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心地のよい気味悪さ

お久しぶりです。
本日の作業曲は、波乗りジョニーでお送りしております。

先日、久方ぶりの宝塚観劇をしてまいりました。
大好きなインド映画、「RRR」の舞台化と聞いてもうわくわくが止まらず。
冒頭でマッリの村の子守歌が流れるとともに全身に力が入り、ああ、これだ。この瞬間を待ちわびていたんだと。

お芝居も楽曲も宝塚の世界観を持ちながらも、やはりそれはRRRで。
ナートゥが来るぞ、、、!というあの瞬間は、たまらなく心が躍って仕方がないくらいでした。

そんな私ですが、本日言いたいことは大きく分けてふたつ。

・美しく逞しい、イギリス人ジェニーという女性像

私といえば、大の美女研究好き。
メイク、ファッション、立ち居振る舞い、マインド、すべてにおいて「美しい」と感じたことを文に残すのが本当に楽しくて。

大人になってからは、高慢で自信家で誰からも愛されて、けどその生活をちょっぴり退屈に感じているような、わがままお嬢様のようなキャラクターが愛らしくて大好きなんです。

そして、男性を支え、寄り添うヒロインよりも、スカーレット・オハラやアムネリス、グィネヴィアのような、自らの力で未来を切り開くような女性が大好き。

RRRのジェニーは、プリンセスを初めとする、お手本のような「清く正しく美しいど真ん中ヒロイン」。映画とは異なるエンディングでしたが、そこもまた強く惹かれました。

舞空瞳さん演じるジェニーは、シフォン生地やオーガンジー、小花柄、ピンク、日傘、パステルカラーの自転車が似合う若いイギリス人女性。
落ち着いたブラウンの髪をふんわりとまとめ、品のある佇まいと花の咲いたような笑顔が本当に魅力的です。動作もプリンセスでかわいい!
初めて宝塚を見たときを思い出すような、愛らしいザ・娘役のようなファッションも素敵。

しかしその愛らしい見た目に反して内に秘めた芯はとても強く、

理不尽な迫害や曲がったことが大嫌い。
自分の納得できないことにはきちんと声を上げる。
どんな相手にでもひるまない。
友人を大切に思う心持ち。
兎にも角にも行動。

「自分にできることは何か」を大切に生きる女性。
先程述べたように、気の強い逞しいヒロインが好きだった私ですが、
もしかして、ジェニーがいちばん信念強いんじゃね?と思いはじめ。

そんな強くて逞しいジェニーだからこそ、「彼ら」の心も動かされるんだと。

何に対しても興味をもち、わくわくしたような朗らかな表情。
きちんとお礼が言えるし、相手の気持ちをいちばんに考える。
その人が何者であろうと関係なく、自分らしくいられると思える人を大切にする。

まだまだ言い足りないですが、ジェニーのまっすぐな美しさには、胸を撃たれます。

舞台エリザベートで「エリザベートの美貌が国を救うなんて」(ニュアンス)と民衆が歌う場面がありますが、私はあながち間違いじゃないと思っていて。

美しい女性の訴えって、なんだか説得力があるんですよね。
そして行動力が伴うことで相乗効果を生み出す。
まっすぐな思いや強い信念に心が動かされる。
処刑場でのビームの歌と似たものを感じるような気がします。

ジェニーの纏う愛らしい雰囲気と、逞しい信念のギャップに、またひとりこうして心を動かされたのでした。



・ショー「ヴィオレトピア」について

美しく泥のような夢の後遺症

本当に言いたかったのは、ヴィオレトピアについての感想なのでした。
基本膨大な情報量と組子たちの圧倒的美に振り回されているので、大した解釈はできませんが、お手柔らかに願います。

初めてこのショーを見たときは、もう何が何だか訳が分からなくて。
あれ、これ、そうか。ショーか。と何度か自我を保たないと置いてけぼりになるような。もう本当に意味がわかんないですよね。恐ろしい。

冒頭のシーン、オープニングでは壮大な自然を感じるのに対し、キャバレーのギラついた都会感、中詰のリストマニア、もうまさに混ぜるな危険が多すぎる、、笑

結論からいうと、私的にはこのショーは怖さが強く、苦手。と思ったはずなんだけど、なんだか気になってしまって、あの曲ってどう解釈している人が多いんだろう。あのシーンってもしかしてこれをイメージしていたのかも、なんて日常でポコポコと感想が沸いてきて。

怖くて気味の悪い夢を見たはずなのに、あの美しさに魅せられたまさに後遺症。指田先生のいう「症候群」を痛いほど感じて、してやられました。

サーカス

私がいちばん印象的だと感じたのが、サーカス。
あのパプリカの曲じゃないですか。鮮やかな朱赤色の衣装、華やかに飾り立てたサーカス団と、小桜さんの美しい歌声、ぴったりなはずなのに、違和感がすごくて。

舞空さんの演じる少女の表情が相まって、一気にその違和感を引き立てるんですよね。純真無垢な少女との対比が本当にもう恐ろしいの。
舞空さんはあんなに不安そうな、恐怖におびえるような表情をしてるのに、小桜さんはあんなに笑顔なんだもん。

アニメくまのプーさんの「怖い夢」を見た子どもの頃を思い出しました。登場人物はみんな笑ってて、色鮮やかで、カラフルなんだけどプーさんはちっとも幸せそうじゃないの。それが本当に怖くて。

指田先生、絶対ドグラマグラとかおやすみプンプンとか、好きでしょ。

すみれの花に縋る


礼さん演じる青年が、夢から醒めたあとに必死にすみれの花に縋って夢に戻ろうとする場面が、また怖いの。
だって、ショーって私たち観客に夢を魅せる場所だと思っていたから。トップスターの礼さんが、あんなに不安そうな表情で、必死になって輝こうとする、夢を見ようとするあの姿を見せるという演出に、また恐怖を感じるんですよね。



あんなにも美しい世界観で、ここまでの違和感と恐怖を感じさせるショーは類い稀なくて。
美しい夢を魅せられた代償なのかと錯覚するような、また後からくる解釈や不安感が、本当に後遺症のようで。
後を引く気味悪さを、面白がってみたり心地よく感じてみたりできる、ヴィオレトピアという作品に魅せられ続けています。

今回、とてもマイナスな言葉を使っての文字起こしとなってしまいましたが、そのくらいのインパクトの強さであることを感じていただけたらと思います。

この感情は本当に初めてで、千秋楽を迎えた今ですら消化しきれていませんが、間違いなく多くの人を虜にする、そんな魅力たっぷりのショーであると感じています。

ビートルズの「ストロベリーフィールズフォーエバー」を聴いたときと同じような怖さ。不気味さ。後奏の不安さ。わかってくださる方もいるはず・・・

しかし、これがビートルズの中で一番好きな曲なんです。

あんなにも恐ろしいと感じた曲なのに、ふと聴きたくなる。
まさに症候群。本当に不思議なものです。


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