映画鑑賞記録2022

【1月】

感想メモ。
太字は劇場での鑑賞、それ以外はネトフリ、アマプラなど。特に気に入ったものには★。

■ファンタジー・アイランド
全部がしっちゃかめっちゃかなのでポカーンとしてしまった。いじめっ子が連れて来られたのついでなのに現実にも被害が侵食していて一番かわいそう。探偵役のおじさん、なんだったんだ…

■レイジング・ファイア★
何もかもを奪われて、乾いた笑いしか出ないニコラス・ツェーがとにかく痛ましく、美しかったですね… チーム・ンゴウ、みんな哀しくて好き。ドニ―・イェンと2人そろって口頭で説明できないようなアクションを平気でバカスカかますので目がずっと楽しくて忙しかった。裏切った警察の幹部に爆弾を仕掛け、追い詰められて錯乱する様子を遠くから眺めるンゴウたちの、まったくつまらないものを見る視線が悲しくて怖くてやりきれなかったよ。

■キャッシュ・トラック
お遊びぬき・殺意の塊のジェイソンステイサム大暴れ映画。ステイサムの事情が明らかになっていくにつれ、序盤の容赦のなさが当然のものに感じられていき、心から震え上がった…。倒れたステイサムの目だけが追いかけてくるシーンがマジでトラウマ。

■ブックスマート★
3回目くらいかな。ステイサムにいびられて泣くかと思ったので元気を出したくて観た。やっぱり「もっとつるんどけばよかったな」は大人になるほど効くんですよ。狭い世界で必死に自分を守ろうとしてつくった要らない敵が多分たくさんいた。

■ペイン&ゲイン
アホのマッチョにストップがかからないとこうなるという、おそらく、最終的に、ホラー。彼らの犯行はともすれば全編コメディとして描けるほどに行き当たりばったりでアホらしいんだけど、当人たちはいたってシリアスであり、その分視聴者たちはどんどん恐ろしくなっていく。

■サイコ・ゴアマン★
日本語版BDが発売されたので。主人公ミミちゃんの悪辣火力が本当にすごい。とはいえ改めて見ると兄も気弱なだけでどっかズレているのであらゆるものごとにうんざりすれど動じないんだよな… ミミ兄父がいい顔してるシーンは全部イカレている。

■ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ
ヴェノムは評判通りずっとずっとプリティキュートなマスコットだったので😊になった。血は前作同様ちっとも出ないし、もっと派手な血みどろコメディがほしい…みたいな気持ちもなくもないけど、留置所でヴェノムのお迎えを待つトム・ハーディが本当にダサくてかわいかったからいっか!

■ハンニバル(ドラマ版)★
第1シーズン
しょっぱなから主人公のウィルくんの精神がメタメタになっていたし、2話にしてタイトルはハンニバルなのにハンニバルがかすむ勢いで殺人鬼被害のインフレがすごいので思ってたんと違う!と思った。ところで、意中のあの子と「ちゅ~した!」つって突然家に飛び込んできたウィル君にさすがに吹き出しちゃうハンニバルが妙にかわいくて印象に残った。最終的に私が知ってるハンニバルの立ち位置にウィルくんが突っ込まれててあれれ~?ってなっちゃった。
第2シーズン
本当に向き合ってくれているからこそ信じたり疑ったりで態度がくるくると翻るジャック・アラーナと、すべてを裏切っているからこそ「ウィルとは友人でいたい」と殊勝げな顔を貫けるハンニバル。閉じ込められて、親しい人ですら檻の外から疑いの目を向けてくるような状況で、マッツの顔面を持つ存在に「君を信じたい」って言われたら疑わしくても信じてほしくなりませんか?ウィルくんは強いよ。ハンニバルからウィルくんへの愛がもうずっとずっと枯れなくておびえてたところに、開き直ったウィル君の方もハンニバルにため込んでいた憎しみをぶつけだしたのであ~矢印が釣り合っちゃった…もうだめだ…と思った。こんなにもハンニバルの為にこころを造り変えられてしまったウィル君なのだから、当然「置いていけない」は愛のささやきなのだ。
第3シーズン
べデリアという女の話をしてくれ、ずっとハンニバルの世界に寄り添い、ウィルを見つめつづけ、壊れきってしまった女のことを。二人の愛を誰よりも確信していた彼女が、最後の最後に「自分も物語の一部であること」に陶酔して、晩餐を準備してしまったのがあまりに残酷だった。ウィルをさらったハンニバルがきっと来てくれるって信じてたんだね。そのころの二人はもう素晴らしい食事もワインもいらないところに到達してしまっていたのだけど。みんなも愛しのあの人に消えない傷をつけてほしいなら「今じゃない」とか言ってないで早めに飛び込むべきですよ!

■モンスーン
ベトナムの生ぬるく湿った風、喧騒、熟れすぎた果物の匂い、そういうのがずっと漂ってる映画。主人公キットくんが数十年ぶりの故郷ベトナムにいる自分を「まるで観光客みたいに浮いている」と表現するのですが、まさに旅行ってそういうちょっと浮いた感じになりたくて行ってるよね… 最後には「おうち」にすべき場所のことを思い出せていて、よかったな…って。

■フェイクドキュメンタリーQ
「製作者はモキュメンタリ―と言い張っていたVTR」を初っ端に置くの普通に性格が悪くない…?視聴してて怖い~!つって叫ぶ奴は火力が高い、直接的に不気味な写真や変な留守電とかカルト教団がでてくるやつなんですけど、ジワジワ効いてくるのがよく見てないと見逃しちゃうような、こっそり紛れ込んでいるようなやつ…(山登りで野宿するやつ)

■ブラックシープ
うじゃうじゃいても人を食っても羊だとやけにかわいいので困った。登場人物が全員恐ろしいほど浅慮で逆にノーストレスという不思議な現象ががおきてずっと妙に面白かった。この世界の人体はびっくりするほど伸縮性があるようなので、ちんちんとかがめっちゃ伸びます。羊とのラブシーン嫌いじゃないです。ちゃんと愛じゃん…と思ったので。

■イット・フォローズ
一見普通の人間がただゆっくりと迫ってくるだけで怖い、というのが新鮮だった。つい背景に目を凝らしてしまう、疑心暗鬼に振り回されてしまう。とはいえそれよりも性欲や自己承認と結合した若人の友情にウオ~見ててしんどいんじゃ~!となりました。監督の中に青春に対する「鬱屈としたもの」があるとしたらそれが一番怖いかもしれん。でも画面がメッチャカッコいいことが多くて目がたのしいので好きです。

【2月】

■dele★
山田孝之×菅田将暉で2018年放映ドラマなのになんでこんなに話題になっていないんだ…?と思いましたが、アンナチュラルの直後だからかな。
終始山田孝之の顔が好きすぎて正常な判断ができませんでした。
全編通して、人の心のブラックボックスをどうするか?すべてを詳らかにして誰かの人生を壊してしまう覚悟はあるか?そして、お前が引き金を引いたとしても、「ひとは最後に何を考えていたか?」ということは永遠にブラックボックスのままかもしれない。ということを問い続けていてよかった。2人のデータを開ける/消すの選択、そしてその顛末を見届けることで、視聴者にはどちらが正解でなにが正義なのかわからなくなっていく。だからこそ、最後の真柴君の選択、ケイへ、そしてあの「息子」への回答がなによりも優しくひびく。
最後に「退職届」という最後の書面、データから勝手に気持ちを推測してしょげる坂上姉弟が真柴君の優しさに裏切られて終わるのはあまりに美しすぎんか?めっちゃよかったです。

■フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊★
大人のための仕掛け絵本。細部に夢中になりすぎると本筋を見失って、物語を追いかけると楽しいおもちゃをたくさん見逃すことになるんだ!「執念」とまで評される画面構成は、逆にちょっと小さめのスクリーンの、こじんまりした映画館こそ映えるものなんじゃないかな。本棚に置いておきたいので、ディスクがでたら買います。オタクが「雑誌版も欲しいよね」と言っていたんだけど、確かにファンブックとかにならんかな~って思うし完全同意する。

■ライダーズ・オブ・ジャスティス★
コメディ1:暴力1:哀愁1くらいのバランスな物語のはずなのに、主役にマッツミケルセンが来て暴力と哀愁の破壊力が1000000になってしまったせいで奇妙なバランスを生み出している映画。ギャングがバカスカ殺される部分はおそらくコメディでしかないのだが、マッツの眼光が鋭すぎて普通におびえてしまうのであった。人間がへたっぴな人たちの悲哀がおかしくて、偶然を遡り続けるしかできない少女が切なくて、正義と言う名の破壊に逃げるしかできないマッツが痛ましくて。それはそれとしてやっぱりギャングはいくら殺しても罪に問われないんだなあ。

■シャーロック
第1シーズン
シャーロックが嫌われすぎていて本当に困惑してしまった…(残念ながら言動がカスなので当然)全ての前振りを何百年とやっているので初回からモリアーティの話をしていい!!超スピードで展開していくぜ!という感じ。モリアーティくんがつやつやで不気味で人間をおちょくることに人生をかけすぎていてとてもよい。とんでもない投げっぱなしジャーマンエンドでびっくりしてしまった。(クリフハンガーというらしい。リアルタイムだとここから1年以上待たされていると聞いてバーカ!と思った)
第2シーズン
シャーロックとワトソンがずっと「おれたち親友…」の顔をしているので😊になってしまった。某ニバルの二人と違って周囲がちっともやきもきしていない。新薬とかがでてきたが、それってミステリでは禁じ手なんじゃ?いいのかな?って言ったらオタクに「これはミステリではないから」って言われた。221Bのほのぼの時々殺人の日常ものです。通算三回見たけど三話の「天使側」の話しているときのモリアーティ君の感情の動きがわからな過ぎてまだ混乱している。誰か説明して下さい。
第3シーズン
これが最終回でもよかったじゃん!っていうくらい結婚式回が良すぎた。まず画面がいい。やけにライティングがまぶしくて、パステルイエローとシャーロックのアイスブルーの瞳が美しく映える。リアルタイムでばらばらだったピースをはめ込んでいく推理パートも興奮した。列席者を訝しがらせたり感動させたりかと思えば新婦と対等ヅラして「ずっと一緒にいるよ」と誓ったりするシャーロックのスピーチが最高。それはそれとしてメアリーのことが本当に好きになってしまう…
第4シーズン
最終的に失われてしまうことも含めてシャーロックとジョンとメアリーのスリーマンセルが完成されすぎていて、この三人がたのしく穏やかな日常をすごすだけの時間に心が閉じ込められてしまった。一生たわいもない会話をしているだけの二次創作を下さい。ところで2話にメアリーのメッセージで〆たらよかったじゃないですか?ホームズ家の因縁は面白いけどやってることはデスゲームなので欲しかった「ミステリっぽさ」はやや死にました。

■グランド・ブダペスト・ホテル★
めっちゃ前に観たことはあるのだけど、フレンチディスパッチで懐かしくなったので観た。額縁の中に閉じ込めたかのような画面構成がやっぱりずっと気持ちいい。言われて気づいたけど音もずっと愉快だね。宝物みたいな思い出を、私はまだ自分だけのものにしておきたい気持ちが強い年代なんですけど、きっといつか誰かにそっと託したくなるのかもしれない。あんな風に装丁を凝らして素敵な本にしてもらえたら幸せだろう。

■エクストリーム・ジョブ
あまりにも全員昼行燈すぎるチームだな…と思ってたら最初っから有事の際に活躍するメンバーでした!全員めっちゃ動けます!ってするのさすがに設定が過剰で笑ってしまった。犯罪都市の凶悪犯役であったマ厨房長に何かあるたびにキレるんじゃないかとひやひやするという謎のスリルがあったし、実際最終的には😊しながらキレてた。お前そんな顔もできたんだな。チューよかったです。チンピラの名前を「テッド・チャン」にするのはずる。

アンチャーテッド
ホランド君のわくわくインディ・ジョーンズ。めちゃくちゃ夏休み冒険活劇のにおいがつよかった。ホランド君はまた16歳の少年みたいな言動をしていたけど体がちょっとバッキバキすぎるのでもう視聴者も騙されないですね。アントニオ・バンデラスとマヌエル・デ・ブラスの富豪親子のスペイン語での会話があまりにもかっこよすぎて笑ってしまった。話的にはなくても成立しただろうが、やりたかったのも”理解”る…マヌエルさん、声が低すぎて人間の肉声というよりも金管楽器みたいな重低音が出る。

牛首村
kokiさんの絶叫がすごすぎて驚いてしまった… 主人公たちにとってはひとまずの解決をみてひと段落ついたような雰囲気がありますが、巻き込まれたとしか言いようのない配信者の友達は理不尽な死にとらわれ続けているんですよね?怪異という染みを洗い流そうとして水を流しても、流れていった先でよどんで新しい怖い体験を生んでいるの、嫌すぎませんか?「双子」の手から離れた怪異は生き続けている…

■ジョジョ・ラビット
未体験ゾーンに行く予定だったので、タイカ・ワイティティの作劇ってどんなものなのかな~と予習のつもりで観たのだけどめっちゃよかった。「少年がひみつの怪物と出会ってしまった」「少年がイマジナリーフレンドと冒険する」という優しい児童文学然とした形をとればとるほど、描かれる残酷な現実がより痛ましいんですね。”人生をハチャメチャに引っ掻き回すお茶目なイマジナリーフレンド”をセルフで一番上手にこなすワイティティマジでなんなんだ。

■エジソンズ・ゲーム
とにかくおじさんが多い!沢山のおじさんたちがプライドと人生と暮らし…と次々に大切なものをこの「電流戦争」に賭けていき、どんどん降りられない勝負になっていくのが本当にキツい。最終的にウェスティングハウスが勝利を手にするのだが、彼には名誉の証として「エジソン・メダル」が与えられ、一方誰よりも自身の栄誉を人に記憶されたいと願うも敗北を喫したエジソンはそののち「映画」を発明しているのだ。ナレーションで淡々と語られるだけの事実がなによりも皮肉で美しい結末なのはずるすぎるだろ。お前は誰の伝記を読んだか覚えてる?

ディストピア2043 未知なる能力
未体験ゾーンその①、ワイティティが製作総指揮を取っているやつ。「未来のディストピア」「未知の能力」と銘打っておきながら、やってる話はどこまでも現実の、現在の、地球上に存在する問題だった。北アメリカが舞台なんだけど、あのまるごと廃墟になった街や巨大な壁は実在するんだろうか。どこで撮ってるんだろう。

スターフィッシュ
未体験ゾーンその②、破滅を迎えた人生の、世界の、なんと静謐で美しいことよ… 「世界を救うテープ」を手にしながら家に閉じこもる時間や、誰もいない世界で終焉そのもののような巨大なモンスターに見惚れる瞬間は、破滅的でありながら、この世界を受け入れるために確かに必要なものであって、愛おしくすらある。テープがモチーフとして取り上げられているだけあって、音響がとにかく印象的で美しい。あととにかくちっこいリクガメがかわいい。

■夢の丘
12分でちゃんとキッチリ話を落として混乱させてくれるのですごいなあ…と思いました。脚本家がメインの人だからかな。結局何が「そっち」側だったんだ、そもそも「あれ」って何だったんだ、が全然わからないところが怖いのだなあ。

■邪願霊
Jホラー、モキュメンタリ―の始祖的な存在らしい。「のちのちこんな映像が見つかった」って幽霊視点の映像を出してくるというのは初手で出してくるにはすごいと思う。それはそれとして80年代の文化がものすごい勢いで流れていくのでいちいち気になってそれどころではない。

■テケテケ
白石晃司の作品に出てくる人間ってどうしてこうも「死んだ方が世の中のためだったから、いっか…」ってなる感じなんだ?性格的にお化けにも理屈を求めてしまうというか、理屈≒どうにかする希望があるという状況の方がより鮮明におびえてしまうというか、理屈がなかったりどうしようもなかったりしたほうが開き直って怖くないかもしれない。理屈があるっぽいけど全部間違ってました残念死!!!が一番だめかも。

■ファブリック
変な映画だ!滑り出しはわりとホラーっぽかった気がするのに、途中から(意図的に?)全部がズレてコメディじみていき、やたらと強烈な場面場面が印象に残る。予告では主人公かのように映っていた女性は被害者の一人でしかなくて、しかもその次の被害者とつながってくるかと思いきやべつにそうでもないという。特に印象に残ったのは、スピリチュアルな銀行員の「当社の規定では上司の愛人は上司に分類される」かな…

■セントラル・インテリジェンス
全てがわかりやすいアクションコメディ。みんなの共通認識の「ドウェイン・ジョンソンにやってほしいこと」を完ぺきにこなしてくれるからドウェインはいつでもひとりで完璧に最高なんだけど、今回はケヴィン・ハートさんという超かんだけえ声でギャーギャー騒ぐ相方がいたことでより愉快になっていた。ロック様にも格で負けないツッコミおじさんってなかなか得難いんじゃないか。アメリカン・ハイスクールの倫理観のなさを知るたびにアメリカ人じゃなくてよかった!って言う。

ガガーリン★
直球で私の”癖”の映画でした。主人公を残して無人となり、灯ひとつ燈らなくなったガガーリン団地は、闇に沈む宇宙そのものであり、そこに宇宙船というシェルターを作ってひとりゆくユーリは孤独な宇宙飛行士なのである、ということが繰り返し繰り返し、最後の最後まで喩え続けられる。くどいと感じる人もいるかもしれませんが、私はこの徹底的な比喩がだいすき。巨大建築物や建設重機もカッコよく撮られていて嬉しかった。ユーリくんが宇宙の向こうから送ったメッセージ、受け取ってほしいな。

■犬が島
ウェス・アンダーソンのストップモーションアニメ。シニカルでコミカルで相変わらず随所が超かわいい。風になびく犬のお耳やら、お座りするときのおしりの動きとか、かなり偏執的にワンちゃすのキュートさを表現していて犬最高…♡になってしまいました。ありがとうございます。主犬公のチーフくん、だんだんブラッドピットに見えてきて、女の子ワンワンを指して「Bitch」って言ったのはスラングなのか判断つきかねたね。

【3月】

■さがす
転がる石はもう止められない形の映画でした。主演となる三人、佐藤 二朗、伊東蒼、清水尋也が全員熱演していてよかったです。特に清水尋也さん、「壊れた殺人鬼」「空回りする好青年(のふり)」「ちょっとイキった若者」をシームレスに行き来するので恐ろしい。目のちからがつよい。それはそれとして、大阪ミナミの、こういう事件がどぶ川のあぶくのように人知れず消えていきそうだな感、ちょっとわかるので肝が冷えました。身元が怪しい人間がはじき出されないというか、溶け込めるだけの猥雑さがありますよね。

■アーカイブ81

■レリック -遺物‐
認知症が進み言動が目まぐるしく入れ替わる老人の姿はそれだけでも恐ろしいのに、さらに別の生命体に変わっていってしまう、という二段構え。EDの雰囲気とかを見るに、黴とか粘菌とかそういうものに侵食されて己が崩壊してしまう、というのが恐怖ポイントなのかもしれない。血が全然でないのに要所要所の黒く朽ちた人間がグロテスクですごかったな。

■V/H/S ネクストレベル
ヤバい人の家でヤバイビデオをたくさん見つけたので観る、という体でショートホラームービーが詰め込まれている。各々与えられた尺で全力を尽くし、必ず最大火力を浴びせかけてくれるので一瞬も休まるときがない。ゾンビ視点や、ワンちゃん視点など変わり種も多くて楽しかった。ワンちゃんの終わりについては悲しみしかないですが… 人体破壊の描写も全体的に力が入っていて元気がでました。1・3・4も見たいなあ。

■スクワーム
む、無理…
サブリミナル的にゴカイのお口もとのアップが挿入されるので最後まで新鮮に嫌で仕方ない。水回りとか天井とかからにじみ出るゴカイがトラウマになってしまって、うちのシャワーヘッドの穴が小さくて本当に良かった~!と思っている。主人公ミックくんのリアクションが全体的に薄いのが妙にすごい。ゴカイの入っているミルクを飲まされたらふつうもっと発狂すると思うし、彼女の母親が死んでたらもうちょっと取り乱しなさいよ。

■ヴァイラス
超楽しかった!オタクが「これぞ木曜洋画劇場」と言っていたのに全力で頷いている。目に焼き付いて離れないおぞましさの死体改造メカたち、ふざけて死ぬアホ、邪悪な船長、寡黙な異民族大男、仕事をするメカニック。全部様式美を踏襲しながらもちゃんとキャラが立っててだいすき。タイトル回収も気持ちよくてよろしい。異星人とのファーストコンタクトでまずおのれを「優秀な生命体」と表現する船長が超ラブだな…

■ドラえもん のび太の海底鬼岩城
愛嬌たっぷりのバギーちゃんの最後を見よ!とのことだったので…
海洋ミステリロマンの抒情たっぷりな導入からハイテク海底人のお役所仕事に巻き込まれるドラ一行。海底人さんはどうしてベストを尽くさなかったんですか?ドラちゃん一行が普通にロストしうるという事実を初めて知り驚いたのですが、劇場版だとあるあるらしい。スネジャイが死にかけるところをバギーちゃんだけがヘラヘラしながら見守るシーン、子供がロボットに対して不信感を抱くレベルで怖い。しずかちゃんの言動も全部狂っててやだった。

■ドラえもん のび太と鉄人兵団
リルルちゃんに100000000点。相変わらずしずかちゃんの言動にだいぶ混乱させられましたね。「勝手に壊れちゃえばいいんだわ!知らない!」「やっぱりほっとけないわ!」のスピード感はちょっとすごいですよ。原作だともう少し台詞なしで見せたりしてたみたいです。あと、藤子先生の思想とはちょっと違うから仕方ないんだけど、「ロボットは人間の為に造られたの」と言った後にリルルの「ロボットは平等だから人間を奴隷にしようと思った」に「人間みたいで神様もがっかりね」と煽り発言できるしずかちゃん普通に邪悪じゃないですか?「機械はしょせん機械」みたいな思想が根底にあるっぽいのに、しずかちゃんは小学生女子なので普通におままごとみたいに機械を人間みたいに扱う、そしてそれが美談として語られる。怖いよ。

■ヤクザ・プリンセス
アクションの出来に波があるけれど、人体損壊からも逃げていないし、日本人を起用し自然な日本語台詞を当てているし、やりたいトンチキジャパンが撮影班の中にしっかりあるっぽいので愛してあげたいな…突然お腹の刀傷を見せてくる紋紋背負ったおじいちゃんコンビ、呪いの刀に人格を乗っ取られた顔面が傷だらけの元ヒットマン、最強ヤクザの血を引くケンジツプリンセス、萌えがこれでもかと詰まっている。

■エンプティ・マン
すべての元凶である常軌を逸した形状の骸骨のデザインがほんとうにカッコいい… 人類が「彼」と出会ってしまった瞬間のおぞましい雰囲気、SAN値が一瞬で0になっちゃったんだな…と肌で実感できて大変よろしかった。気づかないうちに脳に人類の領域外の「彼」が植え付けられて存在を変えられてしまうという展開も好みなんですけど、尺を取りすぎな気がするのでもっと猛スピードで手遅れにしていただいてもよい。

■ドーン・オブ・ザ・ビースト
人間が化物共に襲われ倒しちゃうよ~!と思っていたら最後人類をほったらかしにして化物VS化物が始まってしまって笑った。ビッグフッドがヒグマみたいな扱いなんですね…愛する人を失って10年もこんなことに費やした眼帯のお兄さんと、「な?こう(旅行者グループが化物に襲われてほぼ全滅)なるだろ?」って軽いノリで流す現地民の温度差のことを思うと胃がキュッとなる。悪霊くんが普通に怖くて楽しかった~!

■ドラえもん のび太のドラビアンナイト
完全にロケーションの勝利ですよね…アラビアの街並みの作画がよくてにこにこしちゃった。しずかちゃんはずっとひどい目にあっているし、最後の戦いはおじさんVSおじさんなのでドラちゃんたちはあんまり活躍できなかったね。ガイド妖精ちゃんが超かわいくてよかった。

ドラえもん 新のび太と鉄人兵団★
ありがとう、ピッポという存在を生み出してくれて…(旧版ファンがどう思ったかは知らないが)ピッポがかわいすぎて誕生に係るあれそれの「いいの!?」は吹き飛んじゃうんだな。でも勝手にひよこにしておいて「ピッポって感じだからピッポ」つってジュノーという名前をガン無視するのび太はちょっと怖いよ。ピッポにとっては全部初めての嬉しいことばっかりだったから、ピッポがピッポを好きになっちゃうのも仕方のないこと…

■ドラえもん のび太の魔界大冒険
魔界じゃないじゃん!!!!宇宙じゃん!?宇宙なんで!?
ドラちゃん映画、「ドラちゃんあの道具は!?あの道具もあるでしょ!?」と突っ込みたくて口がうずうずするが、そうすると一生ピンチなんて発生しないし逆にのび太がいいようにしすぎてしまうので子守りロボとしてはこれくらいでちょうどいいのかもしれないな。心臓をあんなに適当に放り出している魔王があるか!

■ポゼッサー
意識の切り替えや融合が皮膚で表現されててめちゃくちゃ気持ち悪くて怖かった… わかっちゃいたけど最後の一連の犯行から「脱出完了」で完全に力が抜けてしまって… 罪悪感でもあり最後の楔でもあった「危険な」マイケルを排除したことでヴォスはボスと本当に同一の存在になってしまったなあ…みたいに思ったのだ。本当にあのパイプや標本は彼女のもなのだろうか?上司は何を確認していたんだろうか?みたいなところ。ナイフは誰に似合う武器だったんですか?痛そうな描写もドンドコ投下されるので本当に具合がわるくなる…

■劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール アルセウス 超克の時空へ
3部作の最終章なだけあって、初っ端から世界が滅びかけており全然サトシたちがたのしそうなシーンがないというのでオタクが驚いていた。(ごめん)1・2を見ているとディアパルギラが協力しているだけで安心感がすごいのでサトシたちも視聴者もヤバイことになっていても全然動じない。が、アルセウスは超すごいので本当はもっと焦った方がよい。アルセウスが人に入れ込んでめちゃくちゃになる様、最高だね。

■劇場版ポケットモンスター セレビィ 時を超えた遭遇
オーキド博士のオリジンストーリーとして本当に最高。オーキド博士もかつてはまっすぐでやさしくて夢に満ち溢れた少年だったんですよね。サトシに入れ込むのもかつて一瞬交差した友達を思い出すからなのかもしれなくて。サトシの腕の中でセレビィがしなびていく瞬間のSEが本当に絶望感を煽るから泣いちゃうし、地味に巨大セレビィとかと併せて怖い映画だと思うな… ポケモン映画のEDってもしかして全部名曲ですか?

■東海道四谷怪談
1959年制作。だからか映画というより演劇の映像化という趣が強い。例えば背景がだいぶカキワリっぽかったり、舞台上をそのまま再現したようなカメラアングルなんかがそう。しかしたかを括っていると急に挑戦的な演出も飛び出してくるので驚く。室内なのに堀に倒れ行くお岩の幻影を見る伊右衛門のシーンとか最後の消えゆくお岩とか。顔がただれるお岩さんが毛を引き抜くところとかかなり怖かったし、メイクとかめっちゃ頑張ってたのでは。時代劇なのに殺陣を全然やる気がなくてフルカットされたときには潔すぎて笑ったけども。

■喰女-クイメ-
「女癖の悪い海老蔵が女癖の悪い伊右衛門役を演じる女癖の悪い主人公を熱演した多重構造の女癖悪い自虐」って説明されて笑っちゃった。(企画から海老蔵が噛んでいるらしいのでやりたくてやってるんだろう)劇中劇として四谷怪談が出てくるのですが、東海道四谷怪談のオマージュっぽいシーンもたくさんあってうれしくなりました。いや四谷怪談演劇では鉄板の演出なのかもしれないけど。柴咲コウの静かな狂気もおそろしかったけど、海老蔵は本職だけあって侍役にめっちゃ迫力が出る。地を這うような低い声がよく通ること…

■THE BATMAN-ザ・バットマン-
ひねくれ切ってへんに思い詰めているバットマン君が闇から手を伸ばして光をつかみ上げる物語。リドラーが俺たちは同じだ、と差し出す手を振り払って、発煙筒を掲げ持ったバットマン君はまるで宗教画のようで美しかったよ…この人にジョーカー(悪のカリスマ)やスーパーマン(生まれながらの光のヒーロー)がぶつけられるかと思うと今から嘔吐しちゃあう… 

■ナイル殺人事件
オタクのトークで興味がわいたし時間ができたので。王道のミステリにゴージャスな映像が相まってめちゃくちゃ面白かった~!ポアロさん、というか探偵キャラ、理屈っぽい変人であるというイメージがあったのだけど、親友に涙をこらえてモナミ、と呼び掛けたときの瞳に揺らめきは演技じゃなくて本物だったのかもしれないと思いました。エジプト行きたいよ~~~!!!

■ドラえもん のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜
全体的なテンポが好み(というか旧作ドラを勢いでどうにかする系と思っている)だし、ドラミ登場の流れとかも新の方が好きだし個人的には良アレンジだと思う。メジューサの改変は特に見た目がかわいいのもあってうれしいやつでした。ちゃんと丁寧にやってくれたし、美夜子さんにもちゃんと物語が生れたよね。美夜子ちゃんママの声がめちゃくちゃ久本雅美丸出しなのは面白かったけど。

■映画ドラえもん のび太の月面探査記
皆川純子声銀髪碧眼少年というオタクを絶対殺す装置と委員長みたいな女が出てきたのでちょっとなめてかかっちゃったがめっちゃよかった。少年のぼうけんのお話における一瞬の人生の交差と別れ、永遠の友情、なによりもすきなのでもしかしてドラちゃん映画だいたい好きなのかもしれないな… 長命種から「一緒には暮らせないけど、いつか君たちが豊かな星を作ったところを見せてほしい」と言われて「その信頼に応えよう」とおへんじができる短命種がおり、お前が一番好きだ!になっちゃった。まあその直後に長命種のみなさんが只人になっちゃったので見に行く気あるのか?と思って笑ったが…

■ブルータル・ジャスティス
この映画、ドラマティックに盛り上げてやる気なんてさらさらなくって、静か〜な会話の合間合間に現実と同じようにヌッと痛ましい暴力と死が人間を攫っていく。バックボーンが語られながら、物語として結末を迎えたとは言い難いような不条理な死。唐突な終わり。登場人物にも感情移入しきれるほど近づかせてもくれず、ただひたすらに現実だ…と思った。しかし一方OPEDは陽気なノレる曲(しかも監督作曲だったりするようだ)で、その温度差が腹立たしい。いじわる!

■ストレイ 犬が見た世界★
犬がすきだ…という単純な動機で見に行ったけどめっちゃよかった。主役が犬のドキュメンタリーである時点で脚本も演技もあるわけがないのですが、犬のまなざし、ふるまい、たたずまいがこんなにも物語を語るとは… あくまでも愛嬌のある人間たちに彩られた犬の物語でありつつも、人間が話し合うべき社会問題にも鋭く切り込んでいて、正直傑作なのでは…と思いました。合間合間に犬最高名言が飛び出すのもすき。

■うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー★
押井守しかしらないオタクとうる星やつらしか知らない私で「これは押井か?高橋か?」を検分しながら見るのが面白かったです。今思うと「ラムに惚れてる」を明言しちゃうあたるはだいぶ解釈違いだな…と思うが、「夢にとらわれちゃう」「時間と主観」はかなり押井守要素らしくもありつつ、うる星やつらとの親和性も高いベストなテーマだ。没になったという「あたるがラムを思い出せないシーン」とかはかなり原作に近い感覚だと思います。

ベルファスト★
全編白黒・一部彩色の演出からはっきりとケネス・ブラナーのメッセージが伝わってきてそれだけでいい映画なのだと思った。色褪せどなお、いや色褪せているからこそ美しい記憶というのはあって、果たしてどれほど悪い時代だったと教科書に載っていても、そこには人の暮らしがあり、愛があり、喜びがあり、悲しみがある。しかし朧気で美しいベルファストの思い出を愛する一方、今も色褪せずにいつまでも鮮やかな感動を伝え続けてくれるものも愛していて、それは映画、ないし物語なんですよ。とウインクするブラナーが目に浮かぶような。

【4月】

■ジョジョ・ラビット★
名作。改めて観ると何度も繰り返される「靴」のアップ、ダンス、自由。すべてがていねいに敷き詰められて最後のシーンにつながっているのがわかるね。キャプテンKがもう早く終われとすら思っていただろう人生の使い方を見つけた瞬間の嬉しそうな笑顔がほんとうに悲しくて安らかで泣いてしまう。

■聖なる鹿殺し
最初からうっすら不和はあって、でもそれって人間として当たり前の、集団における個々の距離の差でしかないのに、バリーコーガンがその傷をつついてぶっ壊したわけじゃないですか、まるで最初から壊れた家庭だったみたいに。バリーコーガン、不気味な存在としては十分なんですけどやっぱり個人の世界を破壊する規模の生き物であって、社会現象になるような悪のカリスマは種類が違うような(バットマンの話)

オートクチュール★
ドレス映画としては全然力が入っていないけどいい映画だったな…と思います。住環境による断絶とその解消ないし受容の物語。一見なに不自由ないかのように見えるパリの一等地に住む縫製職人と、ひたすらに自由なその日暮らしの郊外の団地の移民、どちらかの生活が正しいというわけではなく、どちらの生活にもそれぞれの喜びと問題がある。問題を解決し、時に受け入れながら、それぞれの生活を愛し、交わりながら生きる主人公ふたり。生まれ育ちによって植え付けられた呪いを解いて生きるふたり。めちゃくちゃよいしめくくりだと思います。

■THE POOL ザ・プール
タイのワニワニパニック!と思いきや、どちらかというと孤立無援なシチュエーションによる恐怖がメインでワニさんは名脇役といった風情。主人公のやることなすこと全部裏目に出て100回くらい「どうして…」って言った。ワンちゃんの最後、最も目にしたくない映像トップ3に入る。

■元カノ 付き纏う女
タイのオカルトホラー。全体的になんか既視感があるな~という感じなんだけど、元カノ怨霊の特殊メイクとか、血がめちゃくちゃ出る惨劇シーンあたりとかは割とヒエッとなった。主人公の男がマジで人の心がなさすぎるので余計な被害者を増やす。おばけちゃんはなんでこのクソ男を一回見逃してしまったん?

■モービウス★
コウモリ人間の能力エフェクトもかっこいいし、話もEP0にふさわしいし、マルチバースへの匂わせがなければめっちゃちょうどいい映画だったと思います。マットスミス演じるマイロくんの執着とご機嫌なダンスは是非見てほしい。概念ショタなので…(ただし想像しうる限り最もフランケンシュタインの怪物にふさわしい顔面を持つ) マイロくんの最後の「ごめん」の話をしますけど、あれって何がごめんなんだと思う?

シャドウ・イン・クラウド
開幕早々小さな銃器室に閉じ込められて延々と男たちに通信で揶揄されつづける主人公の姿は痛ましく、そのような社会的メッセージが込められているのかな…と思ったんですけど、途中から完全にひっぽ投げて楽しいことばっかり撮ってましたよね?オイ。メチャクチャ元気がでるのだが、これで元気出しちゃっていいのかな?っていう。(怒るべきかとまじめに考えてしまった)「限界なんかないよ!」ってどなってから急にメチャクチャやりだすのでおそらく制作側からの「今からやりたい放題やるからね!」の宣言だったんだと思う。主人公の身体能力が筋肉俳優みたい。

■名探偵コナン 瞳の中の暗殺者
どうやら蘭姉ちゃんの成長回っぽい。目の前で佐藤刑事が撃たれたショックで記憶喪失になってしまう蘭姉ちゃんであるが、最新の蘭姉ちゃんはそんなことで悲鳴も上げないし傷つかないし「拳銃の弾くらいなら避けられるわよ!」という感じらしい。自責の念を克服して銃撃を避けるようになった蘭姉ちゃん、戦士としての魂の格が高い… 

■バンブルビー★
ビーちゃんカワイイ!!!!!!の一点突破映画で笑った。バンブルビーくんは一瞬記憶を失っただけでおそらく人間に置き換えると軍人の成人男性なのですけども、そんなんしらんぜ!とばかりに幼児ムーブを繰り返すかわいいビーちゃんなのだ。彼とのふれあいで主人公が家族での立ち位置について見つめなおせたならそれでよかったんじゃないでしょうか。バンブルビーが「自分の名前はバンブルビー」と名乗るところ、私の一番好きなやつなので超よかったです。ところでトランスフォーマーってこういう楽しみ方でいいんですか?

■パペット・マスター(2018)
わざわざ2018と書いたのはシリーズが10作以上あるらしいからなんだね。ブルータル・ジャスティスと同じ脚本家が書いた作品らしく、やっぱり人の死に対する冷めた目線がいっちばん怖かった。スラッシャーなんだから最も輝くシーンは死に決まっているのに、雑に処理される人のなんて哀れなことよ。焼き肉屋で見たことがあるモツ描写が散見されてちょっと複雑でしたね。食道?気道?っぽいやつとか、シロコロホルモンみたいなやつとか、ちょっとおいしそうだなあ、っていう。

■モルグ 死霊病棟
81分。最近、90分に収めるなんてえらい!っていうのがなんとなく理解できてきました。パラグアイの死体安置所、死体があまりにも雑に管理されているので、お化けが出てくる前に服とか汚れそうだし早く帰ろうよ…という気持ちにさせられる。こっちが「来るぞ!」の覚悟が決まる前にガンダッシュしてくる幽霊ボーイには普通にビビらされたし、ふってえ脚がしっかり生えてる幽霊パパも嫌いじゃない。EDで急に長期シリーズの1話感出してきたので笑ってしまった。ちょっと続いてほしいかも。

■怪談新耳袋 牛女
なんだこれ!?ずっと悪い冗談みたいな映像が続くので困惑してちいかわちゃんみたいなリアクションしか取れなかった(敗北)。牛女ママの「牛っていうな~!牛っていうな~!」が本当に強烈でちょっと笑った後普通に呆然とするが、スペシャルお笑い回らしいのでこれでいいらしい。牛女さんの頭(うろこまみれで少しだけかしいでいる)は特撮の怪人みたいで好き。

■スケアリーストーリーズ 怖い本
面白かった。呪いの根源となっていた魔女が成仏したっぽいのに友達は帰ってこなくてエー!つっちゃった。次回作、できるのかな?ペールレディ、おとぎ話とかの影響が一切ない、小さな子供の言葉にできない「想像しうるいちばんこわいやつ」が形を持ったみたいで非常によいですね…優しく抱きしめられるのも本当に嫌。歌の使い方がこわい~と思っていたらジェーンドゥの人と同じだよって言われて納得した。

林檎とポラロイド★
「突然記憶喪失になる」という症状が一般的な病気として存在している世界。したがって当たり前にそのまま社会復帰できるシステムが成立しているのが面白い。しかし、描かれる主人公の物語は現実の我々と全く同じ苦しみをはらんだもので…。仮にすべてをリセットして、まっさらな自分でやり直しても、ひとはすぐに何かに心を寄せ、誰かを愛し、そしてたやすく傷つき、苦しむ。人生の悲喜からは逃れられないのだ。そのことを理解した主人公が歪にゆがんだ林檎をそれでも口に運ぶのは、痛みを愛することにした証拠だ。

■センター・オブ・ジ・アース
もっと激キモ不思議生物が大量に出てくるものだと思ったので、かなり「おとぎ話」に寄せた世界にしたものだ、と思った。特に「青い鳥」のエピソードの入れ方なんかがそれっぽかったのでてっきり制作はディズニーかと思ったが違った。(地底で飛ぶ生き物として選ぶのが虫でもコウモリでもなく鳥かよ、っていうのと、チルチルミチル的なアレを感じたので)でもやっぱりアトラクション感はあったよ。

■ジュラシックパーク
実は初めて見た。COtEのあとだったからみんなの絶叫・恐怖の迫力がダンチで笑っちゃった。私がネドリーを「このデブが仕事しねえから…」みたいにいじると同時視聴のオタクが同業者ゆえか「システム構築をワンオペでやらせる方が悪い!」つって擁護していたのがよかったです。毒吐き恐竜ちゃんマジでかわいいけど歯がメチャクチャ肉食でいい塩梅だ。最後、ラプトルを食い殺すティラノに合わせてメインテーマが流れるシーン、まるでヒーロー登場みたいになってたけど全然違うだろ。超楽しかったです。

■ハムナプトラ/失われた砂漠の都★
これこれ!原初の恐怖、肉食スカラベ(鳴くし威嚇するがすべてが嘘)。ワンパンマンでもやってましたけどね、打撃系が最強でも群体だったらメタれる、みたいなところはあるから、火を使われなきゃエジプト一番最強なのはスカラベなのよ。ホムダイの刑、うっかり取り逃がしたらそりゃ復讐しにくるに決まってんだから永遠に生かして苦しめるみたいな真似はやめたほうがいいなって思った。

■ハムナプトラ2/黄金のピラミッド
ドウェイン・ジョンソンとサソリのキメラですが、ドウェイン・ジョンソンは最強なのでもうちょっとサソリの比率は下げてもよかったんじゃないかなって感じする。おれたちはもうこのお口がカワイイハゲのおじちゃんにだいぶ愛着をもってしまっているので、最終決戦でのイムホテップさんの弱体化が本当に悲しかった。1のベニー同様「奴隷の言葉」を口から出してしまって屈服するのは好き。せめてアナクスナムンさんは一緒に死んであげたらよかったのに…

■ジュラシック・ワールド★
冒頭のテーマソングが鳴り響く「テーマパークに来たぞ!」シーンで本当にドキドキワクワクして、おそらくユニバによる刷り込みなんだろうが、もうこれだけで十分満足してしまうまである映画だ。ジュラシックパークに比べると恐竜たちの主役感が強くなっていてよかった。ラプトルちゃんたちはかわいいし、ティラノはかっこいいし、モササウルスは圧倒的に強い。オタクがモササウルスは生物っていうか即死トラップみたいなもんと言っていてよかった。

■ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク★
主人公パーティが一番の戦犯(恐竜を逃がしてキャンプを壊滅させる、二度にわたってティラノを呼び込む、ハンターの銃弾をくすねる、等)だったのがめっちゃ新鮮だった。人間はすべからくカスという強いメッセージなのか…?マルコム教授だけ前回の事件を経験しているので一人だけことの重大さを理解しているせいでずっと周囲との温度差があってかわいそうだった。ザウルスマタギのおっさんがカッコよかったがこれっきりらしくて残念だ… 個人的に恐竜君たちの自然な姿に基づいた健やかな「脅威」っぷりが出ててよかったな。人の殺し方が奥ゆかしいし。

■ジュラシック・ワールド/炎の王国
せっかく原題がパークと対比されてるんだから炎の王国なんてズレた邦題つけなきゃよかったのに。噴火で困るのは序盤だけだし。一応脚本もパーク2と呼応したものになっている(ザウルスハントとかね)っぽいけど、ハンターの魂の格が低いのと、恐竜たちが終始つかまってて全然いきいきしてないので悲しい。また一人だけことの重大さを理解しているマルコム教授による「ジュラシックワールド」のタイトル回収は非常によかったが、海水浴場にモササウルスがいるのは普通に災害としか言いようがない。

■ジュラシック・パークIII
スピノ君がかっこいいし、おなかの中から着信音が鳴り響く演出は「恐ろしい捕食者」の演出として最高なんだよね😉個人的に一番ゾっとしたのはプテラノドンやその雛によってたかってついばまれるシーンで、あれどうにもならなくないですか?やっぱり群体って強いし怖いよ。最後人類が大量に投下されたのはド派手に殺すためかと思ったら違ったのでだいぶ拍子抜けした。ティラノ君がひとムシャリして逃げ出す人類、で〆が一番美しかったんじゃないかな。

■ヒックとドラゴン★
ヒックとかわいいトゥースたゃに改題して。トゥースちゃんだけにとどまらず、ドラゴンたちの挙動がとにかくかわいいこと、お空の旅がなんとエキサイティングなこと。音楽もかっこいいのですが北欧の伝統音楽とかなのかしらね。ぜんぶぜ~んぶカワイイ最高映画だったけど、最後のナレーションでヒックがドラゴンのことを「ペット」つったので「フレンドって言えや!!!!!!!!!」つって切れてしまった。バイキングはシビアだぜ。

カモンカモン★
育児とは、しまいこんだ己の中の幼児性と向き合う行動でもあるのだな…と思った。大人なんて所詮たくさんの「自分を納得させる」理屈を着込んだだけの子供でしかないのかもしれない。作中では子供のリアルな(ガチ撮りらしい)インタビューが挿入されるが、その中でも際立って「大人びた」子の発言からも、彼が成長した、というよりはたくさんの理屈で自分を守っているんだというのがわかる。本当は誰でも理屈を全部捨てて不安定になってもいい。不安定になっても、受け止めてくれる人がいますように。ホアキンのおひげ触りてえ~ッ…

■プロメア★
好きだ…クレイ・フォーサイト…

■恐怖ノ黒電波
トルコの不条理ホラー。いやまあ事前に教えてもらっていたけど、製作者も国もジャンルもちがうのに「恐怖ノ」シリーズ!って勝手に銘打つのはどうなんだ。古い集合住宅にあるいや~な澱んだ空気みたいなものが一番じわっと嫌だったかもしれない。画一的な建築物に取り込まれていつの間にか不合理なルールに従わされているみたいな。トルコ社会への批判もたっぷり詰められていて、そういう意味でも重くてどんよりした映画だった。

■恐怖ノ白魔人
フランスのえぐえぐスラッシャー。イントロで露骨に悪そうな(酒浸りで暴力を振るいそう)父親が出てきたので好き放題野次を飛ばしていたら一番可哀想な目にあい、己の偏見を恥じるところからスタートした。白魔人の不気味なたたずまい、理解不能な動き、からの圧倒的な膂力。ひとつの脅威として普通に怖い。ラスト、白魔人を失ったお父さんが壊れちゃったのが悲しかった。解放はなかった…

■イップ・マン 葉問★
すごいアクション映画ってすごいんだよ!主演のドニー・イェンの動きがカッコよくてすごいのはもちろんなんだけど、前座として出てくる拳法の師父たちの動きも常人には真似できない超技なんですよ。VSサモハンのまるで舞のような一連の組手がやっぱり好きで、ドニーがこぶしを握るとサモハンが過剰なくらい身構えてて、あ!漫画で見るやつ!てアガっちゃったよね。ラスボスのボクサー君はドニーのファンって聞いてからずっとはしゃいでるようにしか見えなくって笑う。あこがれの人のやられ役になれたらそりゃ嬉しいよね。

【5月】

■ヘッド・ショット★
善のイコ・ウワイスが襲い来る暗殺者たちを次々に殺人シラットでなぎ倒す映画だ。人間が人間でありたくさんの関節を持つ以上イコ・ウワイスには絶対に勝てないのがよくわかるが、それにしてもイコさんはちょっとタフすぎると思う。中ボスと連戦して都度ボロボロにされてるのに普通にラスボスに勝つな。ところで、イコの「家族」のありようは間違っていたけど、そこには情が確かにあって、これで本当によかったんですか?って切なくなっちゃった。

■シャドー・オブ・ナイト
またイコ・ウワイスがサニー・パンに騙されてる!!今度は悪のイコさんが暗殺者になぎ倒される映画だ。彼のアクションはマジで痛そうなやつが多くてウエーとなりますね。美しくカッコイイフェイントが完璧に決まるので感動した。ガチすぎるキャットファイトや壮絶すぎるザック・リーの大立ち回りとか、インドネシアの岡田准一とか見どころがたくさんある。各々の掘り下げエピソードが欲しすぎるよ~!!!!!ってなっちゃった。

■スタート・アップ!
マブリーのコメディ映画。暴力を期待している人にしたら物足りないかもしれないけど、いい映画だと思う。登場人物は誰もかれも、ヤクザの親分だったドンソクも、息子に「一般論」を説く母親も、実は自分の人生に迷って道を探している、探していていい、間違ってもいい、とにかく前に進もうとする姿が美しい。というかエンディングがずるくて、もう道が分かたれたはずのみんなで南国でパーティをする、そんなあるはずのない美しい夢みたいな映像を持ってこられたら泣いてしまう。

■地下に潜む怪人
POVホラーじゃないじゃん!いや怖い演出は多々あるのだけども。この映画の本質は冒険活劇であり、古代の謎解きであり、世界ふしぎ発見なわけじゃん。カタコンベという舞台設定がちょっとロマン勝ちしてしまう…にしても冒頭数分ではっきり匂い立つ人物設定のフィクション性よ。「怪しい儀式をしているカルト教団っぽいひとたち」とか、「大量の人骨に挟まって動けなくなりネズミにちょっとかじられる」とか、地味に嫌なシーンはたくさんあった。それはそれとして邦題の「怪人」ってどれ?モグラくん?

■ダークネスフォールズ(黒の怨)
モンスターパニックじゃん!私にはピンとこないんだけどこの恨みつらみでボロボロのババアを現地では「フェアリー」と呼ぶんですか?この要請ババア、光に弱いという設定なんだけどなんか意外と耐えたり耐えなかったりするし、それはそれとして光より早く飛び回るので強い強い(警察署を壊滅させる)唯一生き残った警官が主人公を助けるために車で病院に突っ込んだり、ババアを避けるためライトが当たっている部分を選んで階段を飛びおりたり、これジャンルちがうな…ってなりまくった。

■死霊高校
ちゃんと怖かったんだが!?演劇の上映中に事故死した高校生の霊にちょっかいをだしたワルガキ~ズが全滅するだけのシンプルなPOVホラーなんだけど、すごくちょうどよく「怖いお化けが見たいよ~」が満たされてよかった。派手な演出なんかしなくても最低限の露出でちゃんと怖がらせてくれるチャーリー(悪霊)、硬派なオバケだ…。オチも結構気に入っていて、なぜってあの黒幕だった主演の娘は、直接的にはチャーリーとは何の関係もないんですよ。こわくね?

■イントゥ・ザ・ストーム
竜巻ディザスター映画。精神状態がバグッていたせいで親子愛とかの登場人物の物語が全部右から左になってしまい、ハリケーンがモノをぶっ壊してるところだけキャハハ…つって観た。竜巻って地震や台風に比べると怪獣っぽいよね。物理的な破壊を見える化してくれるじゃないですか、ディザスター映画じゃなくてモンスター映画に寄ってるというか、ていうかだから日本の怪獣映画で逆に災害対策っぽさが出るのかもしれない。

■ドクター・ストレンジ★
「ストレンジ」って本名なんだ。マントちゃんかわいいねえ!になっていたら「なんでもいいのかよ」って突っ込まれるなどした。マッツ・ミケルセンを撮る人間はマッツに欲をぶつけるのを我慢できないので今回も意味の分からないポーズで拘束されるという憂き目にあっていた。リビドいね。物語として結構パワフルというか、こまけえこたいいんだよ!感(特に背景を説明しなくてもティルダが闇落ちについて「仕方なかった」と言ったら納得される、性格がカスのストレンジにいつの間にか善の心があったことになってるとか)があって、私はめっちゃ好きなところですね。

■ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス★
なあモルドは?「数多ある世界線の中でこの自分だけが持っていない」と「数多ある世界線のどの自分も持っていない」だったら当然不幸というか絶望が深いのは後者なのでストレンジはほんとうに不幸な男なのですが、だからこそそれがどうしたって笑い飛ばして欲しいんだよな。喪失をずっと抱っこしている男が大好き!こっそりホラー演出を混ぜたり劇伴をおもちゃにしたりめちゃくちゃ遊んでて楽しい映画でもありました。血を出させなきゃどんなに無残な死体を出しても全年齢対象を名乗れるの狂ってると思う。

シン・ウルトラマン
ウルトラマンのバカ~~~~~~~!!!!!人外に置いて行かれると脳が気持ちいいですね。そういう意味では一番好きな人外を与えられたので個人としては十分ペイした。バディヒロイン長澤まさみのキャラクター像がちょっとマジでヤバイし映し方が最悪というのは本当。ウルトラマンとしての「特撮」っぽさはむしろ新鮮で楽しめました。縦回転や飛行着地の動きが子供のフィギュア遊びに直に接続してくるというか、「自分でも再現できる」んだ!と思って。

■導火線 Flash Point
締め技を使うドニー・イェンだ!!!!!!!!「不当な暴力かどうかは上層部が判断する」って警官ドニーが犯罪者を次々オーバーキル(マジで殺してる場合もある)しまくるので流石に処は免れ得なくない!?なに言ってんの!?みたいな気持ちがちょっとあった。己の鍛錬のための美しい拳法ではなく、敵を制圧するための武力としての暴力、相手の破壊に必死なのでかつてない迫力がありましたね…怖かった…

■ジェントルメン
2回目。ガイリッチーの「いつもの」という感じらしいし、何が特筆して派手というわけでもないなとは思うんだけど好きなんだよね。役者が全員絶妙だ。イギリス英語の理解不能な罵倒表現をたくさん聞くことができるし。コリン・ファレルのコーチが予測不可能で好き。ハナムくんの眼鏡とニットで隠し切れない「屈強」も好き(コートからマシンガンがはみ出ている)。

■遊星からの物体X
物体Xの造形は何を見た後でも全然色あせないなあ…と思った。犬のこと大好きなのに顔が割けてピロピロするとやっぱりテンションあがっちゃうしいずれピロピロするとわかってても犬はかわいい。

■ライフ
科学者おじさんが宇宙人に「反応あるかな?」で電気流して怒らせたりおとなしく足を食わせてたりしたのでほんまに!こいつが!こいつさえいなければさ!オタクが「お互いのどういう要素がお互いにどう悪影響を受けるか全くわからないのにとりあえず接触しようとすること、宇宙人とのファーストコンタクトは須らく悪である可能性がある」みたいな話をしていて、そんなん宇宙人に限らずよ、人類は他者と接触できるほど成熟してない原始生命や。みたいな気持ち。ダボがよ…

■ザ・ボーイズ シーズン2
復習。ザ・ボーイズといえば騎乗位頭蓋つぶしやアナル爆死などの最悪死亡シーンだけどこれって全部シーズン1だよな、2何してたっけ?とか言ってたら普通に全然超えてたので安心しました。改めて観るとブッチャーさんマジでヤバイ人だ。瞬間沸騰瞬間冷却だからヒューイの「我慢⇒爆発」のタイミングが理解不能で不気味に見えるんだろうな…無理…

■ゲヘナ
旧日本軍の残した地下施設と現地民族の呪いがまじりあい…みたいな設定や、死ねないまま永遠に閉じ込められてしまう、みたいな結末は手塚治虫とか藤子不二雄の悪いオカルトホラーみたいで好きな質感だな。日本人監督らしくて納得だ(本業は特殊メイクアーティストらしい)。メイク技術はやっぱりすごくてレザーフェイス爺・お化け爺・頭を砕かれたペペなど、本気のお顔が多くてよかった。お前は、絶対、死ね。

■悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ
ちゃんとチェンソーでマサクり倒していたのでよかった!1のファイナルガールが打倒殺人鬼を掲げ強いババアに進化しているのだけど、残念ながらレザーフェイスの方はこの人にそこまで興味がないんよね。だから復讐の炎をたぎらせる老女に当の本人は「誰?」って反応を返し速攻で殺す。この人の人生って何だったんだろうと思う。レザーフェイスも大好きなママを失った悲しみから人体加工したいわけでもないのに大量殺人を行っているし、主人公の女はサバイバーズギルティを克服できなかった。なんて虚しい物語なんだ…

■女幽霊
作中で「幼いころに見た怖い映像の話をしたらいつの間にか祟りが生れていた」という話をする、「幼いころに見た怖い映像」の再現らしいんですけど。薄ぼんやりした記憶を再構成した結果、元の作品から全然かけ離れた恐ろしいものが生れるということが怖くないですか?足りなかった部分はどこから来た何によって補われたんだろう、変わってしまった部分はなんでそうなったんだろう。無から生み出される恐怖が己の中にあるというのが怖い。

■サスペリア(旧版)
ふ、不条理~ッ… 想像の中の「残酷な古い映画」ってあるじゃないですか、女が叫んで怪物に残酷に殺される、おどろおどろしいイメージの… そういう「知ってるけど知らない」っていうところにバチっと具体例としてハマってきた、という感じがする。ガラスにたたきつけられる顔面、浴びせかけられる蛆虫、絡みつく鉄線などなど、当時の撮影技術を考えると当然体を張っているのであろう絵面の迫力がすごい。強烈で悪趣味で絶対に忘れられない映画そのもの。けどこれを煮詰めて2018年版サスペリアができる意味は全然わからん。何?

■サスペリア(新版)★
コンテンポラリーダンスが冒頭こそクールに感じるのに、物語で呪術的な意味合いが付されていくにつれてどんどん悪魔的に見えていくのが恐ろしい。最後には邪悪な儀式そのものにしか見えない… 魔女の物語であるらしく、たしかに非常に残酷な結末で、けども不思議と読後感(?)は爽やかだった。致命的に損なわれた人生を送った老人へ魔女が贈る「報い」は絶望でもあって、救いでもある、まさに魔女の与える報酬に相応しいというか… 魔女が無邪気に残酷にしたたかに暮らしているの、よい。

■ザ・ボーイズ ダイアボリカル
どういう構成!?スピンオフとも言い難い、世界観を共有しているだけの全然関係ない話もあれば、本編でやった方がよかっただろレベルで重要なホームランダーの過去編もある。悪趣味な内容も多いけど、ザ・ボーイズに求めていたやつとそうじゃないやつがある。有名アニメのパロディもある。なんだこれ!?でも全体的に面白かったな…

犬王
舞台、熱狂、そしてそこに立つ、そこに在る人間どもへの超熱烈なラブソングだ。ありとあらゆるステージをオマージュしているから、マイケル・ジャクソンじゃん!クイーンじゃん!デヴィッド・ボウイじゃん!新体操?いや羽生結弦じゃん!みたいな、「知ってる」やつが無限に出てくる。舞台の上で謡い舞い語ることは供養であり、恨みにとらわれた魂たちの成仏の始まりである。それを踏まえて、犬王が「語られなかった」というのは、わだかまる己の名無しの友に再び会うためにあえて選んだことではないかと思ったり。

【6月】

■ストレンジャー・シングス 
シーズン1
じっくりコトコト話を進めるので、前半4話は人間の生活描写に終始している印象が強い。まさか1話でいなくなったウィル君(主人公のマブダチ)が最終話まで戻ってこられんとは思わないでしょ。ウィル君ママがどんどんおかしくなっていく様子はよかった。姉兄スティーブのねちょ人間模様が最終戦で一気に打ち解けたりしたらカタルシスがあったかもしれないけどまだ三角関係やるらしい。何?
シーズン2
町全体が取り返しのつかないことになっていて最高~!ウィル君がどんどん狂っていく様が本当に恐ろしくて満足。悪魔祓いシーンのウィル君、シーズン1での出番のなさを取り返して余りある狂気ぶりだった… 。ところで、マックスはともかくとして兄ビリーの意味ってなに?暴力的で何をするかわからない人物として描写されている上現時点での物語上での役割がわからんので急に切れて子供たちをボコボコにし出してもおかしくなく、いやな緊張感がある。
シーズン3
全体的に夏!うかれ!恋!みたいなテンションがあってめっちゃ困惑したが、モンスターが跳梁跋扈し、少しずつ人間を取り込んで侵食してくる…という流れが完璧で面白かったです。乗っ取られた人間が溶けて正体を現し、ちょっと骨とか落っことして逃げていく不気味な様…かわいいね…。兄ビリーですが、あれは救済と言ってよかったんだろうか。母親との幸せな時間を失ったがためにあの粗暴な人格と熟女好きという癖がはぐくまれたのは間違いなく、妹の声よりも記憶を覗き見た赤の他人からの声に反応したビリー。成長とか、歩み寄りとかじゃなくて、ただ単に我々の手元に彼を理解する鍵が手に入ったというだけなのではないか。
シーズン4
いよいよ各々の話がとっ散らかっていき、ついには全員集合しないまま一部メンバーはロシアから最終決戦に参加してて笑った。ウィル君はず~っと曇ってるね… 001とゲートの回収はめちゃくちゃ気持ちよかった。しかしこんな大惨事になってしまって、次シーズンはどうするんだろう。もうパパも死んだし(一回フェイント入れてたのが面白かったが)、個々のパーソナルな課題ってあんまりなくないか?エルがいよいよ衝動に任せて超能力でなんとかするのをやめる、とかかもしれないけどそれってこんな最終決戦でやることじゃないんだ。

■レイジング・ファイア
Blu-rayが来たので。オタクなので感情の話をしちゃいがちなんですけど最初から最後まで口じゃ説明できないくらいすごい動きがバンバン飛び出してくるすげえ映画だ。走ってくるトラックに?車をぶつけて?その直前に運転席から飛び出し?はねられそうになった子供を抱きかかえ?ジャンプして?車とトラックに挟まれないように?屋根に飛び乗る(???????)

■死霊館 悪魔のせいなら、無罪。
「これは実話に基づいた物語である!」、からの「悪魔がいるなら弁護してあげる」という弁護士の即落ち2コマ、そして結局「有罪判決で懲役5年」、パワフルで好き。前半に出てきた知恵者の老人が実は秘密を隠していたという展開も、正義の魔女ロレイン奥様VS邪悪な魔女という構図、愛とフィジカルで勝つという結末も、ホラーというよりは王道ダークファンタジー少年漫画のテンションで楽しかったですね。一番怖いのは実際の悪魔祓いの音声かもしれん。

■3人のキリスト
電気ショックなどの非人道的行為が医療として認められていたさなかに対話で精神病を寛解させようという取り組みが淡々と、それでいてふつふつと情熱がにじむように描かれていた。ただたまたまキリストを自称する患者が3人いたから行われた治療実験だったはずであるが、救済を行おうとしたり、洗礼を行ったり、できすぎなくらいキリストであるべきだったし、本当に彼らがそう信じていた、治療を受けるべき彼らが誰かを救おうとしていることが切なかった。この治療は電気ショックより倫理的であっても、現代で主流なカウンセリングよりは非人道的なのだと批判されているらしい。人を救うのは本来神の御業だから、人が行おうとするのは難しいのだろう。

■ゴースト・シップ
次々と起こる怪現象は心霊現象というよりは何らかの精神攻撃のようで、もの言いたげな幽霊はいったい何を訴えたいんだ…?と謎が深まりだすと同時に畳みかけるアクシデント!ホラーというよりは幽霊に発言権のあるミステリサスペンスのような。とすれば残酷凄惨な回想シーンが現場の再現みたいなテンションだったのもしっくりくる。虫を食うところが嫌すぎてうわ~~~~~~!!!!!って叫びまくっちゃった。

【7月】

■ブラック・フォン
少年萌えムービーだった!!特にロビン君が完璧でよかったですね。イーサン・ホーク、私は顔を出しても十分不気味(物憂げな顔のサイコパスって怖くない?)と思ったんだけどやっぱり仮面がカッチョヨすぎるからかほとんど顔出しをしなかったですね。意外と穏やかな(?)時も多く、その分タガが外れた瞬間の狂気が引き立っててすごくよかったと思う。弟は上裸で座って徹夜する兄の姿をみたらどう思っていたんだろうなあ…

■TOBIRA 魔の入り口
悪魔がやり手!子供をさらう悪魔なんか話が通じるわけがないし干渉したら手痛いしっぺ返しをくらうもの…という固定観念はもう古いのかもしれない。最先端の悪魔はドアインザフェイスを駆使してアホの人間に契約書へサインさせるのだ!悪魔祓いなのに交渉のテーブルで手招きしてエクソシストを通訳とし、契約を説明するしペンも貸してくれる悪魔さんビジネスパーソンでわらった。被害は甚大なのだが…

■ナイトブック
児童小説のかおりのするかわいいダークファンタジー。なんだけど、「シュレッダー」というクリーチャーの造形・挙動が悪意マシマシすぎ、確実にこどもたちのトラウマとなるだろうと思ったので大人コラ!と思った。魔女のファッションの気合がすごく、登場するたびにお着替えをしていてギラヤバ女萌えキャラとして盛りすぎで大変よかった。いたいけな子供にモンスター最高!ギラヤバ女最高!を植え付けて最高ナードを大量に生み出してほしい。

■ウィリーズ・ワンダーランド★
ニコラス・ケイジの「迫力」だけで一本映画ができるんだ!終始無言のニコラス・ケイジが「殺人アニマトロニクスをバキバキに破壊するターン」と「異常な熱量で丁寧に掃除するターン」と「酒を飲みゲームをし踊るターン」のミルフィーユが頭に詰め込まれ、視聴者は何の映画を見せられているのか全く分からなくなってくる。こういう映画がたくさん作られてほしいからニコラス・ケイジにはまた借金まみれになってもらいたいな…

■シャーロック・ホームズ(2009年)
ジュード・ロウのワトソン君、ワトソン君界の中で異色のセクシーさ、驚異の強さなのでは?吊られるホームズをにやつきながらからかうワトソン、すげえ癖でよかったです。「ホームズとワトソン」という鉄板バディの枠組みにどれだけ趣味に振った組み合わせをはめ込めるか試してるみたいな趣さえある。マークストロングがドラキュラみたいなビジュアルにされているのもよかった…

■ゼロ・グラビティ★
「もうおとなしく死ぬしかない」っていう待ちの時間って本当に怖くないですか?例えば宇宙で酸素が尽きるのを待つだけ、とか。気が狂いそうになって癇癪を起したり、諦めたつもりでも全然落ち着けなかったり、感情のジェットコースターに振り回されてクシャクシャになる想像をしてはおびえてしまう。「お前だけは助かれ」って手を離して飛んで行ったジョージクルーニー、覚悟を決めるのに放出されたアドレナリンが引いていくにつれ、きっと何度も後悔して、残した相手を憎んだりうらやんだり、じわじわ死ぬまできっとぐちゃぐちゃだっただろうな。本当に怖い。

■呪詛★
徹頭徹尾逃げのないオカルトホラーで超よかった。主人公の彼氏の弟が発狂しちゃったとき、横向きに白目を剥いたのが超怖くて印象に残っている。上向きの白目なんかは気絶の表現として見かける中で横、新鮮でよかった… 最後の「仏母の貌」も、上げに上げたハードルをちゃんと写したうえできっちりクリアしてきたのでさすがに感動した。欲を言えば、お経を目に焼き付けるシークエンスは、逃げ場のない真っ暗な劇場で体験したかった。目を閉じれば瞼のうらにも待っているのだ…

■ラブ、デス&ロボット3
「彼女の声」みたいな作品と「小さな黙示録」が同じ箱に入れられているの、(どっちがいいとか悪いとかじゃなくて)やっぱりすごくて挑戦的な試みだなあと思う。彼女の声のキャラデザのイラストを観たのですが、何がすごかったかって耳の形がちがうんですよ。エルフ耳とかのレベルじゃなくて高さ・立ち方・形、を明確にデザインの一部として描き分けている。ほかにも瞳の形や位置まで考えて決められている。キャラデザにあたって取り扱う情報量が段違いすぎてちょっとショックを受けた。一生あのレベルには到達できないという悲しみがある。でも一番好きなのは「巣」ですね。

■ヨコクソン
コクソンとは関係ないらしい。どう考えても死ぬために出てきた絵に描いたような美丈夫霊能力者(中華BLみたいなキャラデザをしている)が冒頭から黒いゲロを吐きまくったりしていたが生還したのでよかったねえ、と思った。頑張った顔をしていたけど一番仕事したのは主人公だったね。悪鬼に負けちゃったけど… 悪鬼さんがとんでもねえ威力で人間を爆破するところですげえ爆笑した。「うらめしや~」って出てきそうなすすり泣きからの爆破て。絶対ウソ泣きじゃん。

■ザ・ビーチ
てっきり日常にヤバイおじさんとおばさんが食い込んでくる系サイコホラーなのかな?と思って見始めたら全然違って、アレっと思った瞬間には「海から来たヤツら」にすべてが乗っ取られ取り返しのつかないことになっていた… ヤバイおじさんが静かに静かに海に向かって歩き続け、音もなく還っていく姿はこちらが能動的に目を凝らして見つめてしまう、とても怖いシーンだった。直後から異形が直接的に姿を現し、破滅に転げ落ちていくことを考えてもあんなに「絶対にそんなことしてちゃいけなかったのに目をそらせなかった」強烈な体験になったな。

■NY 心霊捜査官
悪魔祓い映画。普通は悪魔に憑かれた子供や女性なんかが出てきて、何とか追い出したけどもまだ終わっていない…!というのが掴みとしてあり、クライマックスで悪魔本体と戦う、みたいな構成をしているイメージなんですけど、この映画でまず戦わされるのは…ライオン。地道な捜査を続けてようやくつかんだ犯人の悪魔祓いがクライマックス。悪魔は犯人の口を借りた言葉だけでしか登場しないところが、現実の悪魔事件らしさなのではないかと思った。悪魔のせいで気が狂いボロボロになった人間、蛆が繁殖しすぎていてちょっと動く最悪の死体等、目をそむけたくなる人体も目白押しですごかったな…

■ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス
冬があまりにも厳しすぎるので死体は埋められず腐りもせず、なのでとりあえず数日納屋にまとめて積んであるという、我々の感覚からすると信じられないような遺体管理をしていた。死んだ人がそのまま残り続けるのが当たり前な地域の死生観ってやっぱり日本とは全然違うのかもしれない。幽霊たちは静謐で妙に美しい部屋にただ安置されているだけで、とにかく「(死後の世界?ここではないどこか?に)連れていけ」と叫んでいる。体があっというまに醜く朽ち果てていく、というのがない世界での死はこんな風なのだと言われたら納得がいく。それはそれとしてポルターガイストのあばれぶりがすごくて驚いた。

■マッド・ハウス
今話題のカルトの洗脳の話だ。洗脳ってもっと神秘体験などを通じて盲信とか狂信を植え付けるようなイメージがあったけど、とことん疲弊させて「もうそれでいいです」から逃げられないようにする場合もあるのだなと思った。もうそれでいい状態がずっと続くと「これでいいのになんで?」「私の選択を乱すな」になっていく、カルトへ逆らう負荷は世間に逆らう負荷より大きい、と学習させてしまえば、あとは勝手に孤立していくのだ。オチは早大にぶん投げておりある種潔かったのかもしれない。

■プロミシング・ヤング・ウーマン
作ってくれてありがと~!という気持ちと、こんなもの作らせるんじゃね~!という気持ちと。復讐劇としてめちゃくちゃ面白いけど、けど、けど、この作品でやりたいこと言いたいことってあの男ひとりの人生に報いを与えてよかったね、じゃないじゃないですか。そもそもの根本的なところは現実も含めてなにも変わってない。悔しいでしょ。こんなものを作らないといけない現実がよ。

■グレイマン
ハチャメチャだ!予算を潤沢に使ってとにかくアクションにぶっ飛ばした映画だった。ライアン・ゴズリングはタフとか言うレベルではないし、補足不可能どころか都会のど真ん中で爆弾飛び交う銃撃戦を繰り広げたので全世界に認識されてしまっているだろう。クリス・エヴァンスさんが「スーパーマン」とか「ケツ」とかいじられまくってるのはなんかOKなんですかね?

■ゴーン・ガール
てっきりベン・アフレックの認知のゆがみが徐々に明らかになっていく映画なのかなと思ったの。だってベン・アフレックは目がキレているから。悪いことをしてふてぶてしくしらばっくれているだけなのだろうから。ところがどっこい!ベンアフは(浮気はしたけど)完全にサイコパスの妻に人生をいいようにされてしまった哀れな夫なのであった… と、そのはずなんだけどこの人はちょっとカッとして力をこめると普通に人を殺しちゃいそうな感じなのでずっとほんとうにエイミーの勝ちでいいのか?って思う。いつか暴力にさらされて大変なことにならんか。ベンアフの雰囲気がなによりも印象を攪乱するすげ~映画だ。

■バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生
ただひたすらベンアフレックが正しくお怒りなので本当に怖かった…バットマンのマスク、なんであんな眉根を寄せたデザインなんだ。ちょっとくたびれたベテランのバットマン、小さい時の「お父さんがおこってる」を絶妙に刺激する。大きくて強くて私を守ってくれる人が何かに憤っている姿…。一方でスーパーマンはむせ返るほど正義漢なのがよかった。確かに誤解と和解の物語からは逸脱しないんだけど、そのターニングポイントを母マーサでつなげてくるところはエモーショナルで個人的に好きな改変だな。アクアマンくんがしょっぱいUMAみたいな撮られ方してるとこ本当に好きです。

■ラリー スマホの中に棲むモノ
ラリーは恐ろしい化け物なのですけど、ひとの孤独から生まれたと述懐し、さみしいから友達を連れて行こうとする生き物、じゃあちょっとキライにはなれないな…って思ってしまった。顔がかなり不気味だが表情豊かで、主人公じゃなくてママが付いてこようとしたときに「お前じゃない!」と顔面で主張していたのがいとおしい。主人公をいじめる少年が事件から学んでしっかりしたいい子になっちゃってるのが面白かった。いじめっ子、というよりは正義漢がちょっと暴走気味の委員長タイプだったのかな。

■クラシック・ホラー・ストーリー
劇半とか色調とか雰囲気とか、確かに古典的でいいね、ちょっと退屈だけど…と思っていたところ、なんか突然イタリア映画界に対するあてつけのような主張が始まってしまいなんじゃそりゃとなった。どう考えてもミッドサマーに影響を受けすぎだろと思っていたが、そこも含めて皮肉だったらしい。オチのつけ方とか、一部やりすぎで引いちゃった。

ソー ラブ&サンダー★
タイカ・ワイティティのことたぶん一生好きかもしれない。描かれるのは悲しみを発端とした戦いと、戦いによって生まれる悲しみ。なのにこれでもかとジョークをぶちかまし続けて、ずっと軽薄なテンションで。悲しむ暇なんて与えてくれないのがワイティティのLoveなんかなと思ったり。でけ~声のヤギあたりがどう鼻白んでも力業で笑かしに来るんですよね。最終決戦でソーの軍の仲間たちとして子供を選んでくれてありがとう。無責任にこどもたちに「お前ならできる!」って言ってくれる大人ができる人って一握りで、ワイティティはその一人です。

■ハウス・オブ・グッチ
アダム・ドライバーとレディガガ、演技力もものすごいのだけれどビジュアルの再現度がやばくて笑ってしまった。レディガガ何でもできるし面白すぎる女だし持ちすぎている。持ちすぎている人がいたっていい。話の筋は全部Wikipediaに書いてあるようなことなので、やっぱり見どころはお洋服や役者の演技だよなあ、と思った。パオロ親子の着てるシャツが常にかわいかったが、これジャレッド・レトなのか…

■女神の継承
胸糞が悪くてよかったです。ドキュメンタリー風にしとやかにはじまり、ぼんやりしているうちに最悪の怪異のど真ん中にたたきこまれる。気づいたときには文字通り後の祭り。悪霊に取りつかれた少女の毎晩の奇行に気を取られている間に対策を練っていたはずの主人公に位置づけられていた霊媒師が死体で発見されるという展開が恐ろしく迫力があって。なぜ死んだのか、どうやって死んだのか、悪霊は関係あるのか、その死について何も教えてもらえないのだ。結局女神はいたのかもういないのか、それすらもわからないが、人類は人類から生まれる闇に苦しみ続けるだろう。末法思想的とでもいうのだろうか。

■ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
虫じゃん!恐竜よりよっぽど虫じゃん!虫だろうが!!!!!!!
恐竜映画としてはよくわからないパーツ(虫とかカッコイイ飛行機乗りとか)が多い印象なんだけど、体感2時間なかったからなんだかんだ楽しんじゃったんだな、と思う。テーマソングの使い方は絶対違うと思うけど、いろんな種類の恐竜が見られたしカットインがモンスター!って感じなのもいいし、過去作が好きな人への目くばせもあって。うん、やっぱいいお祭りだったな。ウー博士が清々しい顔で人類を食いちぎるイナゴの群れを見送っていたのは笑ったが…お前そこ危なくないか?

■ムーンフォール
「こんな風に夢が叶ったらさ、死んでもいいって思っちゃうよ」って野良科学者くん(周囲には陰謀論者かなにかと思われている)が宇宙に飛び立つ姿を見て言ったところ、まさにその通りになったので清々しく見送ってしまった。ところで月を食い止めたところでいろいろ手遅れなのだけどいいのかな…地球環境はめちゃくちゃ変わってしまったのではないか。敵のAIクリーチャーが絶妙にきもいのに無機質で好き。

■インターステラー★
めちゃくちゃ良かった… 宇宙の途方もなさにただひとり放り投げられて、それでも人類は押しつぶされてはいけない。ノーラン監督の、この運命がすれすれで交差し、指先一つでギリギリつながっていて、伝えるべきことだけを伝えてお別れする感じ…すっげえすきだ…名残惜しむ暇もなくて愛を伝える暇もなくてでもすべきことだけ渡して、手放して。物語を二つ折りにしたときにちょうど一つずつ重なる部分を開示されるたび「ア~!」と情けなく声を上げ、泣いた。愛の力が世界を救うんだなあ…

【8月】

■ハロウィン(2018)
本物の根に持っている老婆を見せてもらった。殺人鬼への恐怖がいつの間にか強迫観念に変わり、結果実の娘とも疎遠になってしまう、人生をめちゃくちゃにされた老婆。ブギーマンなんて襲ってこなかった方がよかったに決まっているのに、まるで彼女が報われたかのように錯覚しそうになるね。娘さんの演技がチャーミングでよかったよ。ブギーマンは非常に不気味だし屈強だし人をサクサクころすのだが、面白人体破壊というほどでもなかったかも。雰囲気勝ちですね。

■ハロウィンKills
なんて最悪な導入なんだ…⇒なんて最悪な結末なんだ…
結構致命傷というか少なくとも苦しむくらいのダメージを与え続けていると思うんだけどマイケルが全然応えていなくてすごい。次回作で倒せるものと思っているが、「まだ終わっていない…」というエンドの可能性も全然あるなあ。投身自殺のシーン、本当に悲痛でよかった。

■ウィッチサマー
良かった!叙述トリック的な映画だったというか、最初から視聴者は魔女の手の打ちだった…と明らかになった瞬間が気持ち良すぎて思わず声が出てしまった。魔女(というか邪悪な土の精霊?)の儀式に使われるアイテムもよかったし、正体を現した魔女がクリーチャーじみていて好きです。エンディングもめちゃくちゃ美しく絶望を匂わせてくれるので本当によかった… 伏線の張り方・回収の仕方がめっちゃ上手ですわね。めっちゃ上手でしてよ。

ドラゴンボール超 スーパーヒーロー★
ピッコロさんのことがみんな大好き。ピッコロさんやベジータを指して「あいつら悪役だったこと忘れてやがる」ってよくイジられるからこそ、スーパースーパーでは「悪い人だったことも良い人だったことも忘れてないよ」「良いやつじゃなかったけど悪いやつでもないからこれからもやっていこう」のメッセージがはっきり描かれていてよかったな。ぬいぐるみの数だけやさしさがあった証左だもんね。ガンマちゃんたちも超かわいい

■ロードオブザリング 二つの塔
ゴラムにも幸せになってほしいんだが…?一番心を食い荒らされて、ぼろぼろになって、どうにもならないのはゴラムの中のスメアゴルくんだろ?ひとなみに欲も悪性もあったかもしれないが決して悪人ではなくて、友達を殺してしまったことにうろたえてしまうスメアゴルくん。指輪と出会う前のスメアゴルの一番の幸せって何だったんだろうねえ…

■ロードオブザリング 王の帰還★
サム!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
最後のとき、みんながどれだけ別れを惜しんで涙をながしても薄ぼんやりとした表情しか浮かべられないフロドの、それでも彫刻みたいにきれいな顔が本当に悲しくて… かわいいかわいいホビットちゃんたちを可愛がっているガンダルフがエルフの国に連れてっちゃうのもわかるな… 

■インディ・ジョーンズ レイダース/失われた櫃
古すぎる映画でまれによくある、テンションが全部狂ってるやつだ…!有名なヤツ(三日月刀を振り回してさあチャンバラだぜ~とニヤつくごろつきを銃で瞬殺するやつ)でキャッキャしてたらおんなじテンションでヒロインが爆破されたため悪い冗談で本当に死んだのかと思った。地味に驚きだったのが、普通にオカルト的な悪霊がいたこと。ヤバイ呪物を適当な倉庫に仕舞わないでほしい(しかもそれっきりらしい)

■インディ・ジョーンズ2 魔宮の伝説
今だったら許されない風評被害の数々に笑ってしまうが、私たちは心のどこかでこういう「ヤベ~因習のある民族がいたらなあ!」という欲望を消せないのである。ずっと前からお前の頼れる小さき相棒だったよな!みたいな顔してショート君が出てきたのにマジでこれっきりらしい。悲しい。地味に飛び蹴りがかっちょいいカンフー少年だったのにな。大量の嫌虫チャンスもあり、大変最悪でした。

■インディ・ジョーンズ3 最後の聖戦
インディの二人の父の話。インディ、実の父親からは古代遺物と女に対する好奇心と、知らない男からワイルドでダーティなやり口と帽子、がっつり影響を受けている。若き日のインディの一日に現在の彼を形作る全部が詰まってて笑っちゃうな。ショーン・コネリーとリヴァー・フェニックスの親子ってちょっと当時は女の子を破滅させるオーラがすごかっただろうなあ… それはそれとして謎解きの温度感がちょうどよくって好きです。これくらいの謎解きをもっと見たいなあ~つったらオタクにアンチャーテッドをプレイしとけと言われた。

■インディ・ジョーンズ4 クリスタル・スカルの王国
一番好き。だけど一番評判が悪いらしい。オタクも扱ってるのが宇宙人だから一番好きって言ってた。私は親子の継承の話がエモかったから一番好き。3の若かりし頃のインディの帽子のエピソードを踏まえて、息子に「まだ早い」って被せてあげないのはめちゃくちゃ渋い話なんですよ。5をやるからにはあの帽子をかぶせてあげてほしいよ当然、頼む… ところで次はどこの不思議を発見しに行くんだろう。エジプト⇒インド⇒ヨーロッパ⇒アステカときたからいよいよ東アジアかな。

■マリグナント
2回目。やっぱり異常に建造物がゴシックでカッコイイのと、アクションが派手だし新感覚だしホラーというジャンルにとらわれないすごい映画だ。個人的にはシアトルの地下都市という最高のロケーションを教えてくれたところにも感謝したい。ガブリエルの使う武器も「トロフィーを途中でへし折る」というウルトラCでメチャクチャゴシックカッコイイ翼のナイフにすることに成功している。すげ~よ。

■ザ・リチュアル いけにえの儀式
ヤバ儀式がみたいでちゅ~とごねたらオタクがお出ししてくれた一本。序盤はかなりクリーチャーに追われる系のスリラーだったが、焦らしにじらした後から一気に怪しい人々にからめとられ、気が付いたら儀式に巻き込まれている。期待したものをちゃんとくれた。主人公がしわしわのミイラのようになってまで永遠に生きている人たちにそっと火を放つシーンがあるのだが、まるで寝ているこどもに布団をかけてやるような態度だったので狂ってて怖いなと思った。クリーチャーデザインがすごいです。

■アンビュランス
ジェイク・ジレンホールの目の演技すごいなあ、「弟が本当は大事なんだけど基本サイコパスのクズ」の温度感を絶妙に使い分けていて。そしてそんなやばいやつ(計画的に強盗をしている時点で話が通じる相手でもない)なのに、医療の現場でうろたえたり弟とけんかしているところを見て、最後死ぬときにはさみしいくらいの親近感を覚えることができる。あのトラックに乗ったみんなが仲間だった気がするようなうっすらとした連帯感。ストックホルム症候群は、いかにも根が善人な弟ウィルへ心を開いてしまうことよりもこういういかれた男にも親しみを持ってしまうということが恐ろしいのだろう。

■鳥(ヒッチコック)
かの有名な…。古いだけあって露骨に合成なのがわかるんだけど、結構見栄えがするような画面になっているのですごい技術と努力の結晶なんだろうな、って思った。CGなしにあの量の鳥を映像上に表現するなんて真似は、今となっては途方もなすぎてだれもそんな努力払えないだろう。世相を反映したものか、お洋服がみんなしてカワイイ。一番かわいいのが動物愛護思想の強いおばあちゃんのお洋服だ。

■モンスターハンター
やっぱり尺が狂ってるのよ。ディアブロスに手こずりすぎだしトニージャーと意味もなく格闘しすぎだしゴアマガラがかわいそうだろうが!格闘が撮りたくて仕方なかったのはわかるけども、ミラジョボビッチがトニージャーの大事そうな神像(意味深に匂わされるが特に謂れについて説明されることはない)を吹き飛ばしてガチの喧嘩に発展するところ、なんぼなんでもおとなげなすぎる。

■スペル(2020)
サム・ライミじゃないほう。この露骨な(都会の)黒人から(田舎の)黒人への蔑視を描くのって結構こわいな… 監督はイギリス生まれのジンバブエ人らしく、そういった層の中には確かにあるんでしょうね。呪術師のおばちゃんの怪演により、おしつけがましい中年女性の不気味さが際立っている。「おそらく親切で言っているんだろうから…」というこちら側の聞こうとする姿勢がなくなったときの「話の通じなさ」というか、「ごちゃごちゃ言わないでおばちゃんの言うとおりにしておけばいいの!ね?」みたいな一方通行の態度のこわさ。それはそれとして呪術も楽しかったし釘を抜き差しして変な汁が出るところでは無理すぎて本当に発狂した。

■ウーマン・イン・ブラック
雰囲気が良すぎる。ダニエル・ラドクリフが若くして妻に先立たれたお父さん役だったんだけどさすがは元ハリポタの男(言ってはいけない言葉)だけあって誠実そうな青年がハマるのである… 必死で泥沼から死体を上げる悍ましさをあれだけ浴びせかけておきながら、怨霊にはもはや理屈がないので普通に改めて呪われてしまうのが悲しすぎる。ところでチワワが二匹でてきて最高でした。チワワ、小さいしよく吠えるしちょこまかしてるし不気味な顔もかわいい顔もできるしホラーわんこに適性があるのでは。成金の座敷犬以外にもチワワのポテンシャルを引き出してほしい。

■ウーマンインブラック2
時代がだいぶ下って戦時下となったためか、やたらと火力(物理)が強くなっていた。1でろうそくをつけたり消したりする程度だったところによくわからんでけえ松明とかの軍備が提供されてしまったので…。結果として洋館のゴシックロマンみたいなものは掻き消えた感がありますね。西洋版かごめかごめのような祈りの儀式がカッコよくてよかった。

■トップガン★
超イイ映画じゃん… 往年のスターがなぜスターなのかこれ一本観ただけで十分わかる、それくらいトム・クルーズはカッコイイ。話の筋も王道を行く王道で、誰もが言うだろうと予想される言葉を、言って欲しいと願う言葉を言ってくれる。それでも最後、マーヴェリックが降り立ってアイスマンと友情を交わすときに涙せずにはいられない。あんなにやんちゃで生意気だったパイロットどもが切磋琢磨し、時にはビーチバレーではしゃぎ、友を喪えば慰めあっているのを見た後であるので… アイスマン君役のヴァル・キルマーさん、グースがいなくなった直後の声をかける姿だけで「生真面目で優しくていいやつなんだ」とわかる、名演技でしたね… 

■サスペリア(2018)
マジで魔女が好き。同時視聴オタクたちがかぎづめでちんちんをつんつんして爆笑する魔女に動揺していてよかった。コンテンポラリーダンスについて多いに誤解しまくってしまう…

トップガン・マーヴェリック★
完璧な続編でずっと泣きっぱなしだった。どんな些細なシーンでも前作のオマージュ、そして時間の経過、を感じて感極まってしまう。ハングマン役のグレン・パウエルがトム・クルーズに「いい役を選ぶんじゃなくていい役にするんだ」と説得されて出演を決めた、というエピソードを知っていたので、ルースターを「かましてこい!」と送り出した瞬間はまさにパウエルがハングマン役を「いいものにした」んだあ…と思い感動した。ほんでもってアイスマン…ルースター…いややっぱマーヴェリック…フェニックス…ボブ…みんな好きだ…

■パルプ・フィクション
私も時系列ぐちゃぐちゃにした話かきて~!って思った。一本筋で通してみたらくだらない、やるせないギャングの生と死でしかないのだけど、それをこんなに面白く撮れるのは時系列ギミックがあったとしても監督の腕だよなあ、と思う。サミュエル・L・ジャクソンがずっと「メ~ン?」って言ってるので謎に感動した。マザファカマザファカとかバッドマザファカとかもう何をしゃべっててもFワードの強さにびっくりしてつい真似してしまう。そんなサミュエルが「神が死ぬなと言っているんだ」とギャングから足を洗い、同じ場に立ち会ったのに自身はその声を聴きとれなかったトラボルタが一人で死んでいく切なさ… 面白かったです。

■ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
これがゾンビの誕生か…と感慨深くなった。確かにゾンビのルールみたいなものが今より固まってない印象があった(倒し方がヘッドショットだけ?とか死因と感染の相関性とか)し、まだ規模感が小さめ(地元の自警団で制圧できてしまう)なのが逆に新鮮だった。でもこの映画が人間モンスターパニックにならずひとつのジャンルとして人気になったのは、この作品で「さっきまで人間だった怪物」である、というもの悲しさや不気味さを演出できたからなんじゃないだろうか。最後に生き残った一人がゾンビと間違われて助けに来た自警団に射殺されるというショッキングな結末がその最たるものなのだと思う。

■デイ・シフト
グニャグニャ関節アクションややりすぎワイヤーアクションなどが山盛りで面白かった。オモロが勝ちまくってしまうので全然カッコイイアクションではなかったが。吸血鬼という設定の見せ方も面白かったな、格闘中鏡に映っているのがパジャマだけだったり、倒したヴァンプは牙で金額査定したり、日焼け止め作ってたり。機関銃をぶちかましまくったのちに自爆するスヌープドッグがおいしすぎて優勝だろうと思ってたけどEDのサンプリングでセスくんが逆転面白王者になってしまったな。地味に兄弟も嫌いじゃないです。

NOPE/ノープ
「見ること」に対する、私の知らない質感の恐怖を教えられた…。「上を観てはいけない、理不尽に殺され、食らい潰されるから」という描写は、私の腑に落ちていなかっただけで黒人差別を下敷きにした今更すぎるものなのかもしれない。睨めつけられる圧迫感をうなじで感じた。ジュープの設定にはちょっと批判的な風潮もある(”持つ者”として黒人に上から目線で接するアジア人っているよね、という差別意識が見えるらしい。チンパンジーと並べられてしまっているし)ようだが、彼は幼少期の強烈な体験で人生が壊れちゃった、どちらかというと哀れな人物なのだろうと思う。「最初から動物を見世物にするというのが間違っていた」とは信じたくなく、(あの悲劇が当然の報いになってしまうので)「飼いならせるはず」に固執し、トラウマを払拭するためにさらなる惨劇を生んでしまった。

■サイコ
かの有名な。お姉さんが金パチって逃げたみたいなサスペンス風味のドラマパートがやたら長く不思議なペース配分だった。なんというかサイコ野郎が人を殺しまくる映画というイメージだったので。(言うほど殺していなかった)ほほお、これが江戸貝くぅん…のモデルですか、と思っていたが、調べたところこのキャラクターだけでなくレザーフェイスとか諸々含めて全部モデルが同じ実在の殺人鬼なんですね。江戸貝君はそのフィクションアレンジの総集編だと。最後、母親に完全に乗っ取られてモノローグで〆るのすごくない?どういう…どういう?続編がめっちゃあるらしいというのもすげえなと思う。

■トワイライトゾーン
ジョーダン・ピールの世にも奇妙な物語。逆。タモリのトワイライトゾーンが世にも奇妙な物語。
第三話「巻き戻し」。司会がジョーダンピールなだけあるのか政治色がつよい。ネトフリ「隔たれた世界の二人」みたいなやつ。白人警官が何を思って、どんな理由で彼らを追い回すのかは描かれない。どんな理由があろうと彼が差別意識丸出しで黒人親子を執拗に追い回すことの免罪符にはならないからだ。

【9月】

■ヒルコ/妖怪ハンター
ヤングアダルト学校の怪談だ!テンションのわりに人がサクサク死ぬので驚いた。化け物に乗っ取られて物体Xじみた首だけのモンスターにされてしまう一連の描写に気合が入っていて、幼少期にこれを見ていたら確実にトラウマになっていただろうな…と。一斉に振り返る化け物ちゃんたちのチャーミングな動きとか、当時のストップモーションアニメやVFXの技術は大変味わいがあっていい。それはそれとして全然ヒルコではないので笑ってしまう。

■帝都物語
このこってり感、まさに怪奇映画だ…という気持ちに。日本帝国帝都東京で怪しい軍服の男たちがオカルト的な陰謀をたくらむ…という帝都もの?というジャンル、その源流を見ました。正直、加藤役に嶋田久作をキャスティングできた時点で勝ちのような気がしますが、特撮技術を駆使してお化け屋敷みたいになった怪異の映像も楽しくてよかったな。石田純一の若いころとか勝新太郎とかそういう人たちが見られたのもすごい…すごい映像だ。途中まで女の顔が全然判別できなくて苦労した。

■帝都大戦
テンションがだいぶ「活劇!」って感じになっていたけども、それはそれとして結構残酷表現がド派手で驚いてしまったな。当時の撮影技術を鑑みても爆破で人が吹き飛ばされるシーン、火だるまになったりするシーン、ヤバイゲル状のゲロを吐くシーンとか、本当に大丈夫だったのか?うっかり死人が出ても当時の倫理観的に普通に放映されてそう(失礼)だから怖いなあ。芋虫女はフランケン・ふらんで観たので耐えました。

■Not Found -ネットから削除された禁断動画
とりあえず1を見た。グロ映像からホラーからオカルトからなんでもあっていいな…とりあえず思いつくやつ全部盛りで楽しかった。このテンションで60分前後×40本ちかくあるのおかしいでしょ。ネタ切れとかないの?キモイ半魚人と虫が見たいな♪

■47Ronin
キアヌin忠臣蔵。西欧ハイファンタジーナイズされたローのイマジナリー日本の描写がかなりすごくて面白かった。とんでもない城やとんでもない白無垢、とんでもない獣が登場するが、切腹の描写だけかなりガチで笑う。なんで評判が悪いんだろう。邦キチ映子さんとかの普及で胡乱受容体を持つ人間が増えたのがここ数年なのでそういう意味で人類には早すぎたのかもしれないな。キアヌは無から生えてきた非侍浪士なのでずっと人以下の扱いを受けていたんだけど、最後にはちゃんとサムライとして名誉ある死が与えられてよかったねえ…(よくない)となった。キアヌが入るために消された赤穂浪士は誰だったんだろう。

■バイバイマン
栽培マンとかばいきんまんを知っているせいで名前からの怖さがめちゃくちゃ半減してしまうのが日本人であることの欠点かもしれない。名前を知ってしまうといつか殺されるバイバイマン、油断すると誰かに話してしまいたくなるし口を突いて出てしまうので確固たる強い意志を持って「口に出す前に自殺するぞ!」を実行しないといけない。普通の大学生だった男の子が覚悟を決めるまでが本当に悲痛で。バイバイマンより眷属の猟犬(どう見ても犬ではない)の方がビジュアルで強い。ダグジョーンズだったらしいが…

■ビースト
宣伝などの様子から、「どうせイドリス・エルバが最後覚醒してライオンを徒手空拳でぶちのめすんだろ?」みたいに決めつけてかかり、見事返り討ちに合った。そういうアメリカン真の男エンタメではなく、アフリカの大自然の恐ろしさをじわじわ刻み付けるような物語だった。厳しい自然の中で、当然人は獣に勝てもしなければ、小さな蛇や虫にもおびえなければいけないし、同じ人間と言えども密猟者はこちらを殺そうとするかもしれない。死が近すぎる。

■ヒッチャー
途中から完全にファイトクラブみたいな展開になるだろうと予想していたので本当にこのイカれたおっさんが実在していることが判明した際には非常に困惑した。主演二人の迫力だけで場がもっている。凄惨な事件に晒されて真のアメリカ人になる様を青春の終わりと評するのは狂っていると思う。アメリカ、広大すぎて誰にも補足されない殺人がたくさんあるんだろうな、モーテル殺人?ロードスラッシャー?みたいなものがジャンルとして成立しそう。

■サマリタン
これもまた一つの終活映画なのだろうけど、トムクルーズが「燃え尽きるまで燃え続けるぜ」だとしたら、それよりは「俺はお前たちの心の中に生きつづけるぜ」みたいなアツさを感じたな。サマリア人の例えに引きずられているのかもしれないけど。スタローンは76歳(!)になっても、いつか亡くなっても、みんなの心の中、強く頼りがいのある大樹のようにそびえたっている。露骨に「サマリタンだと思わせておいてネメシス」を匂わせるので逆にサマリタンか!?と思った。普通にネメシスだったし、サマリタンでもあったということです。

■プレデター(初代)
イメージよりプレデターの正体というか存在が明らかになるまで結構焦らされて、じっくりと不可解な何者かに常に付け狙われている…という不気味な恐怖を味わえてよかった。プレデターがアイコン化する前の初代だからできる演出かもしれない。プレデターの人間への態度は作品ごとにぶれがちらしいが、プレデター族のご家庭の方針によっても異なるらしい。人間賢いからあんま殺しちゃだめだよ派とか、いっぱい狩ってトロフィーにしちゃおう派とか、特に興味がないので邪魔な時は殺す派とか。そういうのいいなあ。

■ゴーストバスターズ
ルイージマンションをやりたくなる!!!!やっぱり「オバケ」という概念上の何かであって、幽霊ではないんですよね。それともアメリカでは一般的に幽霊はピンクのスライムを垂れ流していくのか…!?コメディ部分ばっかり覚えてるけど地獄の蓋があいたりと結構大変なことになっていたな。

■ゴーストバスターズ2
相変わらず「ゴーストバスターズやりて~!」って気持ちをあおるのがめっちゃくちゃうまい。ルイージマンションやりて~。

■キンダガートンコップ
シュワちゃんの腕がガキンチョの頭と同じくらい太いので笑う回。イタチちゃんがなんかしたりされたりするたびにハラハラして騒いでしまったので、自分って思ったより動物が好きなんだな、と思うなど。シュワちゃんが先生をやめて警察に戻っても警察をやめて先生に戻ってもシュワちゃんの大事なものが失われてしまうような気がしてどっちにしろつらいのでもう何もわからんまま一生捜査しててほしかった。

■荒れ野
スペインの荒野の寂寥があまりにも美しく、それだけで空恐ろしかった…
武骨で頼りになりそうな父親は早々に安否不明の行方知れずとなり、守るべきか守られるべきかわからない母親はどんどん様子がおかしくなっていく。目を凝らしてもなにもわからない荒野がこれ全て恐ろしい何かで塗りつぶされているとわかった時の孤独感!寄る辺なさが恐ろしくてよかったです。風景として身近にないから日本人からは生まれない恐ろしさなのではないかな、と思ったり。

■イン・ザ・トールグラス
ワンアイデアの超短編を膨らまして映画にしたような手触り。進んでも戻っても何もわからない草原、分け入っても分け入っても草しか見えない恐ろしさ。アメリカは広大すぎてこういうくさむらが本当に実在しそうで嫌ですね。これも現代日本では生まれにくい恐怖なのかもと思う。遭難できるほど広い草むらなんて日本にはない。地味に兄?弟?役の人が絶妙に「きれいに取り繕っている気持ち悪さ」を出していてウワ~(すげ~)と思った。

■ガーディアンズ:呪われた地下迷宮
ヘンテコな映画だったけどヘンテコな部分も含めて古い冒険映画っぽいから好きかもしれない。リー・ビンビンがプロデューサー兼主演をやっていて趣味でやってんのか?と思った。結構クモの攻撃方法が単調というか、もっとテクニカルな人体利用、卵が植え付けられているところとか見たかったかも。最後に女の子の口からクモが飛び出してくるところは正直好き。

■ゴーストバスターズ・アフターライフ
根暗な兄妹が変人だったおじいちゃんの秘密の幽霊退治計画を知ってしまい…!という少年少女映画としては非常によかった!が、ゴーストバスターズに欲しいものって、幽霊退治でウハウハだぜ!みたいな一連のシークエンス、流れるCM、サイレン、つやつやした顔で登場するゴーストバスターズ!みたいなところがあって、そこはちょっと残念でしたね。先代たちに尺を割きすぎないというのもあるけど、みんなの悲喜こもごもを詳しく見たかったかも。イゴン博士はあれ、ゴーストに負けて命を落としたってことでしょう… 役者さんも故人であるというのがなんとも…

■ザ・レイド
キレイなお目目をしているイコ・ウワイス(当時まだ28歳…)がとんでもないスピードで闇落ちしていくので恐ろしかった。妻が…兄が…と話の筋らしきものはあるのですが、映像のほとんどが暴力で構成されている大変恐ろしい映画だ…。東南アジア系の暴力映画、壁とか床とかの角であるとか、周囲にあるとがったものを活用してその瞬間の痛みや後の後遺症まで想像できそうな人体破壊をめちゃくちゃ見せてくるので最悪。爆破で四肢が吹き飛んでる映像の方が嘘みたいでファニーなんだなと思う。

■ザ・レイド2 GOKUDO
ヤヤン・ルヒアンは強すぎるのでスターシステムを用いてリスポーンすることができる(?)。概ね東南アジアギャングの小競り合いだし死傷者もほぼ現地民だし極道はちょっと顔出ししてそんなに死にも殺しもしない。邦題でGOKUDOとつけるのはちょっと詐欺じゃないか?3で大量に極道を殺すための顔見せなのかなとおもったらどうもそういう感じでもなくなったらしいし。「調査のためにちょっと服役してくれん?」が結果あんなことになってしまうのはさすがに話が違いすぎるのでイコくんはさっさと退職した方がいいと思う。

■イコライザー
殺人がうますぎるから殺害シーンをカットする殺人アクションサスペンス(なんで?)最小限の描写でこのデンゼル・ワシントンの強さは十分担保で来ているので死体のかけらとかを映すだけでよいのだ。クロエさんがヒロインであるはずなのにだいぶ序盤でトラブルの直接的な原因であるチンピラは全滅しているからそのあと大体蚊帳の外なのがメチャクチャだ。最後には天啓を受けたデンゼル・ワシントンが第二第三のクロエを救うべく活動を始めてしまったし、オタクが「この映画のヒロインはどっちかっていうと同僚のおデブさんまである」と言っていたのもうなずける。

【10月】

■ザ・ヴィジル 夜伽
ユダヤ教の葬儀(遺体を一晩見張る。通夜みたいな?)の話が興味深かったのと、画面の雰囲気がよかった。お化けというか悪魔は出てくるのだが、単純な脅かしよりも主人公の内面への嫌がらせが多かった印象。ホロコーストの話というよりも、主人公ヤコブの個人の物語に留まっちゃったかな、という。暗闇と幻覚による視覚へのストレスは本当に気持ちよかったけど音響がヘンテコでうるっせ!って何度もなった。

■イコライザー2
聖書に載ってるタイプの逸話じゃん…となった。しんじつ神の加護を得たものには、天候が、動植物が、世界のすべてが味方するので…。敵の皆さんがマッコールさんを害そうとしたときに飛び立った鳥にぶつかられたり嵐が来たりするのは偶然ではないのだ。完全にマッコールさんはヒト型をした救済であった。人はだれしも間違えてしまう世界だからこそ「絶対に正義なのだ」と信じられる存在がいたら縋ってしまう。ところであの少年はマッコールさんに目をかけられてよくプレッシャーに耐えられるな。

■ヘイトフル・エイト
メチャクチャ面白かったけど何が面白かったのかわからなかった…雰囲気?会話劇?少なくとも謎解きではないのだ、突然9人目が出てきたり周辺で2~3人巻き込まれて死んでいるから全然エイトではないし。でも最後のシーンにあてられて「いい嘘/フィクションだったな」と思うんだ。登場人物全員ろくでなしなんだけど、マニックスだけなんかロクデナシの勝負の土俵が違ってじわじわくる。悪いやつっていうかしょうもないやつなんだ…

■ワーニング その映画を見るな
シチュエーションとか雰囲気はよかったんですけど、消化不良…となったわね。一番良かったシーン、冒頭でエッチな空気をちらつかせてバカ学生から怖い話をカツアゲしようとしているところかもしれない。酒量がえぐくて超韓国だった。

■オールド・ピープル
本当によくないとは自覚しているんだけど、うっすら老人のことを怖い、ないし醜いと思っていて、この映画が怖いというよりは自分がそう思っていることを突き付けられて嫌な気持ちになった、というのが正解。高齢化問題を扱う気があるならやってはいけないことをやりすぎではないか。老人をゾンビのように扱ったり、愛の力でいい老人に改心させたり。作り手がそういう理不尽な嫌悪感に無自覚すぎやしないか。

■アントラーズ
コロラドという地名が出てきた瞬間にオタクがヴェンディゴだ!とテンションを上げていたのでなんだこいつと思った。そんな大江山と言えば鬼みたいな感じなのか?デルトロさんがクリーチャー造形に携わっているだけあって周辺の演出はすごかった。人間という繭から孵るヴェンディゴ、顎が圧力に耐えかねてぶつっと切れる瞬間… 生れたヴェンディゴにひっつく顔の皮が邪魔!って感じではぎとられた瞬間… ヴェンディゴかっこよかったからもっと早く出現して暴れてくれてもよかったのにな~

■オリエント急行殺人事件
ゴージャスな映像のミステリを観たかったので。冒頭のイスタンブルの映像だけでも結構うれしいくらい美しい。ポアロ役ケネス・ブラナーのフランス語訛りの英語すごいね…みたいな話をしていたら、「おまえのドイツ訛りは半端なのでオーストリア人じゃない」みたいな推理を披露し出したので笑ってしまった。こんな迂遠で大きな殺人計画に「やりましょう」と集まってきたというだけで彼らが果たしてどれだけ苦しみ続けていたのかというのが察されてしまって泣けるね。ここには死んだ悪人と人生を壊された善人しかいない。私には裁けないと震えるポアロ。またナイル殺人事件を観た上で浴びるブークへの「モナミ」「彼は嘘をつけるんだ」は本当に切なくて切なくて助けてくれ ブーク…

■クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃
クレしん映画の不気味なところがめっちゃ楽しめてよかった!ヒロインの父親が赤と青のツートンカラーの髪というビジュアルから寡黙で不器用な人間性という嘘みたいなキャラクターなので困惑した。もしかしたら母を失って沈んでいたサキちゃんが笑ってくれたからこの髪色なのだとか理由が設定されてて、本来はみさえじゃなくてこの父親が「親は子供のためならなんでもできる」ってサキちゃんを助けに行く展開だったのではないかと思ったり。野原家の活躍がたりないって削られたんかな。そう感じるすわりの悪さがあった。

■クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝
これ私が生れる前の映画なんだ。ひろしが「ブリブリ王国~?なんなんだそれは」みたいな発言をかますシーンで何とも言えない笑いが止まらなかった。みんな「ブリブリ王国ってなんだよ…」と思いつつもそれがクレヨンしんちゃんというものだからなんとか飲み込んでいるというのに今更お前がそれ言うのかよ。敵との格闘とか巨大魔人同士のバトルとかのアクション描写が大迫力ですごい。あとみさえとひろしがチューしたのでびっくりした。

■RRR★
欲しいもの全部盛り!ずっと嘘みたいなアクションと過剰すぎる演出で3時間近くぶん回され続けるみたいな視聴体験、これぞインド映画!時代が下ってもこの監督が描くものは神話なんだなと思う。(銃撃戦の中一人だけ弓矢で戦うラーマ何?)不謹慎ながらさすがに笑ってしまったのだが、イギリス兵がナチスドイツやソ連兵のごとくバカスカ殺されているのはすごいことだなと思った。これをエンタメとして消費できるくらいインドにもイギリスにも精神的な余裕が生まれたということなのかも。

■サイレントヒル
クリーチャーの造形や嫌な動き(汚いうえ浴びると溶ける汁を吐くなど)とか、大量の虫、有刺鉄線とか、めちゃくちゃおぞましくてかっこいい画をたくさん見せてもらえてうれしかった。金属音を聞かせるゲームを意識したつくりらしいのだが、劇半がないことでおびえるタイミングとかを逃してしまいがちだったので、視聴サイドの問題なんだけど残念だったな。

■真夏の方程式
邦画特有のすべてを覚悟したジジイに弱いから普通に泣いちゃった。
偏屈だけど謎解きの話を聞いてくれた湯川教授、楽しい実験の思い出を作ってくれた湯川教授、汚れちゃったかもしれない手を守るよって言ってくれた湯川教授、ひと夏でこんなふうに福山雅治と関わっちゃったらもう人生めちゃくちゃだろ。恭平君の未来は大丈夫か?

■麒麟の翼
今思うと菅田将暉がこの役で使われるのってすごい贅沢かもしれないな。
「全てを飲み込む覚悟を決めた父親」がまた出てきたのでおそらく東野圭吾の癖なんだろうな。年齢的に父親に感情移入して書いてたら結構グロテスクだが… これ系の父親、感情としてはとても切ないのだけど、結構やらかして最悪の結果を呼び込んだりもしているんだよな。阿部寛がでかくて笑う。

■祈りの幕が下りるとき
また父親が!小日向文世、MIUの印象が強いので微笑まれると陰で殺人計画を淡々と練ってそうで怖い。間にドラマシリーズでも挟んだのか、溝端淳平と阿部寛の関係性がだいぶカジュアルになっており、こんな感じだったっけ?となった。文字情報で色んなものを伝えようとしすぎていて、ちょっとそれは映画としての表現放棄じゃないか?と思った。ドキュメント風にしようと思ったのかもしれないが。

【11月】

■エノーラ・ホームズの事件簿
すっごい少女小説だったので好き。兄ホームズが原作のテンションからするとだいぶまとも(というかクールだが実は妹思いな切れ者という超すごいスパダリ)という感じで…盛りすぎじゃない?ただでさえヘンリー・カヴィルなのに。オタクがずっと「このホームズにジュードロウのワトソンを与えてセクシーすぎる名探偵(R18)にしたい」とか「ライヘンバッハから飛んで戻ってきたホームズがワイシャツの胸元を引き裂くとシャーロックのSが書かれたボディースーツが出てくる」とかわけわからんことをずっと言うのでよかった。

■エノーラ・ホームズの事件簿2
もうずっとテュークスベリーくんの応援をしていた。モリアーティの造形がめっちゃよかったし、ホームズのライバルでありつつもエノーラにとっては一番最初の事件かつ食い止められたはずの殺人の犯人であるということでちょうどいい因縁なんじゃないでしょうか。込められているメッセージもまっすぐなウーマンリブなのですごく現代的ないいエンタメでした。シャーロックがそれらしくダメな感じを出していたんだけどヘンリー・カヴィルなのでセクシーなだけだった。だとしてもレストレードの距離の詰め方は大分やばいらしい。

■白頭山大噴火
マ・ドンソクとイ・ビョンホンというキャストから勝手にハイテンションアクションを期待していたのですが、めっちゃ硬派な軍事作戦映画だったな。南北の分断に対する憂いもしっかり表現されていたし、勝手に「この二人が出てたら一回くらい意味もなくステゴロするだろ」とか「この二人が爆弾抱えて火口に飛び込むだろ」みたいなそういう軽薄な期待をしてすみませんと思った。イビョンホンの銃撃戦はフツーに超カッコイイよ!

■junk head
全編ストップモーションアニメ、どう考えてもヤバイと思ってたけど予想以上の狂気にあてられてしまった… クリーチャーを大量に出すしアクションもやる。主人公のビジュアルもしょっちゅう変わる。全部立体造形しているし、背景を絵で描く。すご… ウンコにモザイクがかかるのにチンポとクノコにはつかないんだ…と思っていたがチンポはしっぽだったしクノコはクノコだからね。ちゃんと頑張って完結してほしいな。とりあえずパンフ買おうかな~…

■真・事故物件 本当に怖い住人たち
心霊ホラーみたいな顔して始まったのに途中からスラッシャーに変わったと思いきややっぱりオカルトホラー、オチのつけ方も破天荒。古典映画へのリスペクトもふんだんに盛り込まれた、全然B級じゃないかましたれ系映画だった… じいちゃんはなぜ…じいちゃん… 最後に生き残ったのが一番最初に死にそうな軽薄ななんちゃってハンサム(適当な仕事ぶりが実にいそう)だったので、2で彼がどうなるのか楽しみです。

■トマホーク ガンマンVS食人族
邦題のB級感は罠。生きている人間の苦しみ、憤りには焦点をあててドラマとして撮る一方、「人の死」に対する視線があまりにも乾いていて恐ろしい。死はエンタメでもドラマでもなく、ただそこにあるもの、として鑑賞者が期待する山場ではない場面で粗雑に発生しそして流されていく。監督が一番怖いよ… あんなにフィクショナルな食人族なのに、行動が全然演技というか演出がなくて興奮がどんどん引いていき、ただただおびえるしかない…

■ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談
という夢だったのさ的な。マーティン・フリーマンがチャーミングで人のよさそうないつもの感じのおじちゃんで出てきたのに急に狂い始めたのが完全に不意打ちで超よかったですね… こういうキュートでサイコな敵役をもっとやってほしいな。舞台が原作らしく演出がすごくそれらしい。背景を引き裂いたり早着替えをしたり… 逆に舞台版が気になったかも。

■バーバリアン
サイトのダブルブッキングで宿泊予約をした家にビル・スカルスガルドが先に泊まっていた、「仕方ないから入っていいよ、安心して…」と言われるが…!?という超現代的なストレスが爆発した展開から、変顔もなにもせずにスカルスガルドが即死するので勿体ない!という感情が生まれてしまった。男女の視点の違いを強調した前半部分から、地下に潜む老婆が登場してからどんどん展開が転がっていき、これどうなるの!?と混乱のピークにものすごい終わり方をする。すごい映画だ。

■ベター・ウォッチ・アウト  クリスマスの侵略者
バーバリアンとはまさしくコンセプトも含め逆の方向から意表を突かれた映画。主人公ルーク役の人がすごい。青年になろうとしている少年の、幼い無邪気な邪悪さと打算的なずるがしこさが入り混じる演技。もう少し浅慮なこどもだったらこうも上手くはやれず、もう少し熟考できる大人だったらそもそもこんなことにはならなかった。その温度感が完璧で最悪… ストレンジャーシングスのビリーがまたアホで乱暴で顔だけちょっといい男をやっていて、なんかこいつのこと好きかもしんない。

■きさらぎ駅
NPCの切り捨て方でルートが分岐する感じのゲームだ!映画自体よりそのあと同時視聴オタクと最短攻略法というか、どのエネミーにどう対処するかとかどんなNPC(人間をきさらぎ駅に食わせると任意で配置できるっぽい)を確保しておくべきかとかあるあるバグ技とかで大喜利してる瞬間が一番楽しかった。

■スクリーム2022
人体破壊は痛そうだったけど得物がナイフ(と一応銃)に限定されていたこともあって死にざまのバリエーションがもう少しかな~と思った。そこを考えての炎上死なんだろうけど… 犯人は誰だ!?というサスペンス風味なのは結構好きなんだけど、初代との共通要素をオマージュと取るか同じことをやってるだけと取るかは見た人次第な気がするな。真犯人の「制作陣は熱烈な映画ファンの意見を取り入れろ!」という主張も、作り手はじゃあどっちのつもりでやってんの?と思った。制作側もまた熱烈ないちファンだったのだとして、名作の続編でやっちゃったらギャグすぎないか。

【12月】

■トロール
トロールの存在は動的でありながら静の迫力があって、怪獣パニック映画としてとてもよかったと思う。北欧の岩と下草ばかりの山、渓谷、色の薄い空という茫漠とした風景の美しさも素晴らしく、美しいからこそ巨大な怪物もたやすくしまい込んで隠してしまう恐ろしさがあった。けどトロールくんへの扱いはちょっと見過ごせないですね!お家から追い出して山に閉じ込めておいて何が「安全な場所に帰って!」だ!彼の帰る場所はどこで、追い出されるべきは何で、この土地の本当の主は誰かもう一度言ってみろ!

■リベリオン
これがガンカタ… 結構突っ込みどころが多いし、マトリックスはもう過去のもの!みたいなキャッチコピーはフカしすぎだろと思うのだが、そういうところも含めて好きになっちゃう勢いがあったな。感情を禁止されているらしいがしょっちゅう漏れ出ている。それとも嘲笑とか憎悪はセーフなのか?犬をかわいがるのはだめなのに…

■ウェンズデー
アダムスファミリーの娘でハリポタパロやりましたという非常にギーク的なつくりのドラマだ… 雰囲気がめっちゃいいしキャラクターが(モンスター学校の生徒と言うには)善人でチャーミングなのでとてもよい。欲を言うと、ルームメイトのイーニッドはあれだけ親へ「狼に変身するタイミングは自分で決める!」と言っていたのでもっと彼女の意志であるということが強調されていたほうがよかった。変身後のデザインもユニコーン丸出しという感じで。

■ブレット・トレイン
ブラピはもうおじいちゃんなのだ、という当たり前の事実が若干ショックで受けてしまった。真田広之とたった4歳しか変わらないのに並んだ時のキャラデザの差がすごい。みんな殺人者でありつつもある種の軽薄さを身にまとっているのに、アンドリューと真田広之だけは常にシリアスで哀愁すら漂っているのが実に滑稽で、日本っぽいなと感じましたね。嘘日本がすごいよかったしなんかボリビアとかロシアも嘘っぽかったな。

■岸部露伴は動かない
ドラマとしてリアリティラインを保ちつつジョジョを再現しようという気概がすばらしい…!アマプラ字幕が「じゃあないッ」になってるので丁寧だなと思いました。第1から第2シーズンで1年空いているわけなんですけど、もちろん予算も増えたんでしょうが高橋一生の中の「岸部露伴」の解像度が上がってなかった?声のトーンとか身振りがすごいジョジョになっていると思った。みんな好きでしょうけどチープトリック猿之助が好き。

■デビルズ・ソナタ
おどろおどろしい洋館は美しくいかにもな雰囲気があり、そこに閉じこもった高名な音楽家が黒魔術に傾倒し、子供を拷問しながら曲を作った…という設定や楽譜を読み解くのは楽しかったけど、肝心の恐ろしさはなんだかなあと言う感じ。子供たちの幽霊も悪魔も存在感がうすい。理知的な保護者然とした男が曲に憑りつかれて我を忘れるさまはよかった。

■ナイブズ・アウト2 グラス・オニオン
脱ジェームズ・ボンド味もより軽妙になったダニエル・クレイグの探偵映画。なんぼなんでも「私は用心棒ではないので守るとかそういうのは…」みたいなセリフを言わすのは逆張りすぎないか?展開も王道の孤島ミステリの皮をかぶった滑稽劇というか、悪い冗談みたいな話だった。登場人物が全員ドアホなせいで何度も撹乱されるわ、しまいには一番なんも考えんと行動したのが犯人だわ。クソバカどもが!とキレながらハチャメチャなエンディングももろ手を挙げて歓迎してしまったわよ。

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