男子宝石
僕は幸福の王子。といっても小さな石のレプリカで、駅前広場の片隅に建っているが、ほとんどの人が気づかない。
ある日おばあさんが、僕を見つけ、台に刻まれた文字を読みつぶやいた。
「ああ、あの幸福の王子。なぁんにも宝石つけていなくて寂しそうねぇ」
翌日おばあさんは、赤い実を編んだちいさな冠を持ってやって来て、
僕の頭に置いた。
「ほら、ルビーの冠。庭の万両で作ったから、値打ちものだよ。
うふ、よく似合うね」
そう言って帰って行った。
僕は本物の幸福の王子になった気分で、ちょっと誇らしかった。
すると子スズメがやって来た。元気がない。おなかが空いているのかな。
僕の冠を見ると、夢中でついばみ始めた。
せっかくのルビーを・・・
実を食べ終わるとすっかり元気になり、勢いよく飛び立っていった。
寂しくなった冠をかぶったままの僕は考えた。
スズメの命を救った僕はやっぱり幸福の王子なんだ。と。
高い空から、ちゅんちゅんとスズメの声が響き渡った。
おわり(419文字)
たらはかにさんの企画に応募します。
今回のお題は男子宝石です。
「幸福の王子」の物語、知っている方も多いと思いますが、ざっと紹介すると
金箔、宝石を身にまとった『幸福な王子』と呼ばれる美しい銅像がいた。
王子は、ツバメに自分の宝石や金箔を貧しい人々に配るよう頼む。ツバメは王子の代わりに配っていたが寒さのため死んでしまい、王子も悲しみから心臓が壊れてしまう。2人は神様に天国へ連れて行ってもらい、幸せに暮らした。
めでたしめでたし
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