家の中にだって発見がある

何年も住んだ家の中にも、自分の知らない角度がある。リビングでいつもとは反対の方向に寝転んでみる。引き出しに背を向けて立つ。頬を床につけ、キッチンのシンクの下から天井を見上げる。いつもの家具や照明、壁と天井の接線が作り出す遠近感が、ボタンの掛け違いのように普段とは違って見える。

室外機やサッシのような、掃除を怠けるために意識的に無視していた場所とは違い、自分がその場所にいながらも見えていなかった視点は、もちろん無感情に、ただそこにある。その存在は自分が知り尽くしているはずの場所に確かにあるからこそ、小さな驚きと、少しの気味の悪さを感じさせる。

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