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犯人は誰だ!

大富豪綾小路冨麻呂が殺された、という一報が入ったのは8月16日の早朝6時だった。住み込みの家政婦がリビングに降りていくと、ガウンの前をはだけ、手にはナイフを持ち仰向けに倒れた綾小路を発見したのだ。彼には胸から下腹部にかけて体毛があったが、臍の上のあたりが一部剃られていた。
致命傷となったのはそのナイフで胸を刺されたためだが、即死ではなく少し
もがいた跡があった。

警視庁捜査一課の調べで、犯人は殺人動機のある彼の三人の息子のうちの一人と判明した。その理由は

1.新聞配達員が屋敷から走り出て行った男を目撃した。
2.数日前の家族会議で遺言書が披露されたが、莫大な遺産は、普段世話をしている看護師チズに相続させる、と発表されたこと。息子たちは当然ながら大反対をした。

三人のうち誰かが、遺言書を盗みに入ったが、本人に見つかり、部屋にあった果物ナイフで刺してしまった、との見方が濃厚だった。
長男一郎は、綾小路建設の副社長、次男次郎は専務、三男三郎は常務
母親が違うため、母方の井上姓を名乗っていた。

では誰が?

現場に呼ばれた名探偵明智大五郎は、しばらく部屋を調べていたが
きっぱりと言った。

「犯人がわかりました!」

彼の話はこうだ。

「被害者の体毛が一部剃られていましたね。これは被害者が痛みにもがきながらも残したダイイングメッセイジです。ハムレットなら
剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。』
言ったことでしょうが、被害者にとっては絶対必要なことだったのです。場所を見てください。ちょうど胃の上のあたりです。そうです、井上!犯人は三男の井上三郎です!」

海外に高飛びしようとしていた三郎が、成田空港出国者ゲイトで取り押さえられたのは3時間後。名探偵明智大五郎の名がまたまた世に轟いたのは言うまでもない。

            完(757文字)


山根あきらさんの企画に参加させていただきます。
文中に 剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。
の文を入れる、というものです。
山根さんお世話をおかけしますがよろしくお願いいたします。

#青ブラ文学部

ツッコミどころ満載ですが、長~い目で見てやってください。💦

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