ビール傘
僕のじいちゃんは、元炭鉱夫で85歳、今は富士山の麓に住んでいる。じいちゃんの話、君も聞いてくれるかい?
「昔、雨はビールだったんだよ。あの富士山の上にビール傘という傘雲がかかるとビールが降り出した。しとしと雨の時が一番うまかったなぁ。
どしゃぶりだと泡が立ちすぎていけねぇ。
でもあるとき、富士山が噴火して三日三晩溶岩が噴き出した。ビール傘は消えて雨は普通の水になっちまった。
でも俺は今でもビールが湧き出る地下水口を知っているんだ。
ちょっと溶岩のそばを掘らなきゃなんねぇけどね。元炭鉱夫の俺には
ちょちょいのちょい、さ。
ほぉら、これがそのビール、うまいのなんのって!」
じいちゃんは瓶からコップに注いだビールをグイっとあおった。
そのとき、じいちゃんの右手首にやけどの痕があるのを僕は見逃さなかった。
大人になったらじいちゃんと、溶岩ビールを飲むのが楽しみなんだ。
おわり(409文字)
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またまたお世話をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
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