読書記録2022年

感想メモ。刊行時期が古いものも全然読みます。
特によかったものについては★。

【1月】

■『ゴールデンタイムの消費期限』/斜線堂有紀
思春期のひとたちにはもちろん大人にもよく効くと思う。頂点を過ぎて、失う一方に立つ人間の、才能に人生を乗っ取られた人たちの物語。いつまで頑張ればいいの、は人間みんなが叫んでいるね。やめちゃおうってしてもいい。

■『VIVO!』/瀬川藤子
現実にはこんな優しい学校も先生も、わかりやすい悪役もいない。人間は立体的なので一方的に断じることができない。でも傷ついたら相手の事情なんか鑑みずに怒りたいし泣きたい、世界と私の重みがほぼ同等に感じられる子供の心に寄り添う物語。

■『キネマ探偵カレイドミステリー』/斜線堂有紀
目を引く容姿で偏屈で天才で引きこもりの探偵、といえばまるで誰もがいて欲しいと想像するようなキャラクターのようだけど、この探偵は本当のところ寂しがりで癇癪もちでこどもっぽい。助手役の主人公だって人より少し熱血どころかちょっぴりクズなきらいさえある。そういう「キャラクター」としてのブレが異常に人間味を感じさせる。人間だから、えこひいきして、嘘をついて、適当なものを信じて、無茶を言っていい。

■『ビーストコンプレックス1~3』/板垣波留
3巻が超~よかった。この世界に登場するめちゃくちゃ苛烈な草食の女のことが大好きなんですよね。動物たちは残酷なまでにヒトよりもよほど自分の肉体が持つ「イメージ」に翻弄されていて、そんな「特性」をひきちぎってはこれが私の形なのだと叫んでいます。人間も私のことを声高に叫んだっていいという肯定ですよね。自分の話ばっかりしてもいい。

【2月】

■『全滅領域 サザーン・リーチ①』/ジェフ・ヴァンダミア
映画版を先に視聴し褒めているという前提がある読書です。もう全然違って驚いた。徹頭徹尾主観を疑い続けなければいけないのが怖い話だった。今自分が考えてることが本当に自分の意思なのか、監視機構の洗脳なのか、エリアXの影響なのかもう全然分からない中で、主人公が再確認した夫への執着ってじゃあどれなの?「イルカ」について確認することもせず、夢を追いかけるかのように海の向こうへと駆り立てるものとは?事実なのはエリアXに関わる前の主人公には社会性が欠如していたということだけで… 変質していく自我よりも良い「じぶん」なんてなかったのかもしれないというのが恐ろしい。

■『詐欺師は天使の顔をして』/斜線堂有紀
「もしも人類が全員テレキネシスを使えたら」などのパラレルワールドを舞台にしたミステリ。斜線堂先生は人間の執着を描くのがうまいしキーフレーズの回収も実に美しく拾ってくれるので本当に最高の気持ちになってしまうな。私も任意ファタルに人生をめちゃくちゃにされたいです…

■『スモールワールド』/一穂ミチ
どうしてこんなにも拒絶反応が出てくるのかわからないが、母親になりたくて必死な人間が出てくるとただひたすらに「私の為の物語ではない」という意識が頭を支配して全然楽しめない。不思議ですね。

■『ウェス・アンダーソンの風景 Accidentally Wes Anderson』
もとはインスタグラムのファンアカウントだったところから書籍化するまでになったらしい。ウェス・アンダーソン本人の序文が愛おしく、「これは写真集であり、魅力的なトラベルガイドでもある」という表現がよい。そういう楽しみを主眼にした旅行も楽しいかもしれない。写真は全部かわいくて大満足ですが、映画のあの「キャストを詰め込んでこそ完成」みたいな画はどうにも難しいっぽい。写真集として満足度が高いけど、やっぱり映画も見たいなあ、となるいい塩梅。買ってよかった。

■『邦キチ! 映子さん』/服部昇大
巷を騒がせた回だけしか読んでないのもな…と思ってとりあえず全部読んだ。邦画に疎いので紹介されている映画が「マイナーな名作」なのか「マジのヤバイやつ」なのか全然読めない。で、映画のことはよくて(よくない)、すんごいラブコメで混乱している。部長が邦キチの幸せのために己がどうしたいかについて葛藤する姿を丸出しにしている一方邦キチ側についてはアクションから推察するしかないの相互不理解でよい。助けてくれ。

■『たったひとつのことしか知らない』『病める惑星より愛を込めて』/本田
短編と同一世界線でのオムニバスですね。本田さんの描く登場人物のディテールがかなり好きで、とりとめもないやりとりや癖などで愛おしさが湧く一方で邪悪な人間の描写も「誰か具体的に憎んでいる相手がおられるんで!?」って思うくらい妙にリアリティがあるので冷や汗がでますね。

【3月】

■『無垢の博物館』/オルハン・パムク
「別れた女の子にまつわるアイテムで博物館をつくりました」っていう粗筋だけでキショさが天元突破なのはじゅうじゅう理解していたんだけれどすごい。自分本位な悲劇喜劇恋愛劇に酩酊しっ放しの一人称小説、マジのマジで具合が悪くなりどおしだ。人間関係における物質主義というか、主人公は恋人と物理的な接触のあった物品を介して恋人そのものと接触を試みようとしていて、でもそれには精神性が全然宿らなくて、結局最終的には己を肉体的に慰めてくれるなら恋人でも恋人にまつわるものでもなんでも所有できればいいのだという身もふたもない結論が長々と語られる。でも読んじゃうのが不思議だな。

■『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』/泰三子 ★
作者さんがガチのもと警察官らしくて、警察官の全然ポップじゃないところがいやにリアルでずっと面白い。執拗にこすられる警察学校時代の話や、やたら頻発する性犯罪や、正義感のかけらもない「労働者」としての警察官が、私達のイメージする警察との温度差をめっちゃ伝えてくる。あと、「ゴリラ系のおっさん」と「一般人類」の描き分け労力の配分がおかしくて一般人類の内美形と平凡人類の差がなさすぎるのに対してゴリラおっさんは割とひとりひとり個性ある顔立ちになっている。どうなってんのや。

■『ゆうやけトリップ』/ともひ
講談社box版のひぐらしのなく頃にの挿画を描かれていた、めっちゃくっちゃ美しく郷愁漂う背景を描かれるイラストレーターさん…の漫画ですね。もうおのれの得意分野を惜しみなく、高低差がある坂だらけの街並みと、夕暮れと、少女たち…が織りなすおだやかな物語。毎回カラーページ入れてくれないかな… ていうか、画集だしてくれないかな…

■『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』/木下 龍也 ・岡野 大嗣 ★
二人の歌人が交互に男子高校生の7日間をうたい、その日常の崩壊を描いていく。舞城王太郎の短編も交えてひとつの「謎」を物語っている。とのことであるが、とにかくひとつひとつの短歌が日常のような幻想のような言葉にできない既知の感覚を形にしている。次々に味わい深い短歌がとびだしてくるのでずっと高揚するね。「夕映えのペットボトルのサイダーをあなたの喉がぶつ切りにする」が一番好き。サイダーと夕日を見ているようで、きっと見つめているのは「あなた」の喉なんだろうな、と思って。抑えきれないほど激情的なのによこしまでやましいから少しだけあなたの中心から外れている。実によい視線だ…

【4月】


■『双亡亭壊すべし』/藤田 和日朗
この「おはなし」は長い長い最終決戦の物語だ。ジュビロのおいしいとこだけ取り出したやつ。「フェイスレスに調教された白面の者がラスボス」との評で笑ってしまったが確かにそう。坂巻泥努くんという萌え萌えラスボスおじいちゃんを是非見てほしいな…。この人の描く「ちっきしょお、でもしゃあねえか…」死にがめちゃくちゃ好きなのでもうずっと泣いていた。

■『音楽』/岡野 大嗣
ふたたび現代短歌の本。ここまでくるともう日記のようですらあって、たいそうな作品を作るぞ、というある種非日常的な気合みたいなものが抜けた結果、「ある」な…と心にしみることばのみが残るようになっている。「君が好きだったシーンを語るのを映画の続きみたいにみてる」がよかった。映画を見るという行為と地続きのところに「君」がいて、「君」と「映画鑑賞」が不可分なのだということ。映画に対して純粋に向き合っているとは言い難い態度なのだけど、それは当たり前のようにみんなやっていることで、しかし歌になるくらいには当たり前であるべきではない。本当につまらない背徳感だ。

■『あことバンビ』/HERO
めちゃくちゃ丁寧〜に自己肯定の話を「自分と友達になる」「自分にそっくりな誰かとの距離を測る」と言うカタチでやっており、これが無料なのは本当にすごいことなので、ぜひ読んでね…Kindle無料だから…

■『大丈夫倶楽部』/井上まい ★
われわれおひとりさまに一番ジャストに必要な「大丈夫になる」という生きる方針の話をしつつ、未知の生命体との接触、いや生きる以上他者は全て未知の生命体と言えますが、についてのんびりと進めている。現代社会で生きる上で、(生きづらいひとはとくに)必要とする原則が描かれていると思う。生きるのに「大丈夫」になる最終手段として、どどんと現ナマがでてくるところが本物の迫力があって毎度笑ってしまう。紙でも欲しい…

【5月】

■異形コレクション『蠱惑の本』 ★
斜線堂先生の短編目当てで購入したのですがめちゃくちゃよかった。小説家たるものみんな単なる情報の塊ではない、「本」という物体に魔力があると知っているんだろう。全員が全員ちゃんと本にフェティッシュな視線を向けているのが感じられて非常に異形異形しいアンソロジーだった。お目当て以外で特に気に入ったのは柴田勝家の本の剥製を作る話と三上延の本に選ばれる話です。

■異形コレクション『ギフト』
パナ。オタクに読ませてよ~つったら「買えよ」って怒られたので… 異形コレクションは初めて読んだのですが、本当に全執筆者が「異形」を真剣 にやるぞ!という気合が入っていてすごかった。というか編者の方がすごくて、前書きから執筆者紹介まで本気で演出しに来ている。完璧なダンスは手指の先までピンと緊張している、そういう感じです。遊びや照れがない。一番気に入ったのは肉芽の子です。パナ。

■『ほねがらみ』/芦花公園
一見それぞれ別個のものらしき噂・怪談・事件が同じ伝承を下敷きにした現代の猟奇事件である…みたいな建て付けはだいぶ好きっぽい。この話では実話っぽさが前面に出てるので全然違うように感じるのだけど、同じことを語り口のフィクション性を高めて丁寧に一つの物語に収束させてゆきつつやると京極堂シリーズになりませんか?きもちいよね。

■『おせん』/きくち正太
毎夏おせんさんが作っていた炒めないソーミンチャンプルーにお世話になっているので。説教臭くて泥臭くて粋でいなせな江戸っ子の人情文化物語なんだね。たぶん作者さんの体力がもたなかったんだろうけど、後半になると目に見えて作画の力が抜けていて(クッパパ的な調理工程ページが増えてるとか…)色んな人の行く末も投げっぱなしの終わりでしたねえ。でも浮世絵の美人画そのものな作画や、根幹にある美意識みたいなものは芸術的で好きだな。

■『ザ・シェフ』/剣名舞・加藤唯史
料理をするブラックジャックという印象だったが、今思えば過食症の女を地下に閉じ込めたり、味覚障害の女に同じ料理を食べさせ続けたりするのを治療と称しており、絶対に医療従事者じゃない!ブラック・ジャックは時折客を救えず、己の力の及ばない悲劇に対して慟哭するのだが、味沢は毎回大体うまくいきます。まあたかが飯だし今日ごちそうを食えなくても死なんから。

【6月】

■『ブラックジャックによろしく』/佐藤秀峰
自分を善人だと信じている人間は吐き気がするものだ。出てくる医者が全員人柱の顔、患者のために倫理に背くことを厭わない顔をしていて、その中で主人公だけがずっと医者として正しくありたいとうわっつらの夢にしがみついている。(その結果他人に犠牲を強いている)唾棄すべきからっぽの理想論だけど、現実に迎合する人間ばっかりになっても世界が理想に近づいていかないということもまた事実なんだよな。濁を飲み下すのに慣れた人間が改めて苦々しい清を口にする瞬間、美しいよ。

■『怖ガラセ屋サン』/澤村伊智
ナメてたやつ(恐怖)がクソ強いとかスカッと系の要素が入ってきて、肝心の読者の恐怖の純度がちょっと落ちてはいませんか?怖いんだけど、怖がっている主体が嫌な奴だから、いいぞやったれ!って思う。善とか悪とか関係なく不合理に祟る存在の方が好きなだけかも。映画「来る」を視聴しただけだけど人間の嫌な性質をめっちゃ出していたし作者のヘキなのかもしれない。いじめをした子供たちが被害者と怖がらせ屋さんによって一生をメチャクチャにされる話は社会派と言って差し支えない。

■『2と車』/虫歯
好き。虫歯さんの作品は、「普通だったらこういうリアクション/展開になるだろうな」を奇妙にハズしてくる、感覚がズレた人間によるだいすきの表現が本当に滋味深いので好きです。ほそなが~い男を描くのがうめえ。

■『三日間の幸福』/三秋縋
合わなかったな~。認知のゆがみというか、信頼できない語り手というか、主人公が「俺はこんなにくずだ」と自覚しているレイヤーの一段階上の言動や思考から人格の醜さを出してくるやつだ!と思ったんですよね。人間失格とか、こころとか、それこそ無垢の博物館と同じで、己の悪い部分を反省するのはポーズだけにとどまり、本当に自分本位な部分は当たり前のものとして描写される、みたいな。語り手の盲点にその醜悪さがある、みたいな。でも普通にその辺を回収せずハピエンに転げていったので、単に作者と感性が合わなかったものと思われる。

■『虚談』/京極夏彦
京極夏彦って普通の文章も書けるんだ!?とショックを受けた。シレっと一般市民の言語感覚にチューニングできてしまうの、恐ろしい…
どこまでが嘘で、幻覚で、真実で、現実なのか全くわからない話のアンソロジー。するする気持ちよく読んでいるうちにいつの間にか手を離されはしごを外され、突き放されて、不安と怪現象のイメージのただなかに取り残される。何が怖かったのかもわからないまま不安だけが植え付けられて生きていく…

■『金の国水の国』/岩本ナオ★
映画化するらしい。おとぎ話のような世界観とは相反して、きちんと説明したら納得してくれる、という悪役のリアリスティックな温度感がちょうど今の私にしみる。(不死身の命日という作品でも同じことを思った)当たり前ですけど現実で出会う人間に敵とか味方ってそうそうなくて、ちょっと納得いってない人がいるだけ。そこでファンタジックな何かに訴えるわけじゃなくて対話を望むのはすごく地に足が付いているし、また現実に近い分より切実な「現実でもこうありますように」という祈りがこもっているような気がする。奇跡を願うときの方が、きっと人は無責任だ。

【7月】

■『エニデヴィ』/白浜鴎
人外のコメディ災害が欲しくて… 天使と悪魔ちゃんは意外と俗っぽくひとじみている(落とし方も「女の子サイキョ~!」だった)ので、女神レベルの「対話の成り立たなさ」「天災」を求めていた口には食い足りなかったかな~。「その開きなおりは天使っぽい!」というセリフがぐっと来た。グッドオーメンズ2が楽しみだな。

■『法治の獣』/春暮康一★
めちゃくちゃ面白い。宇宙の向こうに夢を見る、ということは素晴らしいことなのだけど。夢、期待と言い換えてもいいかもしれない、はそれそのものが押しつけがましく、身勝手で、自分の都合しか考えていない。例え「最悪の事態」をできる限り想定していたとして、「なにかあってほしい」という期待はぬぐえないのだ。そして人は何度でも間違える。気持ちいい~。

■『ボーイ・ミーツ・マリア』/ペヨ
よかった。いわゆるお清め性交渉というやつを憎んでいるので、傷ついた心に対してただ寄り添ってくれていることに感謝した… こういう作品があるということで救われる人もいるでしょう。

■『PPPPPP』/マポロ3号
「天才」という概念の扱いが大変よろしい。

■『水上バス浅草生行き』/岡本真帆
「ずぼらだし」の人であるのでてっきりそういう緩めの人間関係感情が多めかな、と思いきや出てくる出てくる 犬 犬 犬 犬 犬 犬の歌 犬が好きすぎるなこの人 一番気に入った歌は「南極に宇宙に渋谷駅前にわたしはきみをひとりにしない」です 犬…

【8月】

■『ぷにるはかわいいスライム』/まえだくん★
人間×人外の一番おいしいところを一生やってるから狂う。助けてくれや。

■『往復書簡 初恋と不倫』/坂元裕二
全編二人の人間が交わす手紙という形式でつづられる物語。これがただの恋文ならばよかったのだが、残念ながらそこにはサスペンスとミステリと人間の最悪の情念があった。冷静ぶってふるまおうとしていた人がなりふり構わなくなっていく過程、すべてが最悪の展開となっているのにもかかわらずそれでも振り払えない執着、が常に全力モノローグで殴りかかってくる。こええ~

■『影踏亭の怪談』/大島清昭★
人間が事件を起こす。しかし、怪異はある。そういう形式で語られるホラーとミステリ(ホラーミステリではないのだろう)の連作短編集。主人公のウメキキョウコさんは、作中でも「学術書のような淡々とした語り口」と評されるだけあり、恐ろしいほどに感情が込められていない。己が遭遇しなおかつ危害を及ぼされた怪異、しかも弟を喪っているにもかかわらず、その冷淡さは健在である。第一話から恐ろしいパンチだった。そのうえで、結末を読んで恐怖してほしい。長編も出るらしいので楽しみだ。この形式でシリーズを出し続けてくれんかな~と思っていたが…悲しい。

■『彼女』/斜線堂有紀ほか
斜線堂先生の短編が読みたくて。
斜線堂先生のあ~あ、恋しちゃった。人生めちゃくちゃになっちゃった。っていう諦念というかやさぐれが好きなので今回もすげえよかったです。こんなに怒り狂ってるんだから祝福ぐらいしろ。

■『かわいそ』/梨
こら~!!!!!!!!!となりましたね。私は一体何を呪わされてしまったの、誰をかわいそうにしてしまったの… 読者巻き込み型のホラーとして名作となったのではないでしょうか。
いにしえのインターネットの温度感についてはさすがに知らん部分があって悔しかった。

■『打撃マン』/山本康人
思想に触れた。

【9月】

■『叙述トリック短編集』/似鳥鶏
叙述トリックってわかったうえでおもしろさで戦えるぞ、という意気込みが気に入って購入。こっちも頭から構えて気を付けて読んでいたはずなのに、「つもり」の隙をつかれて「貧乏荘の怪事件」で見事に引っかかってしまったので本当に悔しかった。本当に悔しい!わかってたからこそ悔しい。キ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!

■『赤虫村の怪談』/大島清昭
もうずっとクトゥルフダジャレ大全なので大変。ずっと名詞ググりながら読んでたもんね。事件は事件として真相が判明するが、それはそれとして怪異は在る、という質感はやっぱり好きだな。そして恐怖が薄い故深入りしてしまう主人公も。影踏亭のが好きだけど。


【10月】


■『たまさか人形物語』/津原泰水
訃報を目にしたので。人形をめぐる一連の物語は面白かったけど、主人公のテンションがちょっと疲れた中年寄りの女性という感じでこう…くたびれてて…いまいちパーティメンバーを愛せなかったな。

■『名称未設定ファイル』/品田遊
古のインターネットで見慣れた手触りの文体から繰り出されるすこしふしぎ。ずっと愉快ないい本だ。皮肉の利かせ方が何よりインターネットという気もするけど。

【11月】

■『虹の歯ブラシ』/早坂吝
下劣で軽薄でいいジョークミステリだな!丁度いいんだよ。最終章の虹の話も含めて一冊の完成度が高くてよい。詰まってるものがどれだけ汚くても美しい芸術って成り立つんですよね。

■『名探偵コナン』/青山剛昌(~90)
安室透出てくるのおっそ…!
なるほどね、映画での掘り下げがすごいのか。完全にサザエさん時空でやっているけど、キャラクター達の成長とか、親しくなる様子とか、ちゃんと随所にちりばめられているのですごいなと思った。新一と蘭も進展している。ずっと前の巻で出てきたキャラクターや事件を結構再登場させるので剛昌の記憶力(もしくは資料管理能力)すごくない?と思った。男女愛好きすぎは強く感じる。すぐ男女カップルを生やす(白鳥警部と小林先生のフラグが”生えてきた”ときは笑ってしまった)!

【12月】

■『儚い羊たちの祝宴』/米澤穂信
ミステリ短編連作。「玉野五十鈴の誉れ」という短編に読み覚えがあったのだけど、高校時代の模試に出てきたらしい。(年齢がバレる)煮詰められた殺意は一見穏やかで、気品すらあるのだけど、どうしてもそこにふつりとあぶくが浮かぶ瞬間と言うのがね…あるんですよ…。

■『銀の匙』/荒川弘
途中まで読んだことがあったのだけどこの度通読。すっごいよかった。
駒場が実家農場の破産のために高校を中退した後、自分だったら「一切連絡を取らずいつかビッグになって舞い戻る」という展開にするな、と思うのだが、彼らが生きるのは現実で、彼らは友人同士なので、つかず離れず連絡を取り合い、助け合えるタイミングで助けあう。異様に現実的な話運びに思えるんだけど本当の現実からしたら夢みたいに理想的な友情の話だ。八軒の起業も何かが偶然大ヒットするわけではなくコツコツ積み上げて軌道に乗せる様子が描かれる。

■『モブサイコ100』/ONE
構成が完璧すぎる… 最終決戦につながる大事な要素がきちんと最初から、あらゆるキャラクターの出会いや戦いにちりばめられていて、美しく回収されていく様には感動してしまう。畳むのが上手いのか最初から用意しておくのが上手いのかどちらだ!?一番好きなのはテルくんですね。「笑われたっていいんだ」、で泣いちゃった(通勤電車で)。霊幻の表情にもめちゃくちゃにされちゃった。ていうかこの人、下手なのに面白い漫画家で売ってたくせにめちゃくちゃ絵うまくなってるな。

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