フリタージュの成立条件(1)

これまでケルヴランやP・バランジェ、ヴィソツキー博士など様々な科学者が生物学的元素転換について独自の研究を公表してきた。しかしフリタージュという現象が生物の進化と関連づけて語り起こされたことはほとんどなかったと言っても過言ではない。

たしかに生物の進化のプロセスにおいてフリタージュ反応がどのような役割を果たしてきたのかを推測させる情報が限られているということもその一因ではある。しかしもっと重要な問題は、そもそも元素転換反応は生体組織のいかなる領域で、またどのようなメカニズムで生じているのかが明確にされていないという点にある。

たとえ現時点で明確な答えが得られないとしても、この問題についてある程度絞りこんだコンセンサスが確立されなければ、生物の進化のプロセスにそれを位置づけることは困難である。そこでまずはそれぞれの研究者の見解からフリタージュ反応の成立条件を抽出してみることにしよう。

<ケルヴランの見解>

ケルヴランの研究については『生物学的元素転換』や『フリタージュの真実』に詳述されているが、様々な研究例に共通する条件は以下のような見解に基づいている。

「元素転換反応は動物、植物、微生物のいずれにおいても生じうる」

これについてケルヴランはサハラ砂漠での労働実験や植物の組成分析、バクテリアの実験を提示しており、それらは一つの実験的証拠ともいえるものだが、それと同時にいくつかの疑問を生じさせるものでもある。

ケルヴランの実験的手法はそれぞれの生体系の組成分析におけるノンゼロバランスを示すという方法論であり、Aという元素が減少してBという元素が増加したケースではA→Bという転換反応が生じているという結論が導かれている。

しかしその具体的なメカニズムは明らかではなく、未知の酵素による原子核レベルの酸化還元反応という仮説的モデルに帰着されていた。このような主張には以下のような疑問が生まれるのも当然である。

(1)細胞の構造や代謝作用の異なる生物が多様な転換反応を生じているという実験と、未知の酵素による特殊な反応というモデルに整合性はあるのか?

(2)様々な生物が元素転換反応を生じるのなら、その反応メカニズムは細胞の構造に依存しないということになるが、それでは生体組織のどこでフリタージュ反応が生じているのか?

こうした疑問に対する問いをさらに深めていくことにしよう。


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