フリタージュ・テクトニクス

先日、北海道の二つの自治体がNUMOの推進する使用済み核燃料の最終処分場の選定に応募した。また福島原発の汚染水の海洋放出も決定する見通しだという。ここに来て原子力政策は新たな局面を迎えようとしているのかもしれない。一見物腰は柔らかいが、その裏に潜む一党独裁の強行路線はまるでどこかの国を思わせるものがある。

地震や火山も多く、狭い国土に四つのプレートがひしめきあう日本は基本的に核廃棄物の地層埋設処分には適していない。おそらく最終処分場もスムーズに決定することはないだろう。

また微生物の元素転換反応によって放射能を低減化することはセシウム137などの一部の放射性元素については実験的に確認されているが、ウランやプルトニウムなど様々な派生核種が含まれている核廃棄物を包括的に処理する技術はまだ確立されていない。

この厳しい制約条件において事態を打開する唯一の方法は逆転の発想である。つまり地震や火山活動の激しいプレート運動を利用して核廃棄物を処理するという構想を実現することにある。

NUMOの最終処分場は地下400mを想定しているが、これはせいぜい鉱山レベルの規模である。しかし海洋地殻を掘削して上部マントルに到達すると、プレート境界のサブダクション・ゾーンに核廃棄物を送り込むことが可能になる。プレートは上部マントルの造構圧力によって対極のプレートの下に沈みこむため、核廃棄物はマントル領域に運ばれて二度と地上に現れることはなくなるのである。

そしてこの方法にはもう一つの利点がある。それはG・シューベルの原子核パリンジェネシスによる元素転換反応である。つまり地球のプレート・テクトニクスを一種のフリタージュ装置として核廃棄物を処理することがこのプロジェクトの最終目標になる。

このフリタージュ・テクトニクスを実現するには原子核パリンジェネシスの本質的なメカニズムの解明が必要になる。それはたしかに困難な道ではあるが、数万年も放射性廃棄物を管理するよりははるかに賢明な選択といえるだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?