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狐の嫁入り

駅を降りたら雨だ。空は晴れているのに、ポツリポツリ・・・あ、狐の嫁入り・・・以前、英会話を習っていた時、ポルトガルに行ったことがある人がいて、そこでは「尼さんのおしっこ」というのだそうだ。意外なことにびっくりしたが面白いと思った。聖職にある尼さんが、周囲を気遣いながらあの長いスカートをちょっとつまんで・・・尼僧物語のヘプバーンなら、上手に演じるかもしれない。

このお天気雨は各国によっていろいろな呼び名があり、英語ではsun showerだが、プエルトリコでは「天使の結婚式」、フランスでは「オオカミの結婚式」、イギリスでは「サルの誕生日」、韓国では「キツネの雨」というのだとか。予期せぬ出来事のたとえとして、動物の結婚式やお化け雨などと表現しているのかもしれない。

さて、ブルガリヤでは「熊の嫁入り」というのだそうが、西に山脈や森が迫り、ドナウ川が流れる国で、この命名はなるほどと思う。熊は森の王者だ。森の親父とも呼ぶし、スイスの首都ベルンの名のおこりも 熊 Bär だと聞く。街の中を流れるアーレ川の岸にある大きな公園の名も熊公園だし、熊の像もある。

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ベルン熊公園の熊さん、3頭いるそうだ。↑

 

中世以前のヨーロッパ中部は、大森林の中にあった。人がいて森林があるのではなくて、森の中に人は居場所を作って生きてきたのだ。パリのブローニュの森は、公園というよりやっぱり森だった。白雪姫も、ヘンデルとグレーテルも、眠りの森の美女も、赤ずきんも、森の中での話だ。
ある日森の中~の歌もヨーロッパの歌かと思ったら、これはアメリカだった。

中世以来の森の深さは想像以上で、百年戦争の時、森のなかに迷い込み、
闘う相手のイギリス軍をフランス軍が追い越してしまったという話もある。

アルザスでは馴染みだったライン河は、昔はローマ人の河で、シーザーの率いるローマ軍が北に攻め入ったのもライン河頼りだった。まわりの森の深さに水路を取るしかなかったから。

物語は果てしなく広がり、狐の嫁入りの話が、熊になり、森になってしまった。


晴れた空から
時ならぬ雨
狐に化かされたか
濡れ鼠

      

            おわり

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