じ業界内の競合に押しつぶされないか
4.その会社のコアコンピテンス(強味)は成員とともにさらに強くなっていくか
5.成長によって将来のマーケットを先食いし、潜在的マーケットを縮小させていないか
6.経営者の言動が一致しているかどうか

この中で圧倒的に大事なのが1.です。これだけはホームページや社長の発言などで絶対確認すべきです。ただ、社長が口で「成長します」と言っていても、どこまで本気なのかは簡単にはわからず、判断が難しいのも事実です。

127-8
本書136頁

ネットキャッシュ比率はホームページに決算短信が載っていますから、それでチェックできます。ネットキャッシュ比率の高い会社のPBRは必ず低いのですが、逆にPBRが低いからといってネットキャッシュ比率が高いわけではありません。資産に占める固定資産の割合が高いとネットキャッシュ比率は低くなります。それは決算短信を見ればすぐわかります。
それで買ったら、3年間ぐらい(場合によっては5年とか)はその株を持つ。その間は四季報、ホームページでたまにフォローします。
大事なのは、業績が伸びてきて株価が3割とか上がってきた時すぐ売らないことですね。割安小型株が儲かる理由はここなんですよ。PERが5倍の株を買うと仮に業績が横ばいでも3割上が6.5倍でしょ?まだ強烈に割安なわけですよ。売ってしまうとホームランは出ませんから。
もちろん成長株だと思って買ったんだけど全然違ったわ、といケースなら3割上がって売るのも「あり」だと思いますけど。それをどこで見極めるかは難しいのですが、あえて言えば「大い和感」を感じたときでしょうかねえ。
「マンダム」を成長株だと思って買ったことがありましそれは間違いだと気づいて売りました。でも、売ったとき〔損はしなかった〕

141

二つ目は「最初の銘柄選びの際に真剣に考える」ということです。真剣に考えたアイデアだと「あれだけ自信があったのに何でダメだったんだろう?」と後で考えるからです。それが「学ぶ」ということです。最初の銘柄選びが適当では失敗してもほとんど学べません。だから失敗を恐れないでください。学び続けていけばだんだん「勘」もついてきて銘柄選びも上手になっていくでしょう。
10銘柄と申し上げましたが別に7銘柄でもかまいません。ただ、1銘柄や2銘柄だと儲かる感覚がわからないのですよ。2銘柄とも儲かってしまうと「俺は株の才能があるかも」なんて思うかもしれないですからねえ。これはとっても危険なことです。株式投資に「才能」とかありませんから。10銘柄あれば儲かる銘柄もあれば儲からない銘柄も出てくるはずなので、相場の感覚が磨かれやすいと思います。
いいですか、もう一度言いますが「株式投資の才能」なんてありません。あるのは「自分の失敗からどれだけ学んだか」だけです。

144

PERが低い割安株への投資の場合は、前にも説明した通り現金がどんどん積み上がってきますから、ネットキャッシュで見た時の割安さはどんどん増幅してきます。その分、後で大きく値上がりするポテンシャルも増してくるのです。
一方で、PBRが低い割安株への投資では、今後もPBRが低いままで推移して株価は上がらないかもしれません(先に説明したバリュートラップ)。
そのような場合、投資家が会社側に「固定資産を売却し、配当を増やすよう」圧力をかけ、それが実現できれば株価は上昇するかもしれません。
企業の価値を株価に反映させるように経営陣に圧力をかけていく投資家のことを「アクティビスト」と言いますが、低PBR銘柄に狙いを定めたバリュー投資はアクティビストこそやるべき投資方法だと言えます。
我々は投資先の会社に圧力をかけることはあまりやらなかったのでバリュー投資家としては中途半端だったと思います。だから低PBR銘柄に的を絞ったバリュー投資はやってきませんでした。我々のようにPERと「ネットキャッシュ比率」に頼るのは楽なのですが、それでは資産価値を正しく査定し、割安株を発掘する本格的なバリュー投資家と言えないでしょう。私は「究極のバリュー投資家はアクティビストである必要がある」と思います。

148

例えば、ロングのアイデアで調査中の会社があった時、「7割方は行けそうだな。でももうちょっと調べよう」という段階で株式相場が暴落しての株も大きく下がったとしましょうか。下がった分、株価が上昇するポテンシャルが大きくなったわけだから当然買うべきです。前にも書きましたが期待リターンが大きければ、その分リサーチは大雑把でも許されるということです。十分なリサーチなんて我々プロでも無理ですよ。そんなことをしていたらチャンスを逃してばかりで運用になりません。

ベイジアン的発想
我々はいくつかの銘柄に対して「この銘柄はロングにしたい。ショートにしたい」というアイデアを常に持っています。そのアイデアの確実性は日々の情報が加わることで変わっていきます。世の中で確実なことは多くありません。私たちは「おそらくこうだ」という漠然とした確率を前提に暮らしています。

159

株式投資の世界で、確率が数学的に定義できることなどほとんどありえません。株価の動きを数学的に処理して超過リターン(アルファ)を上げようとする、いわゆる「クウォンツ運用」の試みは、全部ではないにしろおおむね失敗してきました。

176-7

K1ファンドの運用スタイルの変遷
…特にひどかったのが相場の反転時です。 反転時には株価指数先物、特に日経225の先物が買われることが多くなります。 だから日経225採用の大型株から上がっていき、通常、小型株は大きく遅れますし、しばらくまったく上がらないことさえあります。

180-1
本書182頁

2020年2月、コロナウイルスが蔓延し始め、相場はじり安となっていました。そして3月19日木曜日午後2時、ついに相場の底が抜けました。パンデミックの恐怖がパニックを引き起こしたのです。バケツに大きな穴が開いたように一気に大量の株が投げ売られました。
私は理屈抜きで「最大のチャンスがやってきた。これはラッキーだ。買えるだけ買おう」と本能的に動きました。人類がどんなに悲惨な目にあおうが、相場がそれを織り込んで暴落したら「買い」しかないのですよ。極端な例でいえば、小惑星が地球に衝突して地球が滅びるかもしれない時、ショートして実際に地球が滅んでも意味はないでしょう。全員死ぬので。でも、安値でロングしとけば軌道がそれて地球が助かった時、株価は何倍にもなって大儲けできます。日本が核攻撃を受けた場合でもショートではな<ロングが正解です(もちろん株価が大きく下がっていればの話ですよ)。

207

私が昔読んだ「米国海軍史」の本に米国の駆逐艦隊の司令官が残した言葉として「有能な司令官と月並みな司令官の違いはたった10秒ほどだ」とありました

209

メガバンクを買った理由
では、フィンテックにシェアを取られそうなメガバンク株買ったのか?それは以下の理由からです。
1. メガバンクのマネジメントは自行の株価が安すぎると思って
いて何とかしたいと考えている。 1990年代に株主に迷惑をかけたこともまだ覚えている。だから増配、自社株買いが期待できる。
2. 金融というのは安全・信頼が一番大事だ。小口はフィンテックに移っても大口はそう簡単に移らないだろう。
3. 銀行業界は、低金利により預貸利ザヤが圧縮されていて全体として苦しいがメガバンクより地銀のほうがより苦しい。地銀の中には追い詰められているところもある(もちろん余裕のある優良な地銀もいっぱいあります)。地銀の破綻を防ぐために銀行業界にとってネガティブな政策はとりにくい。黒田総裁が辞める前に10年国債の金利の誘導目標を上限0.5%に引き上げた。「円安によってもたらされるインフレへの懸念」が理由だと一般に解釈されているが、悲鳴を上げている「地銀の救済」という意味合いも大きかったのでは。
4. 金利は今が底。これからは上がるしかない。ただ短期金利は日本の住宅ローンのほとんどが変動金利であることを考えると上げづらい。金利が上がるとすると長いほうが(10年国債利回りとか)上がっていくだろう。つまり順イールドを保ちながら上がっていくので銀行業界にとっては理想的。

3番目の地方銀行の話は皆さんの想像より重要かもしれません。大方の投資家にとって「地銀なんかどうでもいいわ。まったく興味なし」ってことなのでしょうが、田舎に行くと地銀の存在感は大きいのですよ。だいたい地銀の頭取は地元の自民党の代議士と入魂の仲ですし。代議士の秘密口座があるとすればメガバンクとかじゃなく地銀でしょう。

213-4

未公開株は決して買ってはいけない
詐欺の中でも圧倒的に数が多いのは「未公開株詐欺」だと思います。事件化するケースがほとんどないので膨大な数の詐欺が行われているのではないでしょうか。投資のプロだと自任する私でさえ未公開株欺に引っ掛かりかけたことが何回かあります。未公開株詐欺は日常的にある詐欺です。他人事だと思わないでください。特に株式投資で成功された個人投資家は気を付けるべきです。
世間にばれるとほぼ確実に詐欺師は近寄ってきます(一番危ないのは「信頼できる友達」が紹介する案件です)。
上場会社は、上場に際して主幹事証券の審査があり、その審査を通った会社しか上場できません。そのため、詐欺的な上場会社はあるにはあるのですが数はとても少ないのです。
一方で未公開株は基本中身が何にもわかりません。未公開企業に投資するためにはベンチャーファンドのようにデューデリジェンスを行う部署が必要です。それがなければ、未公開株は闇です。
個人投資家は「未公開株」など決して買ってはいけないのです。未公開株に投資させて集めた金が消えてなくなっても投資家はなすすべがありません。

292-3

縮小する市場では、経営統合を進めていくスピードが市場の縮小より早ければ株式投資で儲かる可能性はある程度はあるのです。もちろん需要が減り続ける業界には迫力のある成長株はほとんど生まれません。ただ経営統合してシェアを上げた会社が増配を続けたり自社株買いをしたりすれば株価が上昇するチャンスはあります。需要が縮小する業界では株価の評価は総じて低いでしょう。だからその中で上手に立ち回れる企業を探せば株式投資は成功です。

305

この大きな消費者余剰を取り込む動きはもうすでに存在します。要するに一物一価にならないようにサービスを少し変えたりすればいいのです。芸能界や野球のファンクラブ、ディズニーランドの「プレミアアクセス」のチケット、予約のタイミングで価格設定を変える航空機チケットもそうです。

307

感想:以上は本書の中で目に留まった箇所の引用である。タワー投資顧問については20年ほど前に知人から存在を知らされ、ウェブサイトで売買動向がある程度公表されてもいたので、それらを閲覧することはあった。

本書は概ね好評で迎えられ、とりわけ株式投資家からば絶賛コメントを見かけるが、本ブログ著者は異なる感想をもった。

余談:ところで、本書によると著者は野村證券出身で、著者が本社の事業方法について、顧客に損をさせて会社が儲ける仕組みになってると違和感を抱き続けたことが、ヘッジファンド設立に向けた動機になったのだという。(本書第2章の著者記述による)

さて、本書のなかで、清原氏はその出身母体である野村證券について、「いくつかの不祥事を乗り越え、40年前の 『準詐欺組織』 から 『コンプライアンス重視の世界を代表する超優良企業』へと見事に変身し」たと褒め上げ、以下のよう書いている。

〔数年前、今の野村證券の姿が知りたくて、IRにお願いし〕支店の営業マンに会わせてもらいました。 若くて優秀そうな営業マンと話しましたが、 おそらく支店のトップセールスマンだったのでしょう。いろいろ話した後、彼はこう言いました。

「清原さん。 営業の本質は『人間力』 ですよ」

そう言われてもよくわからないので、その「人間力」について根掘り葉掘り聞いたのですよ。 結局、 完全には理解できなかったのですが、どうもこういうことらしいのです。

「客が大損しても訴えられないしクレームにもならない。むしろ『お前と付き合えてよかった』 と言ってもらえる。これが人間力だ」

私はとても感動しました。 「素晴らしい。 野村證券は人材の宝庫なのかもしれない」 と思いましたねえ。

支店長が大損している顧客を見つけて担当セールスを呼びつけ、
「お前の客これだけ損してクレームにならないか?」
「大丈夫ですよ。 このババア完全にボケてますから。ほら、私このババアのハンコ持ってるんですよ。 手数料足らない時は私に声かけてください。 いつでもペロ切りますから(売買手数料稼ぎますから)」
「頼もしいなあ。 よくぞ言ってくれた! 期待してるぞ!」
なんていう会話は40年も前の話です。

今の野村證券なら万が一大損しても「人間力」 のある立派な営業マンに出会えれば安心かな余生を過ごせるかもしれません。

(※強調・改行は引用者による)

91-92

また、この記述の直後に著者は以下のように書いている。

1990年代に起きたヤクザ事件、 総会屋事件で旧経営陣が一掃され、野村證券はコンプライアンス重視の超優良企業になりました。 しかし、最近でも多少の不祥事は起こしています。 まあ取るに足りない些細な不祥事ですが。
それに文句を言いたいわけではありませんが、 ちょっとだけ引っかかっているのです。
2012年の増資インサイダー事件(公募増資の情報を事前に顧客に知らせる)と2019年の上場基準情報の漏洩事件についてです。私のところには野村證券からそういうインサイダー情報は一切来ませんでした。 結果的には巻き込まれずに済んだのでよかったのですが、 「我々は野村證券にとってはゴミみたいな存在なのか」と思いましたねえ。 大手の客とは扱いがまったく違うんだと。

(※強調・改行は引用者による)

93

著者の思い描く野村證券の姿と、著者が同證券に期待するあり方について、何が根本的に変化したというのか、上記の記述からは本ブログ著者は理解できなかった。

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