質問箱より:着付けの仕事をするのに資格が必要なの?無資格でも働ける?

ご質問ありがとうございます。

まず、結論から言いますと、
現状、資格は特に必要ありません。無資格でも働けます。
しかし、資格はあった方が確実に有利 です。

下にその理由を説明しますね。

まず着付師という職業に就くにあたり、例えば医師免許のようにその仕事に携わるには必ず必要とされている資格(必須資格、業務独占資格)が定められていません。乱暴な言い方をすれば、全く着物が着れなくても「着付師」を名乗ることはできますし、会社が認めれば着付師として働くことも可能です。名乗った者勝ち、というわけです。

質問者さんが挙げてくださった中で「和裁士(和裁技能士)」と「着付け技能士」は国家資格です。和裁技能資格を持っていなければ和裁技能士を名乗ることはできません。「着付け技能士」も同じです。 
しかし「和裁士」や「着付師」とは名乗ることができます。ややこしいですね。

上に挙げた2つは国家資格ですが、この資格を持っていなくても和裁や着付けを行うことは自由です。国家資格の中でも「技能検定」というものに分類されます。
この2つがなくても仕事として対価をもらうこともできます。ただ資格がなければ「和裁技能士」または「着付け技能士」を名乗ったり、その名の下で仕事することはできないよ、ということです。業務独占資格との大きな違いはここです。
例えば医師は、医療行為自体、免許がなければ絶対にできませんし、まして対価をもらうなどあり得ません。

「着付け技能士」以外の着付に関する資格は全て民間団体が独自に定めている基準によって与えられるものです。その基準は団体の考え方によるものなので大きな開きがあります。

着付の仕事自体は誤解を恐れずに言えば「着せられればいい」んです。
無資格だろうが、高等師範だろうがナントカカントカ1級だろうが、どこそこ宗家だろうが関係ありません。知識があって着せられれば認められる世界です。
仕事になるかどうかはその人の実力次第です。
これから資格を取得しようと考えている質問者さんには出鼻を挫くような話だったかもしれません。申し訳ございません。

では何故資格があるのか。
資格というものは絶対的なものではありませんが、ある程度その人の実力を推し量れる便利なものです。面接の際、無資格よりは「○○一級着付士」とか名乗れた方が採用には有利です。そのために一つあっても無駄ではないかもしれません。特に呉服屋さんの営業職や販売職を目指すなら何か名乗れた方がいいです。
中には資格保持者優先を謳うところもありますし、資格手当が出る会社もあります。

営業職や販売職ではなく写真館などで「着付師」を希望される場合には、とにかく着せられることが大事です。面接の際にテストがあるところがほとんどです。
どんなに高級な資格を持っていても、まず免除されることはありません。
経歴のある人ならば、ポートフォリオなどの提出を求められることも多いです。
この辺りの条件はアルバイトでも社員でもあまり大きな違いはありません。
呉服屋さんでしたら営業や販売と兼業することも多いと思います。
採用基準は実体験で言えば写真館やブライダル関連が一番厳しいかと思います。
舞台関連などの衣装着付けはコネと経験が必要ですのでいきなり飛び込むことは難しいかもしれません。

着付師は「着せられること」。それに尽きます。
「着せられる」というのは、「商品として価値のある着付ができること」です。
その為には着付けの技術はもちろん、それにまつわる知識や応用力も必要です。

では、それらの技術や知識はどこで磨けばいいのでしょうか。
お母様やお祖母様など身近な方が着付師である場合を除き、多くの方が授業料を払って着付学校に通い、先生に習うと思います。そしてその中で資格を得るのです。有り体に言えば、すなわち資格は「授業料を払った分の称号」です。
これは現在の着付学校の主なシステムで、嫌われる要因の一つでもありますが、ノウハウを学ぶいちばんの近道であることは間違いありません。
近年では「着付け技能士」取得に特化している学校もあります。

ここからは何かの参考になればと思い、書きます。
資格を取るとなれば、気になるのは取得までのその費用ではないでしょうか。
これも着付学校によって相場というものが決められないほど大きな差があります。目指す資格のグレードによって桁違いなこともザラです。

質問者さんが取得を考えていらっしゃる「着付け技能士」はとても良い選択だと思います。着付け関連の資格の中で流派を問わず、公平な基準を定めており、国家資格(技能検定)を名乗れるというところも魅力的ですね。
さらには、工夫の仕方でグッと資格取得のための費用を抑えられるのが大きな特徴です。その気さえあれば受験料だけで資格が得られます。

着付けの実務経験が必須な資格ですので、まずは無資格でも採用してくれる写真館や貸衣装の求人を当たってみたら如何でしょうか。
学科試験では着物の染織や歴史、産地などの知識も問われますので、より多くの実物に触れるには呉服屋さんが一番だと思います。資格の取得を目指していることを伝えれば、無資格未経験でも採用してくださるところは多いと思います。

ただ、現実どうしても基礎は必要なので、ポイントレッスンや目的別の着付けを教えてくれる学校に少しでも通ってみるのはありだと思います。中にはプロによる着付講習を設けてくれる会社もありますので探してみてください。

お伝えしたいことが多く、長文となってしまい申し訳ございません。
ここまでお読みくださってありがとうございます。

最後に一つ言えるのは、資格はなくても着付の仕事はできますが、持っていることは大きな武器になります。なので決して無駄なことではありませんし、時間とお金と情熱をかける価値は絶対にあります。活躍の幅を広げる有利なアイテムになります。よくよくご自身のビジョンと照らし合わせて選択していってください。

ご質問ありがとうございました!

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