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消しゴム顔(その1)

午後7時下り東横線はラッシュの真っ最中。ギリギリ160センチしかない僕の前に、背の高い男性が立ちはだかり、つり革をつかむこともできない。息苦しい…僕はマスクを外してしまった。話をしなければいい。

電車が大きく揺れ、僕の顔はその男性の背中を思い切りこすってしまった。体を避けようにも無理。痛い・・・ひりひりする。

何気なく顔を上げて驚いた。その男性がいなくなったのだ。
移動したのか?・・・消えた?まさか。

やっと駅に着き、電車を降りた。いけない、マスクをしなければ・・・
あれ?マスクの紐が余っている。のびたのかな。何か歩くたびに、しろっぽいゴミが落ちる。向こうから歩いて来た女性がぎょっとしたように僕を見た。

洗面所に入り鏡で見ると、僕は仰天した。

顔の右半分がない!

え?下に落ちているゴミは僕の顔のかけら?慌てて顔を触るとカスが
ポロポロまた落ちた。

あの男性は僕が消してしまったのか?

              おわり   (400字)


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たらはかにさん、よろしくお願いいたします。


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