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美容院襲撃?


 思い切ってショートカットにしました。気分転換です。今は近所のごく普通の美容院に行っていますが、以前仕事をしていたころは、けっこうこだわって、デパート内に出店している高級風なところに行っていました。以下はその頃のお話です。


 指名していた店長さんがやめたそうなので、新しい店長さんを指名してみた。ジャニーズタイプ?の話し上手な前の店長さんと全然違って、坊主頭の泉谷しげるタイプの新店長は、ノソリ、といった感じであらわれ、わたしの注文に、最低限の返事をすると、無口のままカットにとりかかった。
職人さんがかんなで木をけずってるみたいな雰囲気・・・

 でも、なかなか丁寧で、わたしが話し掛けると急いで手を止めて、鏡のなかのわたしの顔をのぞきこむ。真面目でいい感じだな、と思った。

 ざっとカットがすむと、シャンプー係が表れ、うやうやしく洗髪コーナーに案内される。ここはシャンプーも丁寧。でも、やたらといろんなことを聞く。たとえば、

 お首苦しくありませんか?(首にタオルを巻く時)
 背中失礼致します。(ナイロンのカバーをかけるとき)
 お倒し致します。(椅子を倒すとき)
 お湯の温度はちょうどいいでしょうか?
 力の入れ工合はいいでしょうか?
 右失礼致します。(頭を右にむけながら)
 反対側、失礼致します。(反対に向けながら)
 洗いたりないところは、ございませんか?
 お気持ちの悪いところはございませんか?
 お顔失礼致します。(顔にのせたタオルをのけながら)
 お起こし致します。(いすをおこす時)
 お疲れさまでした。

 こっちが、お疲れさまでした、と言いたくなる。
でも、なかなか面白くて、伊丹十三だったら映画つくれそう。題名はもちろん、「美容院の女」! (「マルサの女」という大ヒット映画をテレビで
見て面白かったことを思い出して)

 以前勤めていた職場の先輩が、奥さんから、どうもヘアスタイルがあかぬけないから、床屋さんはやめて美容院に行きなさいよ、と言われ初めて行ったらすご~く驚いた、という話を思い出した。

 「美容院ってのは、頭を洗う時、あおむけになるんだね。床屋だと、うつむくのに。敵に襲われた時、うつむきだったらなんとか防げるのに、あおむけじゃあ、どうしようもない。美容院はだから落ち着かない。もうこりごり。」

 なるほど、男の人は外に出ると7人の敵がいるんだ、なんて。それにしても美容院の中でまで、敵を想定してるなんて疲れるだろうなあ・・・

美容院は奥が深い。


ショートカットにした
うなじを撫ぜる
風を感じて歩く
生まれたままの
ころんと丸い
頭の影追いかけて


                 おわり


  


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